お酒は百害あって一利なし?【桑原弘樹の栄養LOVE】




サプリメント実践的活用のスペシャリストである桑原弘樹さんが、サプリや栄養や肉体に関する疑問を解決する連載。第57回は、アルコールが体に及ぼすメリット、デメリットについて。

■適量であればメリットもあり

酒は百薬の長などと言われるように、タバコと比べた場合、全否定にはならないと思います。私も酒飲みなので、少し肯定派にまわってしまうという一面もあるのですが、適量のアルコールはメリットも存在します。

寝つきがよくなって睡眠の質が上がったり、リラックスしたり、気分が高揚したりなどは、わかりやすいメリットです。お酒を飲むと人が変わるという表現は、どちらかと言えばネガティブなイメージで使われるかと思いますが、人と打ち解けるのが苦手な人がアルコールの力を借りて、コミュニケーションが上手にとれるようになるのもメリットのうちと言えるでしょう。

健康面ではLDL(悪玉)コレステロールを下げたり、心筋梗塞のリスクを下げるといった報告もあったりします。

ただしこれは、あくまでも適量という大前提の場合です。適量を超えると、メリットと言われていた内容がすべて逆の効果になってしまいます。睡眠の質は落ちますし、人間関係も悪化しますし、LDLコレステロールも上げてしまいます。

適量は人それぞれなので一概にアルコールの量を指定できませんが、酔っても顔色が変わらないとか乱れないといった基準ではなく、せいぜいビールにしてロング缶1本、日本酒であれば1合といった程度が適量の限界でしょう。適量を超えた際のデメリットは、限りなくあります。何と言っても肝臓でアルコールを解毒しますから、そこへの負担が大きくなります。

肝臓は人工では決してつくることのできない臓器と言われています。役割が多いこともですが、体内での解毒と代謝という2大ミッションを一手に引き受けているからでもあります。つまり肝臓が疲れるということは、解毒や代謝がスムーズでなくなることでもあるので、まさに百害となります。

もうひとつアルコールで怖いのは中毒性です。アルコール依存症とまでいなかくとも、毎日癖のように飲んでしまう常用性がありますから要注意です。

ちなみにアルコールには筋肥大にいいという報告はありませんから、少なくとも筋肉へのプラスの要素は見つかりません。

結論としては、百害はあるけど一利もあるといった感じでしょうか。


桑原弘樹(くわばら・ひろき)
1961年4月6日生まれ。1984年立教大学を卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。開発、経営企画などを経て、サプリメント事業を立ち上げ、16年以上にわたってスポーツサプリメントの企画・開発に携わる。現在は桑原塾を主宰。NESTA JAPAN(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会 日本支部)のPDA(プログラム開発担当)。また、国内外で活躍する数多くのトップアスリートに対して、サプリメント活用を取り入れた独自のコンディショニング指導を行ない、Tarzan(マガジンハウス)など各種スポーツ誌の企画監修や執筆、幅広いテーマでの講演会など多方面で活躍中。著書に「サプリメントまるわかり大事典」(ベースボールマガジン社)、「私は15キロ痩せるのも太るのも簡単だ!クワバラ式体重管理メソッド」(講談社)、「サプリメント健康バイブル」(学研)などがある。プロフィール写真のタンクトップにある300/365の文字は、年間365日あるうち300回のワークアウトを推奨した活動の総称となっている。300日ではなく300回であることがポイントで、1日2回のワークアウトでも可。決して低くはないハードルだが、あえて高めの目標設定をすることで肉体の進化が約束されると桑原塾は考え、実践している。