少し時間は経ってしまいましたが、今回はベラトールでの試合を振り返ってみたいと思います。試合は約1年3ヶ月ぶりで、自分としてこれだけ長く試合間隔が空いたのは初めての経験でした。試合のテンションは試合でしかないものだし、いくら練習をしても試合ほど思い切り殴られることはありません。改めて試合と練習はまったく別モノだなということを感じました。
コロナ禍のなか、アメリカに行って試合をするというのは、今までにない経験です。まず向こうに入国して最初の2日間は完全隔離のため、部屋から出ることはできません。体重は3㎏オーバーで現地に入ったので、部屋に閉じ込められていたときは減量が一番気になっていました。
宿泊していたホテルに試合会場があって、アップ場も1選手につき1部屋用意されています。それほど大きな部屋ではありませんが、アップスペースとしては十分な広さでした。しかし、アップ場が寒かったことと、お風呂がなくて半身浴ができなかったことで、いつもよりも体重調整は大変でした。その代わり、現地に入る前に「サウナは必要ですか?」と聞かれていて「用意してほしい」と伝えていたら、ポータブルサウナが用意されていました。
このサウナは使った後には持ち帰っていいということだったので、ジムに送ってもらいました。今はジムの片隅に置かれています。ポータブルサウナを選手にくれたり、とにかくベラトールはお金の使い方がすごいです。ホテルでの食事も一切自分たちで払う必要がなく、全然お金を使うことはありませんでした。ショッピングモールやカジノもある、すごく大きなホテルだったのですが、選手はカジノに行くのもショッピングモールに行くのも禁止。食事もテイクアウトのみで店内では食べられません。結局、ショッピングができなかったので、お土産はこのサウナだけです(笑)。
試合会場は1万人以上入る大きなところでしたが、コロナの影響もあって試合は無観客で行なわれました。実際に試合が始まってしまえば無観客は気になりません。ただ、入場とリングインのときはいつもと感覚が違って変な感じでした。テレビで見ている人がいるので何かパフォーマンスをしようとは思っていたんですけど、やり切れずに手が泳いでしまいました(苦笑)。
1年3ヶ月ぶりという試合勘の影響は少なからずあったと思います。練習と試合の距離感は違って、最初は「あれ?こんなに遠かったっけ?」と思って、アジャストしていくまでに少し時間がかかりました。また、自分はすごく乾燥肌で、試合の布のマットだと足が滑るんです。これはベラトールに限らず、DEEPでもRIZINでも同じで、試合のマットとの相性がすごく悪い。自分は足が滑るんだということもすっかり忘れていたので、やっぱり試合間隔は空きすぎないほうがいいなと思いました。
試合中は自分では冷静だったと思います。パンチをもらってもKOされるような感じではないし、慌てることありませんでした。落ち着いてはいたものの、練習でやってきたことが出せなくて、「ああ、これはSNSとかで叩かれるんだろうな」って思っていました。それくらい冷静だったということです(笑)。
課題が多くて試合が終わった直後は素直に喜べませんでした。でも、応援してくださる方がたくさんいたので、まずは勝つ姿を見せられてホッとしましたし、そこは嬉しかったです。ベラトールとの契約は複数試合あって、ランキングが3位に上がったので、ここから1~2戦やってしっかり勝っていけばタイトルマッチも見えてくると思います。課題が見えたというのは収穫でもあります。試合をすると強くなれるので、改めて試合は大事だなと思いました。
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渡辺華奈(わたなべ・かな)
1988年8月21日、東京都出身。7歳から柔道を始め、高校ではインターハイ2位、アジアジュニア優勝などの実績を残し、東海大進学後、1年時に全日本ジュニア優勝を飾る。卒業後、JR東日本へ入社し、オリンピックを目指して競技を続けた。2017年に同社を退社し、格闘家に転身。同年12月3日にデビューを勝利で飾ると29日にはRIZIN初参戦で実力者杉山しずかに勝利。MMAデビューから無敗の快進撃を続けている。2021年よりアメリカ格闘技団体「ベラトール」に参戦している。所属はFIGHTER’S FLOW