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運動不足という病気のパンデミック【佐久間編集長コラム「週刊VITUP!」第149回】




VITUP!読者の皆様、こんにちは。日曜日のひととき、いかがお過ごしでしょうか? 寒い日があったり春みたいに暖かい日があったり、寒暖差が激しい日が続いています。体調管理には十分お気をつけください。

 

さて、先週のコラム時点では首都圏の1都3県だった緊急事態宣言が、この1週間で東海、近畿、九州へも拡大。新型コロナウイルスの感染拡大の状況から考えて、これは仕方ないことと言えるでしょう。外出を極力控えてコロナのリスクを抑えるのは大事なことです。一方で日常の生活活動が制限されると、運動をしないリスクが大きくなることも、忘れてはいけません。

 

元々、日本では日常的に運動をしている人、運動習慣のある人は、2~3割程度と言われています。つまり、残り7~8割の人は運動習慣がないということ。それにもかかわらず、昨年の自粛期間中には「コロナのせいで運動不足になった」という声が多く聞かれました。ちょっと待ってください。普段から運動してない人がなんで運動不足なの?と思いますよね。

 

これは日常の生活活動が、それだけ大きな運動になっていたことの裏返しです。通勤・通学をする。外回りの営業をする。買い物にいく。遊びにいく。多くの人が普通に生活をしているだけで、結構な運動量になっていたことを認識したはずです。現時点では昨年ほどの制限はないものの、テレワークやリモート授業が推奨され、日常の生活活動が制限されようとしています。こうなると、運動習慣のない人は運動不足になっていく危険があります。

(C)tohokusnow-stock.adobe.com

 

コロナはパンデミックだという人もいますが、それよりももっと恐ろしいパンデミックはすでに起こっています。それは運動不足というパンデミックです。2012年に医学雑誌『Lancet』の身体活動特集にて、運動不足によって起こる病気のリスクを扱った論文を募った企画がありました。

 

10年近く前の特集ではありますが、当時の時点で世界中の人類の全死因の1割が身体活動不足に起因しているとし、「運動不足という病気」がパンデミックを起こしていると伝えました。運動不足が様々な病気を引き起こす要因となることは、いろいろな角度から証明されています。運動不足による死のリスクはコロナ以上とも考えられます。もちろん、マスクも着用せずに大人数で酔っぱらって大声で飛沫を飛ばしあうことは推奨しません。ただ、誰とも会話をせずに、一人で買い物に出かけたり、一人で飲食店にいったりと、感染リスクをケアしながら日常生活を送っていくこと普通にしていたほうがいいと思います。運動不足からくる病気の脅威は侮れません。

 

「何か運動していますか?」と聞くと、「お風呂上りにストレッチをしています」と答える人がいます。ストレッチは柔軟性を高めたり、コンディション調整の部分では良いのですが、十分な運動をしていると考えるのは危険です。ストレッチの運動強度は2~2.5メッツ程度で、これはゆっくりとした散歩よりも低い運動強度です。日常の生活活動に運動強度が満たないので、ストレッチをやっていれば運動不足にならないという認識は見直したほうが良いでしょう。

 

コロナは怖い。だけど、運動不足も怖い。体力があったほうが病気にかかりにくいのは事実なので、感染予防はしっかりしながら生活活動、運動をしていきましょう。

 

佐久間一彦(さくま・かずひこ)
1975年8月27日、神奈川県出身。学生時代はレスリング選手として活躍し、高校日本代表選出、全日本大学選手権準優勝などの実績を残す。青山学院大学卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。2007年~2010年まで「週刊プロレス」の編集長を務める。2010年にライトハウスに入社。スポーツジャーナリストとして数多くのプロスポーツ選手、オリンピアン、パラリンピアンの取材を手がける。