トレーニング中の理想のドリンクの条件




サプリメント実践的活用のスペシャリストである桑原弘樹さんが、サプリや栄養に関する疑問を解決する連載。第35回は、トレーニング中の水分補給に適した飲料について。

■ハイポトニックドリンクとは

今回は、トレーニング中に飲む理想のドリンクの条件を考えてみたいと思います。

水分は私たちの体の約60%を占めていますから、重要度としては三大栄養素よりも水のほうが上と言えるかもしれません。一方で、水はつねに体内から発散されています。仮にトレーニングをしていない状態であっても、一日に2.5ℓほどの水分が体から消費されています。つまりまったく水分補給をしなければ、それだけで一日に2.5kg分体重が減るということです。もしトレーニングをするとなると、その季節やトレーニングの内容にもよりますが、ざっと500CC~1ℓ/hが抜けていくのです。

そこで、いかに上手に水分補給をするかという発想になりますが、以前は水を飲むという至ってシンプルな行為だったものが、スポーツニュートリションの進化にも伴い、エネルギーや電解質などを水分と一緒に補給することが可能になってきたのです。

ここで登場したのが、低浸透圧ドリンクです(ハイポトニックドリンク)。CCDはまさにハイポトニックドリンクの典型ですが、さらに高エネルギーという点が特長とも言えます。

本来は、水に物質を溶かせば溶かすほど浸透圧が上がりますので、高エネルギーにすればするほど低浸透圧からは離れていくのですが、CCDという特殊なデキストリンは、高エネルギーであるにも関わらず浸透圧を上げない(上げにくい)という特長があるため、高エネルギーのハイポトニックドリンクが可能となったのです。

浸透圧が高い状態は、一般的には水にたくさん物質が溶けている状態でもあるため、わかりやすい表現をするなら液体がどんどん固体に近づいていることになります。つまり、お腹に溜まりやすい状態なのです。

従来のスポーツドリンクは電解質が含まれるという特徴と、体液に近い浸透圧(アイソトニック)という特徴を有していました。決してアイソトニックが悪いという意味ではありませんが、トレーニングの最中という観点で言えば、より低浸透圧であるほうがお腹に溜まりにくくなるため、最近ではハイポトニックドリンクが人気になっているのです。

ちなみに、お腹に溜まりにくい(胃から腸へ速く移行する)ドリンクの条件はいくつかあります。

①低浸透圧であること
⇒アイソトニックよりもより浸透圧が低い状態。

②ナトリウムと糖質(ブドウ糖)が含まれること
⇒ナトリウムとブドウ糖が小腸での粘膜透過性によって吸収される際、それに伴って水も吸収される。4~8%糖質濃度、0.1~0.2%食塩濃度。

③冷水であること
⇒5~15℃。

摂取量に関してはトレーニング時間にもよりますが、トータル的には発汗による体重減少の70~80%の補給を目標とすることをおすすめします。


桑原弘樹(くわばら・ひろき)
1961年4月6日生まれ。1984年立教大学を卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。開発、経営企画などを経て、サプリメント事業を立ち上げ、16年以上にわたってスポーツサプリメントの企画・開発に携わる。現在は桑原塾を主宰。NESTA JAPAN(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会 日本支部)のPDA(プログラム開発担当)。また、国内外で活躍する数多くのトップアスリートに対して、サプリメント活用を取り入れた独自のコンディショニング指導を行ない、Tarzan(マガジンハウス)など各種スポーツ誌の企画監修や執筆、幅広いテーマでの講演会など多方面で活躍中。著書に「サプリメントまるわかり大事典」(ベースボールマガジン社)、「私は15キロ痩せるのも太るのも簡単だ!クワバラ式体重管理メソッド」(講談社)、「サプリメント健康バイブル」(学研)などがある。プロフィール写真のタンクトップにある300/365の文字は、年間365日あるうち300回のワークアウトを推奨した活動の総称となっている。300日ではなく300回であることがポイントで、1日2回のワークアウトでも可。決して低くはないハードルだが、あえて高めの目標設定をすることで肉体の進化が約束されると桑原塾は考え、実践している。