1. Home
  2. スポーツ
  3. 【不屈のパラ戦士】西川哲男(パワーリフティング)③

【不屈のパラ戦士】西川哲男(パワーリフティング)③

 

鍛え抜かれた体と、不屈の精神で頂点を目指すパラ・アスリートを紹介するシリーズ。今回登場するのは、パワーリフティングの西崎哲男選手。競技を始めてわずか3年でリオデジャネイロ2016パラリンピック競技大会に出場を果たし、東京2020パラリンピックでさらなる飛躍を目指す42歳のアスリートの歩みに迫る。最終回となる今回は普段の練習について、そして東京パラリンピック、今後の目標について聞いた。

東京パラリンピックでは恩返しをしたい
共生社会実現の力になりたい

――現在の練習内容を教えてください。

西崎:現在のトレーニング時間は4時間~5時間です。前半はウエイトトレーニング、後半は49㎏級での体重を維持するため有酸素運動を取り入れています。

――ウエイトのトレーニング内容をうかがいたいのですが、基本はベンチプレスで強化していくのですか?

西崎:前半がベンチプレスです。流れで言うと、シャフトから始まり、日によって10㎏ずつ増やしたりとか、20㎏飛ばしで増やしたりとか、日々扱う重さは変えています。それを1時間半くらいやります。その後に三頭筋などの補助種目もやっています。

――メニューはご自身で考えているのですか?

西崎:今は日本パラ・パワーリフティング連盟がイギリスから招聘しているコーチがメニューを組んでくれています。そんなに無茶な重さも扱わないのでケガのリスクも少ないですし、記録も伸びてきているので、すごく心強いです。

大会時の西崎選手。(西岡浩記)

――40歳をすぎてもなお記録が伸びています。まだ限界は感じませんか?

西崎:競技特性というか、僕らの感覚だと計画的にトレーニングをしていけば、まだ伸びるだろうと思っています。伸び方、伸びしろという部分では若い選手とは違うかもしれませんが、そうなると当然トレーニング内容も変わります。計画的なものがあれば年齢を重ねていたとしても、まだ伸びるのかなと思っています。

――自分のなかではまだ記録を伸ばしていける手応えはある?

西崎:そうですね。記録が止まるとか、落ちるというのは考えていないです。そう思えているのは、今の環境がとてもよく、競技に集中できているというのが大きいと思います。

――では競技としてとくに重要視している筋肉はどの部分になりますか?

西崎:一般的に言われているように、大胸筋、三頭筋は大事です。それに加えてバランスを考えたときに、僕は肩とか上半身でバランスをとっているので、使える筋肉を全部使うのがベストかなと思っています。

――左右を平行に挙げなければいけないルールもありますし、バランスは大事なのですね。

西崎:左右平行に挙げなかったら一気にバランスが崩れると思います。僕が意識しているのは軌道です。そこがズレると挙がらなくなります。ラックアウトの外し方も大事で、同じ100㎏の重さでも取り方と取る位置で、重さの感じ方が違ってきます。

――大会では3回の試技なので、しっかり3回をいい状態でこなすためには繊細な注意が必要なのですね。

西崎:そうです。僕は第1試技を失敗することが多かった(笑)。自分で追い込んでしまっていたのですが、最近は第1試技からしっかり成功できるようになってきました。試合の流れとして一番いいのは、一本目は確実に取れる重さを成功させ記録を残す。第2試技で自己ベストくらいの重さを狙う。第3試技で他の選手の記録を見ながら、新しい記録を取りにいくという流れがベストだと思います。

東京パラリンピックに向けて記録を伸ばしている(西岡浩記)

――今年の世界選手権では54㎏級で8位。今度は東京2020パラリンピック競技大会のために49㎏級に階級を変更して臨みます。東京2020パラリンピックへの道はどのように見えていますか?

西崎:本当に頑張らないといけないと思っています。ランキング8位以内にいないと確実ではないのですが、自分がそこまでいけるとかといったら、今の状態では厳しいと思います。ランキングに反映される大会は、2020年2月のイギリスと4月のドバイの2試合しかないので、残りが少ないという怖さはあります。ただ、49㎏級に落としたことで、少し可能性は高まっているのかなと思います。

――階級を下げることでメリット、デメリットがあると思います。

西崎:体重を落とせば記録も多少落ちるのは仕方ないと覚悟していましたし、今の力のままで下の階級にはいけると思っていませんでした。大事なのは落ち幅です。各階級各国から一人しか出場できないので、最低でも日本人のトップにならなければいけません。僕が可能性をつなげるために9月の東京2020テストイベントでやらなければいけなかったことは、日本で一番になること。そのときの日本人のトップが125㎏だったので、最低でもそれ以上の記録を出すことを考えていました。第1試技でその記録が取れたので、第2試技では130㎏を取った。この大会ではいろいろな確認もできたので収穫が大きかったです。

――当日計量後のリカバリーはどうしているのですか?

西崎:リカバリーはほぼ無理です。糖質を摂ったりはしますけど、回復するという感じではなく、気持ち的に楽になるくらいです。ただ、9月の大会のときは48㎏くらいまで落ちていて1㎏余裕があったので、前日もご飯を食べられましたし、当日の朝も食べられたので、気持ち的には楽でした。

――最後に今後の目標、夢を教えてください。

西崎:まずは東京2020パラリンピックに出たい。東京2020を目指すことをきっかけに競技を始めたことで応援してくれる人が増えましたし、会社も全体で応援してくれています。リオ大会では、記録と出すという点で期待に応えることができなかったので、東京では必ず恩返しをしたいという気持ちがあります。今所属している乃村工藝社が東京2020大会のオフィシャルサポーターなので、僕は選手の立場でも東京大会を見ることができますし、オフィシャルサポーターの企業の一員としても見ることができるので、いろいろな意味でサポート、お手伝いをしたいなと思っています。

――乃村工藝社の社員としては車いすユーザーとして、共生社会実現への取り組みにも尽力しているそうですね。

西崎:自分の個人的な経験という視点ですが、共生社会について話す機会などもいただいているので、ユニバーサルデザインへの意見交換など、共生社会の実現に向けて少しでも力になれたらいいなと思っています。

 

★インタビュー第1回はこちら

★インタビュー第2回はこちら

 

取材・文/佐久間一彦 撮影/神田勲

西崎哲男(にしざき・てつお)
1977年4月26日、奈良県出身。添上高校レスリング部では国体にも出場。2014年に東京2020パラリンピック出場を目指して株式会社乃村工藝社入社。16年パラパワーリフティングジャパンカップ54㎏級1位。リオデジャネイロ2016パラリンピック出場を果たした。2019年チャレンジカップ京都で142㎏の日本記録を樹立。同年7月の世界選手権では54㎏で8位入賞。

乃村工藝社(のむらこうげいしゃ)
1892年の創業以来、商業施設、ホテル、ワークプレイス、博覧会、博物館などのさまざまな空間の総合プロデュース企業として、全国10拠点を展開し、プランナー、デザイナー、プロダクトディレクターなどの専門職が総計1,000名以上在籍しています。創業から120年以上にわたり培ってきた総合力と社会課題の解決につながる空間価値の提供で人びとに「歓びと感動」をお届けしています。
HP