自粛生活で「歩数」「消費エネルギー」が減少。「体脂肪率」は増加【調査結果】




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新型コロナウイルス感染拡大による身体状態や健康行動の変化に関する調査分析が、健康経営支援アプリ「カラダかわるNavi」のユーザーを対象に行なわれ、先日その調査結果をお届けしました。

そして4月7日の緊急事態宣言後、さらにライフスタイルが変化していることを受け、2回目の調査が行なわれました。

(※株式会社リンクアンドコミュニケーション調査)

■調査結果
1. 歩数 <自粛とともに歩数は減少。緊急事態宣言前後では1日3,000歩未満が約3割に迫る!>

(図1)歩数の分布の変化(n= 27,018人)

歩数を、日本人の平均歩数(※1)の半分未満となる「3,000歩未満」、「3,000~6,000歩」、「6,000~9,000 歩」、健康日本21の目安(※2)である「9,000歩以上」の4段階に区分し、期間による変化が分析されました。

3,000歩未満の人は、コロナの影響がさほど大きくなかった1月(①の期間)では17.8%だったのに対し、自粛要請期間(②の期間)では20.1%、緊急事態宣言期間(③の期間)では28.4%となり、30%近くまで増加して います。また、6,000歩未満の人は1月は50.2%、その後緊急事態宣言期間には63.4%と、その差は13.2ポ イントと急増しており、全体的に歩数が減っていることがうかがえます。
※1 平成29年度「国民健康・栄養調査」の結果では、日本人の平均歩数は6,322歩です。(20~64歳の平均歩数は7,121歩)
※2 「健康日本21」の20~64歳の歩数の目標は、男性9,000歩、女性8,500歩です。

2. 歩数と運動の消費エネルギー <3,000歩未満の人は、エアロビ17分相当のエネルギー消費が必要!?>

(図2)歩数と運動の消費エネルギー (n=約9,799人)

歩数で消費しているエネルギー(※3)と、運動で消費しているエネルギーを足し、厚生労働省が「健康づくりの ための運動指針2006」で推奨している1日の活動量の200kcal(※4)と比較しました。 3,000歩未満の人は、1日に約90kcal分の消費エネルギーが不足していることがわかりました。90kcalを消費するためには、掃除であれば24分、自宅でできる軽めのエアロビクスで17分、ウォーキングで21分の時間が必要です(表1参照)。3,000歩未満の人には、これらの家事や自宅でできる運動、まわりに人がいない環境でできる運動をうまく組み合わせて、不足している90kcal分を追加で消費するよう促す必要があります。

※3 歩数の消費エネルギーは、1000歩分の消費エネルギー=10分×3メッツ×体重60㎏=28.8kcalとして計算しています。それぞれのグループの歩数は「3,000歩未満」は2,500歩、「3,000~6,000歩」は4,500歩、「6,000~9,000歩」は7,500歩、「9,000歩以上」は10,000歩として計算しました。
※4 「健康づくりのための運動指針2006」では1週間で23エクササイズ(Ex)の活動を推奨しています。それを1日あたりの消費エネルギーに換算すると、体重60㎏の人では、23Ex×60㎏÷7日≒200kcalです。

3. 体重・体脂肪率

<歩数が減った今はダイエット効果が現われにくい!>

(図3)歩数カテゴリーごとの体重変化 (n=11,959人)

2019年12月1日~2020年2月1日の中で、体重のデータがある2月1日に最も近い日の体重を基準として、 2月以降の体重の増減が調査されました。 9,000歩以上の人は、基準日と比べると4月2週目では約-0.4㎏でした。一方、6,000~9,000歩の方は約0.25㎏、6,000歩未満の人では約-0.2㎏とあまり変化がありませんでした。 アプリユーザーのうち約75%は、ダイエットやメタボ改善を目的としていますが、歩数が減っている昨今の状況下ではダイエット効果が現われにくくなっています。

<4月以降、歩数にかかわらず体脂肪率が上昇傾向に!>

(図4)歩数カテゴリーごとの体脂肪率の変化 (n=11,959人)

2019年12月1日~2020年2月1日の中で、体脂肪率のデータがある2月1日に最も近い日の体脂肪率を基準として、2月以降の体脂肪率の増減を調査しました。 2月2週目から3月4週目までは、9,000歩以上を歩いている人は順調に体脂肪が減少している一方で、9,000歩未満の人では横ばいでした。4月に入ると、歩数に関わらず体脂肪率が上昇しています。

図3の体重変化と図4の体脂肪率の変化を見比べると、3,000歩未満の人の体重は3月から横ばい傾向、体脂肪率は3月2週目から上昇傾向になっています。体重に変化がなく体脂肪率が増えているということは、 筋肉が減り始めている可能性があります。体脂肪率の上昇は将来のメタボリックシンドロームのリスク を、また、筋肉量の減少は将来の寝たきりのリスクを増加させる原因となります。筋肉量を今よりも減らさない工夫が必要と言えます。

■専門家からの意見(東京大学大学院 准教授 近藤 尚己先生)
自粛要請、緊急事態宣言など行動制限が強まるにつれ、3,000歩未満の人が顕著に増えてきていることが「見える化」された衝撃的なデータです。身体活動の低下は糖尿病、心臓尿、脳卒中などの慢性疾患、うつ病やがんなど様々な病気と関係していることが、多くの学術研究により指摘されています。外出を控えながら、新しい 形で運動習慣をつくれるよう社会全体でサポートしていく必要があるでしょう。
テレワークを推奨している会社では、従業員の活動量を確認して、活動量が減少している従業員には運動を促してほしいと思います。例えば1日の中で時間を決めて社内SNSで20分間の運動を推奨したり、運動することへのインセンティブをつけたりなどの工夫ができるかと思います。また、リモートでも社員が顔を合わせて積極的にコミュニケーションをできる工夫をすることで孤立感やうつ病などを防止し、心の健康も維持していただきたいと思います。

近藤尚己 先生(医師・医学博士)
・社会疫学者 ・公衆衛生学研究者
・東京大学大学院医学系研究科准教授(保健社会行動学分野、健康教育・社会学分野主任)
・日本老年学的評価研究機構理事
・日本疫学会代議員
・日本プライマリケア連合学会代議員

■調査の概要
〇分析期間
2020年2月2日(日)~2020年4月11日(土)の10週間。
・歩数は、当該期間との差を比較するために、2020年1月12日~2月1日のデータも利用。
・体重と体脂肪は、当該期間との差を比較するため2019年12月1日~2020年2月1日の期間内の1番新しいデータも利用。

〇分析項目
歩数、運動の消費エネルギー、体重、体脂肪率

〇分析対象者
アプリのユーザーで、分析・発表の許可を頂いた利用者のうち、
・歩数は1月12日~4月11日までのデータがある人。(n=27,018人)
・運動の消費エネルギーは、各週で3回以上の運動入力データがある人。(n=約10,000人)
・体重と体脂肪率は、分析期間内に2回以上の入力データがある人。(n=11,959人)