前回もお伝えしたように、私たちはカラダに対する“気づき”が必要。
ただ、そうは言っても、慣れというのはなかなか手ごわい“敵”でもあります。まさに難敵と言っても過言ではないでしょう。
したがって、カラダのスペシャリストであるアスレティックトレーナーや理学療法士、あるいは私たちケアマネージャーなどによって、指摘してもらうのが最も確実ですが、そういう機会がない場合には、ときどき意識的に自らのカラダを振り返り、“カラダの確認作業”、いわゆるセルフメンテナンスを定期的に実施してみることが重要ではないでしょうか。
その際、セルフチェックとしてよく活用されるのが、全身を映し出す鏡。自分では真っすぐに立っているつもりでも、鏡に映し出された自らの姿を見ると、例えば、右肩の位置が左肩に比べて下がっている……などの話はよく聞きます。
私たちが鏡に向き合った時、まず目がいくのが自身の顔。目と目が合います。そして中心である顔に対して、左右の肩→大転子→膝という具合に視線は徐々に下りていくのではないでしょうか。
それは自然の流れという意味でも、ごくごく普通の基本的なチェック方法と言えるでしょう。
ただ、私はそれだけでは、やはりどこかに落とし穴があるのではないかと思っています。なぜなら、土台となるカラダの中枢部(体幹や胸郭)にねじれや歪みが生じている場合があるからです。
たとえば体幹に歪みがあれば、それは骨盤に対して正しく乗っていないということで、だから、その“矛盾”を骨盤で軌道修正しようとする。ところが、一部位の軌道修正はまた新たな歪みを生じさせてしまうことになる。前回お伝えしたグラデーションがかかっていく様(さま)が目に浮かぶようです。つまりアンバランス+アンバランス=バランスという方程式でなんとか均衡を保っているのではないか、と。
でも、そのバランスは正と正との積み重ねによる正真正銘のバランスではないので、放っておくとケガや故障の要因になってしまう可能性が高いということを忘れてはなりません。
かと言って、私たちの目は、体幹まで見通せるわけではありません。ではどこを見るか。私は、できれば洋服を脱いで、おへその位置と腹直筋中央の縦ラインを鏡に映して、そこを中心に胸郭や骨盤のポジションをチェックすることを勧めています。
同時に、四肢のチェックに関しても、腹部と関連させることが必須と考えています。いずれにしても、まずは腹部の状態を見る。ここがセルフチェックをする際の最大のポイントではないかと考えています。
実際、私が施術をする際には、仰向けの状態になってもらってから実施することが多いのですが、それもやはり腹部にねじれがないかを確認するためです。
お腹には腰椎が通っているだけ。そういう意味では、とても自由度が高い部位であることはご承知の通りです。ところが、その一方で、腹部には筋膜の主要なラインが通過し、その周辺部を全方位的に交錯しています。とは言っても、それは骨ほど強固なものではないので、いわゆる癖の影響を最も受けやすい部位であるとも言えます。
つまり、お腹を観察すれば、周りの状況も必然的に想像できるようになってくるというわけで、それほどお腹の表情というのはカラダ全体の状況を雄弁に物語っていると言えるのです。
山本康子(やまもと・やすこ)
鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師、コンディショニングセラピスト。施術キャリアは30年。日本代表チームのトレーナーとしてトップアスリートのボディコンディショニングを手掛けてきた。その間、約6年に渡り外国人トレーナーと共にヨーロッパなど各地を転戦した経験によって、日本にはないスピリットを強く感じ、施術テクニックはもちろんのこと、人として現在もなお進化すべく努力を続けている。2004年に、アー・ドライ治療院、2013年に筋膜リリース専門のスカンディックケアを開業。施術者の育成と労働環境整備にも力を注ぐ。
Scandic care (スカンディックケア)
〒162-0056 東京都新宿区若松町10‐1 YSビル2 F
Tel. 03-3208-2543
Mail:info@scandiccare.jp
営業時間:平日. 11:00 ~ 21:00、土日祝. 11:00 ~ 20:00
公式HP
アー・ドライ治療院(新宿区)
ホームページ未公開。2020年3月現在、新規受付はできない状況です。スカンディックケアにお問い合わせください。
取材/光成耕司