コラーゲンは本当に肌にいい?【桑原弘樹の栄養LOVE】




サプリメント実践的活用のスペシャリストである桑原弘樹さんが、サプリや栄養や肉体に関する疑問を解決する連載。第68回は、とくに女性の関心が高いであろうコラーゲンとお肌の本当の関係について。

■効果のほどは賛否両論

コラーゲンは賛否両論あり、しょせんアミノ酸にまで分解されてしまうから意味がないという人もいますし、アミノ酸にまで分解されてもおおもとの材料が揃うという点で意味があり、実際にお肌の水分量が増えるというデータがあると主張する人もいます。

コラーゲンには20種類ほどのタイプがあって、有名なのがⅠ型と呼ばれる皮膚のコラーゲンと、Ⅱ型と呼ばれる軟骨からのコラーゲンです。

店頭でもよく、Ⅱ型コラーゲンとして売られているサプリメントがあります。たしかに同じコラーゲンでも、そのアミノ酸組成には違いがあって、例えば関節軟骨の材料とするのであれば、Ⅱ型コラーゲンのほうがよりその組成が近いという点は理解できます。しかしⅠ型であってもⅡ型であっても、基本的に一旦はアミノ酸にまで分解されてから吸収されますので、じつはそれほど大きな差が生まれてこないのです。

私たちの体は約60%が水分で、15~20%がタンパク質です。つまり水分を除けば、体の半分近くはタンパク質でできています。そのタンパク質の中の約30%がコラーゲンで、皮膚に40%、骨に20%ほどの配分となります。

それほどコラーゲンというタンパク質は体の中でたくさん利用されているのですが、そのコラーゲンはアミノ酸組成が極端なタンパク質で、グリシンというアミノ酸だけでその1/3を占め、プロリン(ヒドロキシプロリン)、アラニンで1/3を占めていますから、全体の2/3を3(4)種類のアミノ酸で構成しています。つまりアミノ酸組成としては、至ってバランスのよくないタンパク質なのです。

もうひとつおもしろいコラーゲンに、非変性Ⅱ型コラーゲンがあります。これは名称の通り、Ⅱ型コラーゲンではあるものの体内にある構造とほぼ同じ状態のまま、破壊されていない状態で抽出されたコラーゲンです。それは摂取した後に、一部が分解されない状態のまま小腸まで届き、腸内で有益な物質と判断されるため、そこも分解されずに吸収されていきます。

このように、本来分解されるべきものが分子量の大きなまま分解されずに吸収されるものを、経口免疫寛容(けいこうめんえきかんよう)と呼びます。体内では大きな分子量のものは異物と判断されてしまうため、最小単位まで分解されて体にとって安心な状態にしてから吸収されます。タンパク質がアミノ酸に分解されるのは、まさにその現象と言えます。

しかし、体にとって有益であると判断される特殊な物質に関しては、アミノ酸にまで分解されることなく体は拒絶反応をすることなく取り入れられるのです。こういった物質は小腸にあるパイエル板というリンパ節で認識され、体内の免疫システムに働きかけるような役割をしていきます。非変性Ⅱ型コラーゲンの場合も、この経口免疫寛容が誘導されてシグナルペプチドとしての役割が期待されます。

つまり、コラーゲンの材料を取り入れるという栄養学的な目的以上に、免疫システムに働きかけて関節内で暴走しているタンパク質分解酵素を落ちつかせ、破壊と再生のバランスを調整してくれるという機能的な役割と言えます。このように栄養学的な観点からのサプリメントの活用だけでなく、機能的な観点からの活用を関節の再生に関しても対応してみる価値はありそうです。


桑原弘樹(くわばら・ひろき)
1961年4月6日生まれ。1984年立教大学を卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。開発、経営企画などを経て、サプリメント事業を立ち上げ、16年以上にわたってスポーツサプリメントの企画・開発に携わる。現在は桑原塾を主宰。NESTA JAPAN(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会 日本支部)のPDA(プログラム開発担当)。また、国内外で活躍する数多くのトップアスリートに対して、サプリメント活用を取り入れた独自のコンディショニング指導を行ない、Tarzan(マガジンハウス)など各種スポーツ誌の企画監修や執筆、幅広いテーマでの講演会など多方面で活躍中。著書に「サプリメントまるわかり大事典」(ベースボールマガジン社)、「私は15キロ痩せるのも太るのも簡単だ!クワバラ式体重管理メソッド」(講談社)、「サプリメント健康バイブル」(学研)などがある。プロフィール写真のタンクトップにある300/365の文字は、年間365日あるうち300回のワークアウトを推奨した活動の総称となっている。300日ではなく300回であることがポイントで、1日2回のワークアウトでも可。決して低くはないハードルだが、あえて高めの目標設定をすることで肉体の進化が約束されると桑原塾は考え、実践している。