初日は上半身メインでした。
継続的なウエイトトレーニングは久々ということで、いきなり筋肉に強い刺激を与えるのはNG。まずは軽めの負荷から慣らしていきます。
肩や肩甲骨まわりを入念にウォームアップした後、胸、肩、上腕三頭筋、背中、腹とメニューが続き、最後にストレッチをしてもらって50分が終了。
前回もお伝えしたように、BiPジムには50分と80分のコースがあります。50分は短いかな?と思っていましたが、そんなことはありませんでした。テンポよく次から次へとメニューが進んでいくので、現時点ではちょうど良く感じました。そのうち物足りなくなるかもしれませんが。
ちなみに80分をチョイスする人は、日常的に本格的な筋トレをしている男性か、後半にストレッチ等のケアをしてほしい女性が多いそうです。
1種目は3セットで、インターバルは筋肥大に適した1分程度。ひとりで筋トレをしていた時は、どうしてもダラダラしがちで、疲れてくると何分間も休憩してしまうこともありました。時間を有効に使えていない上に、筋トレの努力も何%か無駄にしてしまっていたかもしれません。
トレーニングにタイムリミットがあると、時間を1分でも大切にしたいという思いが生まれます。また、トレーナーを待たせるのも失礼なので、なるべくスムーズにメニューをこなしていきたいという気持ちになります。
上田トレーナーは娘と変わらない世代ですが、指導者はとにかくリスペクトすべき。部活生活が長かったせいか、その考えは必要以上に染みついています。
それにしても、やはり筋力の低下はショックでした。
ベンチプレスは20㎏のバーでアップを行なった後、重さを増していきました。40㎏で10回、50㎏で10回。この時点で「次のセットを50㎏でやったら、6回で限界が来るな」と感じます。それを上田トレーナーに告げ、サポートに入ってもらいました。すると、予想通り7回目から自力で上がらなくなり、補助をしてもらいながら10回を完遂しました。
限界のタイミングが予想できるのは、昔の経験の賜物でしょう。それにしても50㎏とは……。
以前は(と言っても20数年前ですが)、MAX=120㎏まで上げることができたベンチプレス。メインのセットも100㎏前後で行なっていたので、まさに「半減」してしまっていました。おそらく今の力は、70kgが1~2発上がるかどうかというところでしょう。
「すぐ戻りますよ」と笑顔で慰めてくれた上田トレーナー。
「それに、重いものを上げればいいというわけでもないですから」
たしかに、負荷を高めるほどいい筋肉がつく、というものではありません。私の目的も重いものを持ち上げることではないので、そこは納得です。重さじゃない、重さじゃないんだ……。自分に言い聞かせながら帰路につきました。
20数年前は、現在のように健康やダイエット志向でバーベルを持つ人は、ジムのフリーウエイトエリアにほとんどいませんでした、そういう人は有酸素系プログラムを行なうスタジオやプールに集まり、フリーウエイトエリアはガチトレーニーのための空間でした。長くそこに通っていると、他者との競争意識が芽生え、どうしても重さにこだわるという発想になりがちでした。
重さが目的になってしまうと、なるべく多くの筋肉を動員しようとするフォームになります。それは競技のための全身的なパワー発揮トレーニングとしてはアリかもしれませんが、狙った筋肉に的確に効かせることには結びつきません。
翌日は当然、上半身すべてが筋肉痛です。筋肉がだるく、重く、しかし内部で何かが燃えているような……ああ、この感覚、やっぱり嫌いじゃない……。
「何なの、この痛みは?」
「天変地異なの?」
「地球の重力が変わったの?」
「この危機を乗り越えるには、どうすればいいの?」
「僕たち、太くなるの? 太くなるしかないの?」
その夜、筋線維たちが慌てふためく夢を見ました。
文/本島燈家