上に立つ者が持つべき要素とは?【髙田一也のマッスルラウンジ 第58回】薩田有紀代さん⑤

大好評「マッスルラウンジ」。今回は千代田区飯田橋と港区田町に店舗を展開する、完全個別指導型パーソナルトレーニングジムBiP(ビップ)の代表取締役であり、太極拳の元世界チャンピオンという異色の肩書を持つ薩田有紀代さんが登場。5回目の今回は、人材を育成する際の指導論がテーマ。部下や後輩を持つ人は必読です。

「圧倒的なものを若者に示すしかないです」(髙田)
「本当……生きざまですね」(薩田)

薩田:トレーナーの育成って重要ですね。私はこの業界に入ってまだ1年ちょっとなので、新米なんですよ。トレーナーからすると、いきなり外から来た人が社長になったわけです。そんな私がトレーナーの育成していく時は、何を一番大切に指導していったらいいんですかね?

髙田:自身のキャリアの中で、圧倒的なものを若者に示すしかないですよね。ちょっと堅い話になりますけど、僕たちは日本の法律に守られて今まで生きてきたわけです。大人になってくると、日本に恩返しをしなければと思うんですよ。こういう年齢になった今の自分の役割がどんなことなのかなと考えると、働いて生きていくことがどれだけ尊いかを若い人たちに教えることなんじゃないかなと勝手に考えています。でも若い人の中には、それを追い越してやろうとか、出し抜いてやろうと考えるようなギラギラした人もいるわけじゃないですか。そういう人たちに何かを教える時は、すべてが君たちより上回っているよと示さないとダメな気がするんです。考え方や思慮深い物の見方とか、体力もそうです。逆に自分がどんな人についていくかと考えたら、いろいろなことに説得力を持っている人だと思うんですよね。この人にはまだまだ敵わないなとか、この人に文句を言うのは恥ずかしいなと思えるような。

薩田:たしかにそういう意味では、私もまだ仕事という意味でのキャリアはありますし、経験はあるはずなので。本当……生きざまですね。

髙田:そうですね。たとえば、今からウエイトトレーニングを勉強されて若いトレーナーよりも詳しくなったり、実際にウエイトトレーニングをして体の変化で示してみせるとか。そうすれば意外と簡単に「すごいな」と思うかもしれないですよね。

薩田:たしかに。実績で見せるのが一番わかりやすいですよね。

髙田:それも、「私は今まで培ったキャリアとか、経験値の中から短期間でこれだけのことを編み出しているんだよ」みたいな。そうすれば全部が尊敬につながったりするのかなと思います。

薩田:何かもう目から鱗が……。

髙田:ありがとうございます(笑)。自分と同じ世代の人たちを教えているので、最近そういう話がすごく多いんですよ。ただ「若者に負けるのが悔しいから」ではなく、社会における自分の立場を考えると、若者にいい模範を見せられなければ自分の人生って何だったの?という話だと思うんです。トレーニングや健康ってそことつながる部分がありますし、価値がある考え方だと思います。

薩田:時々、私は何のために生まれてきたんだろうと考えるんですよね。せっかくご縁があってこの会社に入ったということは、ここで何かやりなさいと言われている気がして。しかもこの業界で何の経験もない私が来たということは、そこに何か意味あるんだろうと。

髙田:そうですよ。薩田さんのお立場上、彼らをどれだけ引っ張れるかにかかっているわけじゃないですか。それならば、「あなたは知らないじゃん」と思わせないくらいの圧倒的な存在になることですよね。

薩田:もしかしたら、トレーナーたちもそういう存在が欲しいのかもしれない。

髙田:そういう人がいたらついていきやすいですし。

薩田:髙田さんは、「あの人みたいになりたい」と思うような存在はいたんですか。

髙田:いましたよ。僕が28歳の時に最初に習ったパーソナルトレーナーの先生なんですけど、その方にあこがれてトレーナーになったんです。その方はジムの登録トレーナーだったので、「先生は将来どうされたいんですか?」と聞いたら、「ゆくゆくは自分のジムを持ちたい」とおっしゃっていました。「先生がジムをやられた時に僕がパーソナルトレーナーになっていたとして、その時の僕が先生から見て雇える人間だと思ったら雇っていただけますか?」と聞いたら、「もちろん」と言っていただいたんです。その時代はトレーナーの人数自体が少なかったので難しい道だろうなとは思ったんですけど、その出来事があったのでその気になれた部分はありました。

薩田:その後、その先生は?

髙田:先生が少し方向性を変えられたので、逆に私が起ち上げた白金台のジムで先生がご自身のクライアント様を指導されたこともありました。思い描いたものとは少し違いましたけど、一緒に仕事ができたという意味では夢が叶ったかなと思います。

薩田:あこがれの人と仕事ができたんですね。

髙田:ただ、先生がすごすぎて最初は劣等感がありました。自分はライバルなんて思ったことはないんですけど、世間から見たら先生も僕も同じパーソナルトレーナーじゃないですか。こんなにすごい人と自分が同じジムで働いていていいのかなと思ったこともあったんです。自分のクライアントさんに対しても、自分なんかに習うよりあの先生に習った方がいいですよ、みたいな気持ちがあって、どんどん自信がなくなっていって。ある時にちょっと考え方を変えて、先生に並ぼうというのではなく、先生にはない自分のいいところを探すようにしたんです。スポーツエリートのトレーナーたちの中で、病弱でスポーツをやったことがなかった僕のような人間がこういう体をつくったというのが、一般の人たちに対してはプラスになるんじゃないかと。そう考えるようになってからは、自信を持って一人ひとりを指導できるようになりました。

薩田:葛藤や模索の時期あった上で、今があるんですね。

取材・構成・撮影/編集部

髙田一也(たかだ・かずや)
1970年、東京都出身。新宿御苑のパーソナルトレーニングジム「TREGIS(トレジス)」代表。華奢な体を改善するため、1995年よりウエイトトレーニングを開始。2003年からはパーソナルトレーナーとしての活動をスタートさせ、同時にボディビル大会にも出場。3度の優勝を果たす。09年以降はパーソナルトレーナーとしての活動に専念し、11年に「TREGIS」を設立。自らのカラダを磨き上げてきた経験とノウハウを活かし、これまでに多数のタレントやモデル、ダンサー、医師、薬剤師、格闘家、エアロインストラクター、会社経営者など1000名超を指導。その確かな指導法は雑誌やテレビなどのメディアにも取り上げられる。
TREGIS 公式HP

薩田有紀代(さつた・ゆきよ)
株式会社BiP代表取締役社長。大日本印刷株式会社、株式会社クロス・マーケティングを経て2018/4~BiPに参画。会社員時代から、太極拳の武術的動きの真髄を用いた身体の根本的な動かし方と、陰陽五行論に基づく考え方をお伝える活動を行う。印刷会社における研究所や工場の生産性向上・人材育成・教育の経験、消費者調査やマーケティング理論に基づき、独自の視点でBiPの経営を行っている。「人はなぜ、カラダを変えたいのか?」。人間心理に基づく、BiPオリジナルトレーニングメソッドを提供。
●太極拳実績
・2013年、太極拳世界大会優勝
(楊家老架式太極拳108式:白級個人戦・団体戦)
・2015年、太極拳世界大会。
黄級個人戦2位、藍級団体戦3位
・2017年、太極拳世界大会優勝
(楊家老架式太極拳108式:黄級個人戦)
BiP公式HP