皆さんが、ご自身の疲労度を推し量る目安としている部位はどこでしょうか?
おそらく多くの人は「首・肩周辺」と答えるのではないでしょうか。実際、我々の治療院にも首・肩こりを主訴として訪れる方々が少なくありません。
そして、いろいろとお話を聞いていると、やはり現代人というのは座り仕事による影響が大きいものであると改めて感じます。加えて思い至ることは、ここ数年、スマホに見入っている時間帯が増え続けていることも、その症状に追い打ちをかけているといっても過言ではありません。
例えば、通勤風景も今では大きく様変わりし、電車の中ではスマホを操作していない人を探すほうが困難と感じるほどです。そういう意味では、首・肩こり症状はどんどん根深くなってきているのではないか、と感じます。
果たして、皆さんは一日の間にどのくらいスマホの画面と対峙していますか?
スマホは小さな画面なので、とくに文字を追うときは次々にスクロールしなければなりません。例えば、500字程度のボリュームの文章を読む場合、PCの画面であればスクロールしなくても読むことができるけれども、スマホだと文字を上へ上へと移動させていく必要があります。老眼の方であれば、文字を大きくしなければならないので、なおさらスクロールは必須です(笑)。
このように画面が次々に移り替わっていくことは、すなわち眼球もそれを追い続けているということになります。すると、その目の動きは動眼神経反射というメカニズムを発生させ、後頸(頭)部にその反応が現れ、徐々に首が詰まったような不快感を生じさせてしまうのです。すなわち、ただ単にスマホに見入っているだけでも首・肩こりの大きな要因の一つになってしまっているというわけです。
私たちは、首・肩こりの症状を改善するためには、その部位にダイレクトにアプローチすればいいと考えがち。もちろん、それも大事。でも、実はそれだけでは不十分なのです。首の筋肉から一つ一つ辿っていくと、肩から腕、そしてスマホを操る手にまで到達しています。
本来、ヒトの体は体幹を主軸(原動力)として機能しています。だから、姿勢が崩れるなど、体のどこかに歪みが生じると、当然のことながらその体幹部には疲労感をはじめとするさまざまな症状が表われます。
一方で、腕や手の場合には、普段から酷使しているにもかかわらず、それほど疲れを感じることはありません。なぜなら、より機能性や巧緻性を求められるがゆえに、そもそもとして疲労を感じさせにくいという特性を備えているからでしょう。もっと言えば、たとえ腕や手に発生した疲労であっても、体幹部が一身に背負いこんでいるというふうにも考えられるのです。
スマホに代表されるように、昨今の現代人の生活環境はまるで手・腕が主の役割を担い、体幹は添え物のようになっているのではないかと思うほどです。そういう意味では、スマホの長時間操作は、体幹の弱体化をさらに推し進めるのではないかと危惧すると同時に、実は手・腕にこそ疲労が溜まりに溜まっていることを物語っているとも言えます。だからこそ、この部位にも十分なケアが求められるというわけなのです。
山本康子(やまもと・やすこ)
鍼灸師、あん摩マッサージ指圧師、コンディショニングセラピスト。施術キャリアは30年。日本代表チームのトレーナーとしてトップアスリートのボディコンディショニングを手掛けてきた。その間、約6年に渡り外国人トレーナーと共にヨーロッパなど各地を転戦した経験によって、日本にはないスピリットを強く感じ、施術テクニックはもちろんのこと、人として現在もなお進化すべく努力を続けている。2004年に、アー・ドライ治療院、2013年に筋膜リリース専門のスカンディックケアを開業。施術者の育成と労働環境整備にも力を注ぐ。
Scandic care (スカンディックケア)
〒162-0056 東京都新宿区若松町10‐1 YSビル2 F
Tel. 03-3208-2543
Mail:info@scandiccare.jp
営業時間:平日. 11:00 ~ 21:00、土日祝. 11:00 ~ 20:00
公式HP
アー・ドライ治療院(新宿区)
ホームページ未公開。現在、新規受付はできない状況です。スカンディックケアにお問い合わせください。
取材/光成耕司