なぜ、みんなベンチプレスが好きなのか?【佐久間編集長コラム「週刊VITUP!」第185回】




VITUP!読者の皆様、こんにちは。日曜日のひととき、いかがお過ごしでしょうか? 一気に寒い日が増えてきて、トレーニング終わりでも汗がひきやすくなってきました。

 

さて、フリーウエイトスペースで一番人気といえばベンチプレスです。以前通っていたジムはベンチ台が3つあり、埋まっている場合はボードに名前を書いて予約するというシステムでした。台が埋まるのはもちろん、ボードにも常に予約が入っているような状態でした(今は朝早くジムに行っているので人がいません)。それだけ多くの人がベンチプレスを利用しているということです。

 

また、一般的にパワーを表現する際にもベンチプレスの重量が取り上げられます。たとえば怪力を売りするプロレスラーなら「ベンチプレス300㎏挙げるパワー」というように表現されます。これがスクワット〇㎏やデッドリフト〇㎏とはならず、ベンチプレスで表現されるあたりからも、BIG3の中でもとくに人気が高いことがうかがえます。

 

(C)Andrey1005-stock.adobe.com

 

なぜベンチプレスは人気があるのか? 今回はその理由を考えてみたいと思います。

 

ベンチプレスが人気の理由その一。大胸筋がつくとカッコイイ。これが一番の理由ではないでしょうか。スクワットやデッドリフトで鍛えられる大腿四頭筋や大殿筋、ハムストリング、背筋などと比べて、大胸筋は薄着になったときに目立つ筋肉であり、なおかつ反応が良く、比較的筋肉がつきやすい部位と言えます。見た目的にカッコ良くなる筋肉をつける手段として、人気が高いというわけです。フロント部分であり、鏡で変化を実感しやすいこともやる気を高める要因となっていると思います。

 

ベンチプレスが人気の理由その二。あまりきつくない。「きつくない」という言い方は語弊があるかもしれませんが、スクワットやデッドリフトと比べると、トレーニングの熟練度が低くてもやりやすい種目だと思います。スクワットとデッドリフトは動作中に心臓が上下運動するため、筋力以外にも体にかかる負荷が大きくなります。一方、ベンチプレスは寝ている状態で行なうため、動作中も心臓の位置は動きません。これが「きつくない」という理由です。

 

ベンチプレスが人気の理由その三。誰でもやりやすい。これはその二に付随する理由になります。年齢を重ねるとヒザや腰が痛くなったりということがあっても、ベンチプレスは寝て行なうため、スクワットやデッドリフトよりもやりやすい種目になります。実際、ベンチプレスは高齢の方も多く取り入れているケースが見られます。パワーリフティングのマスターズ大会では70代、80代の出場者もいるくらいで、いくつになっても続けられる種目と言えるかもしれません。

 

ベンチプレスが人気の理由その四。工夫しだいで記録が伸びる。筋力が伸びれば重量が伸びるのは当然ですが、ベンチプレスの場合はスクワットやデッドリフトよりもテクニックの要素も大きく、筋力アップとともにコツをつかむと重量が上がるようになるのも、面白いところでしょう。

 

誰でもやりやすくてカッコイイ筋肉がつく。これがベンチプレスの人気の理由でしょう。経験のない人には難しい部分もあるかもしれません。ただ、セーフティーラックで物理的な落下を防げれば肉体的には安全な種目なので、トレーニング初心者の方にもケガや安全に注意してチャレンジしてほしいと思います。

 

佐久間一彦(さくま・かずひこ)
1975年8月27日、神奈川県出身。学生時代はレスリング選手として活躍し、高校日本代表選出、全日本大学選手権準優勝などの実績を残す。青山学院大学卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。2007年~2010年まで「週刊プロレス」の編集長を務める。2010年にライトハウスに入社。スポーツジャーナリストとして数多くのプロスポーツ選手、オリンピアン、パラリンピアンの取材を手がける。