サプリメント実践的活用のスペシャリストである桑原弘樹さんが、サプリや栄養や肉体に関する疑問を解決する連載。第64回は、知っていそうで意外と知らない「カロリー」と「エネルギー」の違いについて。
■栄養学ではカロリーという単位を使う
エネルギーとは熱量のことで、カロリーは熱量の単位ということになります。
ちなみに1キロカロリーは、1気圧のもとで水1gを1℃上げるのに必要な熱量です。高さ0メートルの場所の気圧が、通常は1気圧(1,013ヘクトパスカル)となります。
なんだかわかったようで、わかりにくいですね。簡単に言ってしまえば、カロリーとエネルギーはほぼ同義語で、栄養学ではカロリーという単位を使うという理解でいいかと思います。
ただ、エネルギーは非常に広い意味で使われる言葉でもあります。体中からエネルギーが満ちあふれるという表現はあっても、カロリーが満ちあふれるとはあまり言わないでしょうし、エネルギッシュな人のことを「カロリー豊富な人」とは言いません。
私たちの体は巨大代謝ネットワークであって、それはカロリーを持つ三大栄養素を材料として、最終的にはATPというエネルギーを生み出す物質をつくっています。
実際、エネルギーはこのATPが分解される際に放出されるものなので、ATPをエネルギーと呼ぶ場合もあります。ビタミンもミネラルも、体内の数多くの酵素などもATPをつくり出すための代謝ネットワークを、スムーズに動かしていくための要素と言えます。
栄養素の区分の中で、糖質、脂質、タンパク質が三大栄養素として特別扱いをされるのは、これらしかカロリーを持たないからであって、ひいてはカロリーのないところからはATPはつくり出されないため、何よりも重要な栄養素ということなのです。
ただ、飽食の時代がゆえの贅沢な悩みとでも言いましょうか、ATPの材料となる三大栄養素があまりにも容易に手に入ってしまうので、逆に摂り過ぎの弊害が出てしまい、脂質カットだの糖質オフだのという発想が生まれてしまっているのです。
上手にカロリーを摂取して、代謝ネットワークをスムーズに動かし、たくさんのエネルギーをつくり出していけたらいいですね。
桑原弘樹(くわばら・ひろき)
1961年4月6日生まれ。1984年立教大学を卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。開発、経営企画などを経て、サプリメント事業を立ち上げ、16年以上にわたってスポーツサプリメントの企画・開発に携わる。現在は桑原塾を主宰。NESTA JAPAN(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会 日本支部)のPDA(プログラム開発担当)。また、国内外で活躍する数多くのトップアスリートに対して、サプリメント活用を取り入れた独自のコンディショニング指導を行ない、Tarzan(マガジンハウス)など各種スポーツ誌の企画監修や執筆、幅広いテーマでの講演会など多方面で活躍中。著書に「サプリメントまるわかり大事典」(ベースボールマガジン社)、「私は15キロ痩せるのも太るのも簡単だ!クワバラ式体重管理メソッド」(講談社)、「サプリメント健康バイブル」(学研)などがある。プロフィール写真のタンクトップにある300/365の文字は、年間365日あるうち300回のワークアウトを推奨した活動の総称となっている。300日ではなく300回であることがポイントで、1日2回のワークアウトでも可。決して低くはないハードルだが、あえて高めの目標設定をすることで肉体の進化が約束されると桑原塾は考え、実践している。