さらにストレスを生み出すようなストレス発散方法を選んでいませんか?【髙田一也のマッスルラウンジ 第57回】薩田有紀代さん④




大好評「マッスルラウンジ」。今回は千代田区飯田橋と港区田町に店舗を展開する、完全個別指導型パーソナルトレーニングジムBiP(ビップ)の代表取締役であり、太極拳の元世界チャンピオンという異色の肩書を持つ薩田有紀代さんが登場。4回目の今回は、「ストレスとの付き合い方」から対談がスタートしました。

「甘いものが食べたいと思うこともないんですか?」(薩田)
「ないですね。昔は大好きだったんですけど」(髙田)

薩田:それだけストイックな生活をしていると、ストレスが溜まることはないですか。

髙田:僕は趣味が仕事になってしまったので、まったく関係がない趣味があったらいいなとは思うんですけどね。でも結局、ストレス発散ってできないと思っているんですよ。もし仕事がストレスになるんだったら、やめなければいけないですし。この仕事をやって自分が生きていられるので、これをストレスに思うことはやめようと思いましたし。もちろん日々、大変なことはあります。泣きたくなるようなこともたくさんあるんですけど、発散ができないんですよね。なので、気分転換くらいですかね。

薩田:映画を見るとか、本を読むとかですか。

髙田:そんな感じです。結局、全部自分に返ってくるんです。たとえば、ストレス発散で食べてしまうという人は多いと思うんですけど、もっと大きなストレスになって返ってきているからダイエットに通うわけです。そもそも、ストレスをまた生み出すようなストレス発散方法を選ぶことが間違っていませんか?という話で。こうやって正論で詰めていくとみんな嫌になってしまうので、そこは最初に話したように、その人が求めているトレーナー像を考えるわけです。今の時期は、まだここまで言ってもわからないかなとか。

薩田:はぁー。すごい。私は家でビールを飲んじゃったりしますね。あとは映画を見たり。

髙田:でも、自分がクライアントさんに合わせるというより、クライアントさんたちが自分風になっていく雰囲気がありますね。

薩田:自炊するようになったり?

髙田:クライアントさんも、自分でササミを茹でたりしていますからね。「どうしたらいいですか?」と聞かれた時は、方向性は教えられますけど、やる、やらないはあなたの判断ですよと。「もう今日からお酒を一滴も飲めないですけど、いいですか?」と確認すると、「やります」と。男だから今まであまり年齢は気にしなかったんですけど、50歳って結構な歳だよなと考えると、いたずらに老けるのは嫌だなと最近思ったんです。でも、こういうことやっているとみんな若いんですよね。

薩田:この業界の方ってハリツヤがありますよね。私も身近な人たちがそれだけ見た目を保っていると、これは食べちゃいけないなとか、ここはウーロン茶にしておこうとなることはありますね。

髙田:我慢という考え方ではないんですよね。どうやって上がっていくかなので。自分は「忍耐」という感覚がまったくないんですよ。

薩田:つらそうじゃないですもんね。

髙田:むしろ楽ですね。毎日食べるものが決まっていますし、それで体調もいいですし。

薩田:たしかに。体調は食べ物で変わりますよね。甘いものが食べたいと思うこともないんですか。

髙田:ないですね。昔は大好きだったんですけど、考えを切り替えてからは全然。

薩田:それは頭の切り替えですか? それとも胃が欲しくなくなるんですか?

髙田:きっと食べたらおいしいんでしょうね。でも、今こうやって健康で仕事ができていることのほうが自分の中では価値が上なんです。おいしいものを食べて「ああ、おいしかった」と思うことと、それが蓄積されて体がちょっとでもおかしくなると考えたら、そんなのいらないと。

薩田:そういう話はお客様にもされるんですか。

髙田:もちろん。押しつけることはないですけど、聞かれた時に「こういう感じです」と答えるうちに、男性も女性もそうなっていくことが多いです。

薩田:教える上で、男性と女性で何か違いはありますか。

髙田:どちらも難しさはありますけど、やっぱり男性は外で働いている人が多いですし、それなりに立場がある方が多いじゃないですか。そういう方々の意識や価値観を変えていくのは、なかなか難しいですよ。こんなことを言っていいのかわからないですけど、たいして自分のことができていないその辺のトレーナーが、こうしなさい、ああしなさいと言って聞く人たちではないと思いますよ。

薩田:立場もお仕事もある人たちだから。

髙田:「じゃあ、あんたは?」と思われたら終わりだと思うんですよ。最近はトレーナーの数も増えてきましたけど、自分は「説明屋」が増えているだけだと思っています。はたして、本当の意味での「トレーナー」なのかなと思うんですよね。クライアントさんにとって、人生を変えてしまうほどの出会いはあるのかな、とか。

薩田:たしかにそれは感じますね。

髙田:広がっていくのはいいことだと思うんですけどね。その上で、引っ張っていってくれる存在じゃないといけないですよね。派手にやらなくていいと思うんですよ。ポツポツやっていると勝手に引力が広がっていって、どこからか知らない人が来てくれたり。そんなものだと思っているので。

薩田:すごい。勉強になります。私はやっぱりうちのトレーナーたちにいい人生を送ってもらいたいですし、稼げるトレーナーになってほしいと思っているんです。髙田さんがおっしゃった通り、お客様の人生が変わっていくわけじゃないですか。自炊しなかった人が自炊し始めるとか、そのために朝早く起きるとか、夜の会食をやめて真っ先に家に帰るとか。その人の生活が変わるという意味では、コンサルタントのようなスキルも必要なのかなと思います。

髙田:でも、稼げるトレーナーというのは相当なスキルを持っていないと難しいかもしれないですね。僕が今までいろいろなトレーナーを見てきた中で問題だと思っているのは、たとえばすごく年上で社会的な地位もあるクライアントさんを、あまり人生経験のない若いトレーナーが教えるわけじゃないですか。慣れてくると、同等の立場だと勘違いしてしまうトレーナーが多かったんです。俺はこういう人たちに教えているのに、何で俺だけ普通の生活をしなければいけないの?みたいな。勘違いする人が出てくるんですよね。

薩田:「俺は偉い」みたいな。

髙田:そうです。薩田さんも、これからそういう場面に直面するかもしれないですね。

薩田:うちのオーナーもいろいろな会社を経営しているので、似たようなことを言っていました。

髙田:でも、人間が陥りやすいところだとは思うんですよね。

取材・構成・撮影/編集部

髙田一也(たかだ・かずや)
1970年、東京都出身。新宿御苑のパーソナルトレーニングジム「TREGIS(トレジス)」代表。華奢な体を改善するため、1995年よりウエイトトレーニングを開始。2003年からはパーソナルトレーナーとしての活動をスタートさせ、同時にボディビル大会にも出場。3度の優勝を果たす。09年以降はパーソナルトレーナーとしての活動に専念し、11年に「TREGIS」を設立。自らのカラダを磨き上げてきた経験とノウハウを活かし、これまでに多数のタレントやモデル、ダンサー、医師、薬剤師、格闘家、エアロインストラクター、会社経営者など1000名超を指導。その確かな指導法は雑誌やテレビなどのメディアにも取り上げられる。
TREGIS 公式HP

薩田有紀代(さつた・ゆきよ)
株式会社BiP代表取締役社長。大日本印刷株式会社、株式会社クロス・マーケティングを経て2018/4~BiPに参画。会社員時代から、太極拳の武術的動きの真髄を用いた身体の根本的な動かし方と、陰陽五行論に基づく考え方をお伝える活動を行う。印刷会社における研究所や工場の生産性向上・人材育成・教育の経験、消費者調査やマーケティング理論に基づき、独自の視点でBiPの経営を行っている。「人はなぜ、カラダを変えたいのか?」。人間心理に基づく、BiPオリジナルトレーニングメソッドを提供。
●太極拳実績
・2013年、太極拳世界大会優勝
(楊家老架式太極拳108式:白級個人戦・団体戦)
・2015年、太極拳世界大会。
黄級個人戦2位、藍級団体戦3位
・2017年、太極拳世界大会優勝
(楊家老架式太極拳108式:黄級個人戦)
BiP公式HP