「便」は「便り」。見逃すのはもったいない【「うんちは健康成績表」鈴木啓太(AuB株式会社代表)】vol.3




元サッカー日本代表であり、現在は腸内フローラ(腸内細菌の生態系)解析事業を行うベンチャー・AuB(オーブ)株式会社の代表取締役を務める鈴木啓太氏。これまでに約700人1,400検体にも及ぶアスリートの“うんち”を基にデータの分析をするなど、腸にフォーカスしたアスリートのコンディション管理、パフォーマンス向上を目標に、日々研究を行っている。今回は、研究成果を込めた商品「AuB BASE(オーブ ベース)」について。

起業4年間の結晶がついに商品という形に

――2019年12月にサプリメント「AuB BASE(オーブ ベース)」を発売したわけですが、そこに至るのに大きな苦労があったと聞きました。

鈴木:昨年は、会社として資金が底をつきそうなところまでいき、令和を迎える頃は金策に奔走していたんですよ。僕自身はファイナンスの部分はあまり得意ではないですし、投資家のみなさんの立場にしても、まだまだビジネスとしての確実性がわからないわけですよね。そこで我々のビジョンであったり、プロダクトのことであったりをうまく伝えられることができず……。ちょうどお金がなくなっていく時期と、製品を作っていかなくてはいけない時期が重なってお金がショートしそうという状況に。ただ幸いなことになんとか投資家の方からの資金調達が決まり、事業に投資できる体制を整えることができました。

――そうした苦労の末に生まれた「AuB BASE」について、改めてどういう商品か教えていただけますか。

鈴木:開発までに協力いただいたアスリート500人、1000検体から得られた知見が形になったものです。先ほど(第2回)お話ししたように、アスリートと一般の方との大きな腸内環境の違いというところで、「多様性がある」こと、そして「酪酸菌が多い」ことがあり、このサプリメントを飲んでいただけると、そのようなアスリートの腸内環境に近づけることができるものになっています。

――アスリートの腸内環境に近づけることができれば、健康になれるということですか?

鈴木:そうですね。アスリートは一般の方よりもつねに高い負荷がかかったり、あるいは良いコンディショニングを維持しなければならなかったりする人たちですよね。だから、間違いなく強く健康な体を持っていると思いますし、その基礎となるのが腸だと思っています。土台となるところに変化が生まれるものを摂取していただくことで、より健康的な生活が得られるものになっています。

――すでに多くの方が摂取していると思いますが、どのような声が挙がっていますか?

鈴木:摂取いただいた方の腸内を調べると、多様性が上がったり、酪酸菌が増えていたりということがあります。皆さんのお声を聞くと、疲れにくくなったとか、うんちの色が美しくなったということもあります。僕自身も飲んでいますが、やはり便がスムーズに出るようになったと実感しています。もちろん、合う・合わないは人によってあると思いますし、個人の感想なのですべての人がそうなるとは言えないですが、やはり飲むと体調が良くなる感じがするという声は多いですね。

――多くの人の健康に寄与できるサプリメントなんですね。

鈴木:もちろん「AuB BASE」だけで健康になるとは思っていませんが、僕としてはもう一つ大切なことがあると思っています。それはこれを飲んでもらうことで、体内が変化するということに加えて、健康への意識や生活習慣が変わってくることだと思います。うんちって「便」と言いますけど、“便(たよ)り”と書きますよね。うんちは自分からの便りなので、便がおかしいなって思ったら、何か身体に合わないものを食べたのかなどを感じるようになります。そうやって気にしていき、自分で修正していくようになると思います。でも便の状態を気にしていなければ、もしかしたらサインが出ていたかもしれないのにそれを見逃して、「何か調子が悪いな」で終わってしまいます。

――そういう意味で、便を見ることは大切だと。

鈴木:例えば、体重計もそうですけど、毎日乗らないと自分の体重の変化はわからないじゃないですか。でも乗っていれば、それが意識となって、食べるものを変えたり生活習慣を変えようと思ったりするようになりますよね。でもみなさん、毎朝トイレに入って、うんちをして、“自分の健康の成績表”を見ないんですよ。だから、「AuB BASE」を飲むことによって、必ず便の変化を気にするようになるのではないかと思います。

――確かに、飲んで終わりにはせず、どういった変化が起こるのかは気になりますね。

鈴木:そうです。なので、そういう指標の一つとして使っていただくのもいいのかと思います。なかなか飲んだ成果というのは、すぐにはわからないとは思います。体感がある人もいれば、ない人もいるでしょう。ただ、飲まない1週間と飲んだ1週間後で便を比べてもらったら、変化はわかると思います。

――うんちは“健康の成績表”と言われるのがよくわかりました。

鈴木:皆さん、もともとはやっているんですよ。赤ちゃんの頃、お母さんがその子の体調を見るのって便なんですよ。うんちを見て、今日はこの子ちょっとおかしいなと思ったり、いいうんちが出たら喜んだりするわけじゃないですか。それが、いつしかやらなくなるんですよ。でもうんちを毎日見ていれば、変化に気付くはず。自分の身体から出るものって、おしっこかうんちか、唾液とかもありますけど、それは自分の健康のシグナルなので。それを見ないというのは、すごくもったいないと思います。50cm級のうんちが一本出たら、「今日は体調良いな!体が軽いな!」って思うじゃないですか(笑)。

――確かにそう思います(笑)。ちなみにですが、「AuB BASE」を摂取することで、腸内で免疫機能につながる酪酸菌の増加が見込めるとのことですが、今流行している新型コロナウイルス対策にもなりえるものなのでしょうか。

鈴木:コロナ対策になると直接的なことは言えませんが、免疫細胞の7割から8割は腸にあると言われているのは確かです。ということは、腸内環境の改善で免疫力が高まるということはロジックとして成り立ちますよね。腸内環境が良い状態にあることは、多様性が高いということなので、そういう意味で「AuB BASE」が貢献できるところはあるのではないかと思います。

――免疫力につながるところがあるわけですね。

鈴木:あと、免疫力という話で一つ。コンディショニングの問題で、アスリートは免疫力が低下しがちだと言われることがあると思うのですが、それはすごくハードなトレーニングをしているから免疫力が下がるわけですよね。もし一般人の方が同じ負荷でトレーニングをしたら、免疫力はより下がるでしょう。免疫を司る酪酸菌は、すでにお話ししたようにアスリートのほうが2倍多いわけです。ということは、その負荷に耐えうる腸内環境や免疫機能というのは、当然一般の方よりもアスリートのほうが高いと思っています。でも、激しいトレーニングをするから免疫力が落ちてしまう。

――アスリートの免疫力が低いわけではないと。

鈴木:もしアスリートが今のまま激しいトレーニングをしなければ、おそらく免疫力は一般の方よりもかなり高い。これは仮説ではありますが、僕はそう思っています。だからこそ「AuB BASE」を飲むことで、免疫力が高めることができるのではないのではないかという試験をしているところです。

Vol.4「夢に向かって暮らせる健康的な社会を実現したい」に続く

夢に向かって暮らせる健康的な社会を実現したい【「うんちは健康成績表」鈴木啓太(AuB株式会社代表)】vol.4

鈴木啓太(すずき・けいた)
1981年、静岡県出身。AuB株式会社代表取締役。元プロサッカー選手。2000年に、東海大翔洋高校から浦和レッズに加入。ベストイレブンに2度輝くなど、16年にわたり浦和一筋でプレー。2006年にはイビチャ・オシムが監督に就任した日本代表にも選出され、オシムジャパンでは唯一、全試合先発出場を果たす。2015年シーズンをもって現役を引退。同年にAuB株式会社を設立。サッカーの普及に関わりながら、腸内環境にフォーカスした研究を日々行い、その知見やアイデアを事業化。2019年12月にはAuB初商品であるサプリメント「AuB BASE」を発売し、自社ECサイトAuB Storeにて好評発売中。「とくダネ!」(毎週月~金曜朝8:00-9:50、フジテレビ系)の金曜日スペシャルキャスターとして出演中。