注目度急上昇の健康食材【意外と知らないレモンの力 #1】





最近、巷ではレモンの効能が注目されています。レモンと言えば「ビタミンCが多い」「クエン酸が体に良い」など漠然とした知識はあるものの、詳しい知識がある人は意外と少ないのではないでしょうか。そんなレモンについて専門家のお話を伺いました。今回から3回に渡って特集していきます。

需要が高まる国産レモン

農林水産省の調査によると、日本国内のレモン収穫・出荷量は1994年から2014年までの20年で収穫量は約4倍、出荷量は約3倍以上に増えています。その理由は何なのでしょうか。

レモン関連商品の販売を手がけるポッカサッポロフード&ビバレッジマーケティング本部の有馬忠宏さんは「日本最大の産地である広島が2007年頃から収穫量を増やし、『瀬戸内レモン』のブランド化に乗り出しことで増加傾向が顕著になりました。さらに2013年のひろしま菓子博でレモンを使ったお菓子が多く紹介されたことがきっかけとなり、瀬戸内産のレモンが皮まで安心して使えることが注目されました。これを契機に、塩レモンやレモン酢といった皮ごと使う活用法が広がってきています。最近ではレモンを使ったお菓子やおつまみなどの加工品も数多く販売され、レモンサワー人気と相まってレモンの需要に供給が追いつかない状態が続いています。また、レモンの健康効果に関する研究も進み、ここ数年はメディアで紹介されることが増えてきたことも、需要を伸ばす背景になっていると思います」とコメントしています。

瀬戸内海の「レモン島」

一年を通してスーパーなどで手に入るレモンですが、実は国産レモンの旬は冬。11月から収穫が始まります。

広島県の瀬戸内海に大崎上島(おおさきかみじま)というレモンの産地として有名な島があります。急斜面の多い島で、その急斜面がレモン栽培に適しいるため、「レモン島」とも呼ばれています。そこではレモンを生産するだけでなく、島民の健康維持にもレモンを役立てています。

広島大学保健福祉学部理学療法学科・飯田忠行教授が、2017年2月~2018年2月に実施した島民90名(61.9歳±10.8歳、男性26名・女性64名)を対象にした健康調査によると、島民のレモン平均摂取量は約5日に1個という結果でした。全国平均が年間に5個なので、約15倍も多い(※1)ことがわかります。

また、大崎上島町でレモン農家を営む岩崎農園・岩崎さんによると「大崎上島町の人たちは、レモンを積極的に取り入れています。例えばレモン果汁を醤油さしに入れて常備している家庭も多いですよ。レモン果汁を、お湯やお水、牛乳などに入れて飲んでいます。また、皮ごと使った家庭料理も多く、レモンを丸ごと食べているのも、地域ならではの食べ方ではないでしょうか」とお話しています。

※1 USDA「WorldMarketsandTrade」世界のレモン・ライム国別消費量と日本人の人口より算出

レモン島の健康寿命は平均80歳。全国平均より約7歳高い

レモン島の住民の健康寿命は、平均80歳と全国平均よりも7歳も高いというデータがあります。性別で見ると、男性は全国平均72.14歳に対し、レモン島民は76.4歳と4歳高く、女性は全国平均74.79歳に対し、レモン島民は83.7歳と約9歳も高いのです。(※2)

※2
全国の健康寿命:第11回健康日本21(第二次)推進専門委員会資料
大崎上島町の健康寿命:大崎上島町第Ⅱ期健康増進計画・食育推進計画(平成24年11月)広島県による算出

レモン島民は骨が丈夫

前出の飯田教授の健康調査によると、女性では同年齢平均の骨密度よりも島民のほうが高い傾向が見られました。さらに、レモンを多く摂取している島民ほど骨密度が高いこともわかりました。

これについて、飯田教授は次のようにコメントしています。

「骨密度が高い理由の一つとして、レモンに含まれるクエン酸が持つキレート作用が関係していると思います。キレート作用とは、カルシウムをはじめ、ミネラルを腸から吸収しやすい形に変えることです。そのため、血中カルシウム濃度が維持され、骨密度を維持することにつながります。通常カルシウムは、人体には吸収されにくく、食物から摂取した場合約70%は体外に排出されてしまいます。とくに高齢になると腸から吸収されるカルシウム量は低下傾向にあり、体は骨に蓄えられているカルシウムを使って補おうとします。その結果、骨粗しょう症になりやすくなるのです。島民の皆さんは、普段から多くのレモンを摂ることで、自然とカルシウムが体内に吸収されやすくなっているので、平均よりも骨密度が高くなった理由の一つにレモンの摂取が考えられます」

レモンを多くとっているレモン島民は血圧値が低い

さらに飯田教授の調査によると、レモンを定期的に摂取している人のほうが、最高血圧が低く抑えられていることもわかりました。

「レモンが血圧を下げる理由は皮に含まれるレモンポリフェノールと、果汁に含まれるレモンフラボノイドが関係しています。高血圧自然発症ラットを用いた研究でも、レモン果汁やレモンフラボノイド類が血圧に影響を及ぼす可能性が示唆されています(※3)

また、聖光ヶ丘病院(千葉県柏市)減塩外来の渡辺尚彦先生は「酸味には、塩味を引き立てる効果があるため、少ない塩分でもしっかりと味を感じることができ、減塩につなげることができます。レモン島の皆さんは、普段からレモンを料理に取り入れる中で自然と少ない塩分でおいしいと感じる味覚ができているのではないでしょうか。レモンのさわやかな酸味や香りは、和洋中どんな料理にも合わせやすく、レモンは1年中簡単に手に入れることができます。患者さんの中には、血圧を下げるために食事による減塩指導も行なっています。無理なく簡単に減塩生活ができるという点で、減塩外来ではレモン果汁を食事に取り入れることを指導しています」と語っています。

※3 Suppressive Effect of Components in Lemon Juice on Blood Pressure in Spontaneously Hypertensive Rats Food Science and Technology International, Tokyo 1998, Vol. 4, No. 1, P 29-32

疲れているときこそ、レモンが力を発揮する

呼吸器内科の専門医の大谷義夫先生は、レモンを代表する栄養素ビタミンCについて次のようにコメントしています。

「重労働下の厳しい環境では、ビタミンCはカゼ予防に有効であるという研究結果(※4)がでています。これは、疲れている状況でのカゼ予防として、ビタミンCが有効である可能性があると言えるでしょう。インフルエンザや風邪など気になる季節、睡眠不足で仕事をして疲労が蓄積される時などは、意識的にビタミンCを多く含むレモンを食事に取り入れることをおすすめします」

※4 出展:2016年9月日本胸部臨床、上気道感染症を科学する「ビタミンCと風邪との関連」