9月26日、この日、世界の一部、否、数多くのフィットネス関係者が、自然と身を引き締め、襟を正している。チャールズ・ポリクィン(Charles Poliquin)の命日だからである(※フランス系カナダ人であり、より正確にはシャルル・ポリカン)。
世界最高のS&C(Strength and Conditioning)コーチと評され、フィットネス業界に多大な功績を残した。
ポリクィンの業績の偉大さを物語るのが、その指導歴だ。生前に残したツイッターのプロフィール欄には、以下のように記されている。
私はアスリートをオリンピック金メダリストに変える。私は22の競技のメダリストを指導し、数千人のフィットネスゴール達成を手伝ってきた。
指導したトップアスリートには、NFLやNHLの選手たち、アテネ五輪金メダリストのドワイト・フィリップス(走り幅跳び)とアダム・ネルソン(走り幅跳び)などが含まれる。
また、カナダ人のベン・パクースキー(Ben Pakulski)などのボディビルダーたちも、選手として、コーチとして、ポリクィンの指導を受けている。ストレングスとパフォーマンスの向上に加え、世界レベルのボディビルダーの需要にも応える筋肥大も実現してみせる、幅広い対応が可能なS&Cコーチだったことが窺い知れる。
直接の指導に限らず、その名も“The Poliquin Principles”(The Poliquin Principles: Successful Methods for Strength and Mass Development, 1997, Dayton Pubns & Writers Group)その他の著作を通じても、フィットネス関係者に多大な影響を及ぼした。とりわけ、ウェブマガジン“T Nation”(t-nation.com ※TはテストステロンのT)への投稿は、頻度高く極めて積極的であり、関係者の注目を集め続けていた。
享年57歳。非公式に伝えられる噂によると、遺伝的に問題を抱えていた心臓の発作に倒れたという。既述の指導や執筆に加え、世界各地で頻繁にセミナーを開催するなど、精力的な活動をしていただけに、その早すぎる突然の死が悔やまれる。
なお、愛称はストレングス先生(Strength Sensei)。少年時代に空手を学び、自身のHPに「力先生」の文字をデザインとして取り込むなど、親日派。ストレングス先生というこの呼び名、恐らくはポリクィン自らの命名と思われる。
とくに大きな功績とされるのが、関係者にGVTの3文字のイニシャルで通じる「ジャーマン・ボリューム・トレーニング」の普及である。次回は、このGVTを中心に、ポリクィンの業績について紹介したい。
文/木村卓二