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「筋肉は本業で活かすことができない(笑)」コスプレ筋肉弁護士・小林航太 #2




コスプレイヤーで現役の弁護士という異色の肩書を持つ小林航太さん。今回は弁護士として現在に至るまでの過程と、現在の多忙な日々について聞きました。

■僕がメディアに出ることで、弁護士への相談の敷居を下げられないかなという思いはあります。

――弁護士に目指すきっかけとなったのは、中学生の頃に出会ったゲーム「逆転裁判」なんですよね。

小林:そうですね。最初はそれくらい些細なきっかけでした。

――ただ、司法試験に合格するのは容易なことではないと思います。

小林:弁護士になるために入った東大ですが、在籍6年目を迎えて除籍寸前まで追い込まれました。その時に自分の将来をあらためて考えて、一度志した夢をあきらめるのは悔しいなと思ったんです。いくら逆転裁判がきっかけとはいえ、ここで他の道を進むのは、今後生きていく中で心にわだかまりを残す確信があって、一発踏ん張ってやろうという気持ちになりました。

――努力が実って司法試験合格後に、弁護士事務所の就活があったと思います。面接時にコスプレ活動をしていることを話すことはあったのでしょうか?

小林:就活前に自分の中でターニングポイントだと思う出来事がありまして、トレーニングを始める前に撮った過去の写真と、司法試験合格後に撮影した写真を比較したツイートを投稿したんです。同じキャラクターのコスプレをした写真ということもあり、それなりにリツイートしていただいて、SNSでよく話題になる裁判官の岡口基一さんという方にも拡散していただいたんですよ。そこから法律関係者にけっこう広まりまして、「IRORIO」というウェブニュースサイトの取材を受けることになりました。インタビュー記事が掲載されたことで、面接に行くと、「あっ、知っている」みたいな感じの対応を受けたことはありましたね。当然記事にコスプレをしていることは書いていただいていたので、そのことについて話す機会もありました。

――やはり反応は事務所によって違うのでしょうね。

小林:コスプレしていることを嫌がる事務所も実際ありましたし、「君、弁護士になるんだったらTwitterやめたほうがいいよ」と面接で言われたこともありました。ただそれでは窮屈ですし、そういう考えの事務所に入っても絶対に続かないだろうなと思ったので、途中から「自分はこういう人間だ」という説明として、「IRORIO」のインタビュー記事を履歴書と一緒に送るようにしたんです。自分が最初に所属した事務所は、その記事を見て気に入ってくれたというもあり、採用していただいたので良かったですね。

――弁護士になったことで、日々のトレーニングに支障は出ませんでしたか。

小林:弁護士としての生活が始まった頃には、寝る前に歯を磨かないと気持ち悪いのと一緒で、週に少なくとも3、4回くらいはジムに行かないと気持ち悪くなってしまうほどにトレーニングは生活の一部になっていました。弁護士業務の忙しさも事務所や人によって変わってくる部分があるのですが、幸い最初の事務所は、トレーニングをする時間を確保した上で仕事が回せることができたので、そこまで障害は感じませんでした。

――その後、独立して法律事務所ストレングスの代表を務めていますね。

小林:昨年、独立しました。その頃にはメディアの出演も増えてきて、人の下で働きつつだとスケジュールの調整がなかなか難しくなっていたんです。あとは、社会保険労務士をやっていた母の働き方を見てきて、「自分の裁量で動けたほうが楽しそうだな」という思いをずっと抱いていて、できるだけ早いうちに独立したいという目標がありました。準備が整ったベストなタイミングで独立ができたと思っています。

――現在、スケジュール管理で意識していることはありますか?

小林:自分一人で回していく必要があるので仕事のスケジュールを中心にして、「どのタイミングでトレーニングをしていくのか」ということをつねに考えています。

――法律事務所ストレングスでは、コスプレイヤーを厚く支援していますね。

小林:そうですね。コスプレがきっかけでトレーニングを始め、たくさんの経験をすることができました。本当にコスプレのおかげで今の自分があるようなものなんです。インターネットとか自分の周囲の人々の話を聞いてみると、けっこうコスプレ絡みのトラブルってあるので、困った人たちが気軽に相談してくれるような存在になれればいいなと思っています。

――顧問契約を結んだ人を対象に、オンラインでのパーソナルトレーニングを行なっていると聞きました。

小林:まさに現在進行形でも行なっていまして、むしろそれ目当てで顧問契約を結んでくれる人もいるくらいです。基本的にトレーニングや食事についての相談を受け付けていまして、質問に答えたり、アドバイスを送ったりなどしています。せっかく身につけてきた知識、経験なのでそれを活かしていければと思って始めました。何せ筋肉は本業で活かすことができないので(笑)

――弁護士として積極的なメディア出演をしていますが、どのような思いがあるのでしょうか?

小林:いろいろなことをやらせてもらっていて、僕自身のことを知ってもらいたいという気持ちもあります。その一方でやはり弁護士というと、声をかけづらいようなお高いイメージを持っている人もいると思います。弁護士として、困っている人の助けになりたいですし、困ったことがあったときはもちろん、少し気になることがあるときでも相談してほしいので、僕がメディアに出ることで、少しでも弁護士への相談の敷居を下げられないかなという思いはあります。

取材/高野昭喜 撮影/神田勲
協力/パーソナルトレーニングジムBiP飯田橋店

小林航太(こばやし・こうた)
2018年8月、NHK『みんなで筋肉体操』に謎の筋肉弁護士として出演したことをきっかけに一躍時の人に。同年の大晦日のNHK紅白歌合戦では『みんなで筋肉体操』の共演者らと共に紅組天童よしみのステージを盛り上げた。2019年2月には初の著書『東大卒筋肉弁護士のもう後がない状況でも確実に結果を出せる超効率勉強法』(主婦と生活社)も出版し、弁護士業務の傍ら、各種メディア活動を重ねている。2019年7月、 法律事務所ストレングス設立に至る。