A.それぞれについて説明していきましょう。
「PNF」は神経反射を用いたストレッチで、「Proprioceptive Neuromuscular Facilitation」の略になります。日本語では「固有受容性神経筋促通法」と言われています。自己抑制と相反抑制を組み合わせて、筋紡錘や腱紡錘に刺激を与えて柔軟性の改善、筋出力の向上を図る方法です。
筋肉や関節には固有受容器というさまざまな情報を感知するセンサーがあり、あらゆる感覚をキャッチして筋肉が発揮する力を調整しています。
筋肉の末端の腱にはゴルジ腱器官という張力を感知するセンサーがあります。自己抑制とは、ゴルジ腱器官の張力を感知するセンサーからの神経伝達によって、力を出した筋肉が損傷されないように(出力の)抑制の刺激が出されることにより主働筋が弛緩する神経反射メカニズムのことです。
もともとは1940年代に麻痺の人のために開発された手法ですが、理学療法士が使っていたテクニックがスポーツ界においてパフォーマンスアップを目的に使われるようになりました。
「コンパウンドストレッチ」は私がつけた名称で、複合的なストレッチを指します。今で言うところの「アクティブストレッチ」で、3次元的なひねりを加えたストレッチになります。
「コンプレッションストレッチ」は、わかりやすい言葉に置き換えると「圧迫ストレッチ」になります。現在の筋膜リリースに似た手法になります。徒手で行なう筋膜リリース、と言っていいかもしれません。
ボールやポールを用いた場合と異なるのは、圧の強さやかけ方をいろいろと変えることができるので、刺激のかかり方が変化し、より高い筋膜リリースの効果が期待できるところにあります。ただし、マッサージではないので、圧迫のポイントは単純に圧を入れるだけで、揉んではいけません。
※本記事は、2017年に公開した記事を再構成したものとなります
長畑芳仁(ながはた・よしひと)
1960年、大阪府出身。 特定非営利活動法人日本ストレッチング協会理事長。日本体育協会認定アスレティックトレーナー。 帝京大学講師。早稲田大学教育学部卒業、順天堂大学大学院体力学専攻修了。 2001年「すとれっち塾戸田公園店」開設。専門分野はアスレティックトレーニング、スポーツ科学、アスレティックリハビリテーション。リコーラグビー部など、多数の社会人・大学チームのストレングスコーチ、および日本代表ボートチームのフィジカルサポートなどを務める。「ストレッチまるわかり大事典」(ベースボール・マガジン社)「アクティブBODYストレッチ」(日東書院)など著書多数。
日本ストレッチング協会HP