ドーピング検査に影響する食品は?【桑原弘樹の栄養LOVE】




サプリメント実践的活用のスペシャリストである桑原弘樹さんが、サプリや栄養や肉体に関する疑問を解決する連載。第103回は、オリンピック・パラリンピックの前に知っておきたいドーピングに抵触する食品について。

■葛根湯や小青竜湯なども対象に

2004年まではカフェインもドーピングの対象でしたので、一定量以上のカフェインの摂取はドーピング検査に影響しました。競技者は強化指定などになると、万が一を想定してコーヒーや緑茶も控えていたりしていました。今では監視プログラムという位置づけになり、検査の対象ではあるもののドーピングには抵触しません。また、ビーターオレンジなどの成分のシネフリンも同様に監視プログラムです。一般的に私たちが日常的に食する食品において、それがドーピングに抵触するケースは現時点では考えにくいと言えます。

ただし、日常的に使用する薬に関してはかなりの注意が必要です。喘息、アレルギー、風邪薬、鼻炎薬などの多くは、ドーピングの対象となる成分が含まれているからです。また漢方も同様です。自然の生薬という響きが体に優しいというイメージかもしれませんが、なじみのある葛根湯や小青竜湯などにも麻黄という名称でエフェドリンが含まれていますから、ドーピングの対象となってしまいます。

あとは主に海外のサプリメントに多いのが、表示がないのにドーピングの対象となる成分が含まれているケースです。これは意図的に配合していることを想像させるものと、コンタミネーションとして、意図せずに使用している以外の成分が含まれてしまうケースがあります。いずれにしても表示がないので、使用する側からすれば防ぎようがありません(結果として信用できるブランドを使用しようという発想になります)。

最後に余談にはなりますが、WADA(世界ドーピング防止機構)などが定める検査はその精度が高いため、成分として何かしらが検出されます。私たちの体内には当然、男性ホルモンも成長ホルモンもさまざまな成分がつくられていますから、例えば大量に肉を食べたりした場合にもその成分としては、何かしらの量は検出されています。しかしそれが異常値にならなければ、ドーピングにはならないのです。

ひとつ問題なのは、多くの成分についてどの数値からドーピングの対象なのかが開示されていないという点です。以前、サポートしていた冬季オリンピックの常連選手が再検査を求められたことがあり、プロテインやビタミンまでが疑われるという異常事態になりましたが、彼はもともとヘモグロビンの量が他人よりも多く、その数値がギリギリのラインにありました。考えてみれば、そういった体質もあるから持久系の競技でトップアスリートになれたという側面もあるわけで、このあたりは今後判断をする際にも課題となるかもしれません。


桑原弘樹(くわばら・ひろき)
1961年4月6日生まれ。1984年立教大学を卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。開発、経営企画などを経て、サプリメント事業を立ち上げ、16年以上にわたってスポーツサプリメントの企画・開発に携わる。現在は桑原塾を主宰。NESTA JAPAN(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会 日本支部)のPDA(プログラム開発担当)。また、国内外で活躍する数多くのトップアスリートに対して、サプリメント活用を取り入れた独自のコンディショニング指導を行ない、Tarzan(マガジンハウス)など各種スポーツ誌の企画監修や執筆、幅広いテーマでの講演会など多方面で活躍中。著書に「サプリメントまるわかり大事典」(ベースボールマガジン社)、「私は15キロ痩せるのも太るのも簡単だ!クワバラ式体重管理メソッド」(講談社)、「サプリメント健康バイブル」(学研)などがある。プロフィール写真のタンクトップにある300/365の文字は、年間365日あるうち300回のワークアウトを推奨した活動の総称となっている。300日ではなく300回であることがポイントで、1日2回のワークアウトでも可。決して低くはないハードルだが、あえて高めの目標設定をすることで肉体の進化が約束されると桑原塾は考え、実践している。