力士が一日2食なのはなぜ?【桑原弘樹の栄養LOVE】




サプリメント実践的活用のスペシャリストである桑原弘樹さんが、サプリや栄養や肉体に関する疑問を解決する連載。第76回は、一日2食が基本と言われる力士の食生活について。

■江戸時代以前の生活習慣を継承しているという見方も

それぞれの競技には、競技特性なるものがあります。

相撲の場合は、体重が重いほうが有利というのも競技特性のひとつです。もちろん筋肉も必要ですが、ある程度までは脂肪がついてもいいので体重を増やしていきます。

その点において、お腹を空かせて目一杯食べて寝るというのは、ある意味において最も太りやすい状態と言えます。これを一日2回行なうためには、一日2食は好都合かもしれません。これを毎日繰り返すのですから、入門当時ガリガリだった力士もやがて、100kgは痩せている部類と言われる規格外の肉体へと変貌していくのでしょう。

このように体を大きく太らせるという点において、理にかなった側面がある一方で、もともとの伝統的な習慣という側面があるかもしれません。私たちの食生活が一日3食になったのは江戸時代の中頃と言われていますので、それまでの一日2食時代からの生活習慣を継承しているという見方もできます。いわゆる相撲文化です。

話はそれますが、日本のプロレスは力士出身の力道山がスタートであるため、相撲文化を受け継いでいる点が散見されます。道場を構えるような団体であれば、今でも食事はちゃんこですし、相撲で使う隠語もよく使われています。以前は力士のような体格・体型のレスラーが多かったですが、最近はビルドアップしたボディビルダー的なスタイルの選手が主流になりつつあり、食事も各自の工夫で一日3食になっています。選手によっては補食と取り入れて、一日4、5食というまさにボディビル的な食生活を送っている人もいます。

ちなみに、ちゃんこは各部屋で独自のレシピや味つけがありますが、栄養学的に至って優れていて、ここに白ご飯が加わるのですから毎日食べても飽きずに大量に食べられるという、体を大きくするための理想食と言えます。

個人的には、全日本プロレス時代に浜亮太選手が作った「浜ちゃんこ」の味がいまだに忘れられません。武藤敬司さんですら、わざわざ食べに立ち寄ったおいしさでした。


桑原弘樹(くわばら・ひろき)
1961年4月6日生まれ。1984年立教大学を卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。開発、経営企画などを経て、サプリメント事業を立ち上げ、16年以上にわたってスポーツサプリメントの企画・開発に携わる。現在は桑原塾を主宰。NESTA JAPAN(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会 日本支部)のPDA(プログラム開発担当)。また、国内外で活躍する数多くのトップアスリートに対して、サプリメント活用を取り入れた独自のコンディショニング指導を行ない、Tarzan(マガジンハウス)など各種スポーツ誌の企画監修や執筆、幅広いテーマでの講演会など多方面で活躍中。著書に「サプリメントまるわかり大事典」(ベースボールマガジン社)、「私は15キロ痩せるのも太るのも簡単だ!クワバラ式体重管理メソッド」(講談社)、「サプリメント健康バイブル」(学研)などがある。プロフィール写真のタンクトップにある300/365の文字は、年間365日あるうち300回のワークアウトを推奨した活動の総称となっている。300日ではなく300回であることがポイントで、1日2回のワークアウトでも可。決して低くはないハードルだが、あえて高めの目標設定をすることで肉体の進化が約束されると桑原塾は考え、実践している。