350㎏のタイヤを持ち上げろ! 「強くて大きな身体」への挑戦【稲村愛輝#1】




「巨大タイヤを使って、トレーニングに励むプロレスラーがいる」という噂を聞きつけ、VITUP! 編集部が取材に赴きました。一部を佐久間編集長コラムで紹介していましたので、気になっていた人もいらっしゃるかもしれません。

今回取材させていただいたのは、プロレスリング・ノア所属の稲村愛輝選手。182㎝、120㎏の身体から繰り出されるパワーを武器に、第一線で活躍する現役レスラーです。

稲村選手とタイヤ。こちらのタイヤは約350㎏、道場にあるもう一回り小さいタイヤで約100㎏

稲村選手はこの巨大なタイヤを、ひっくり返したり、投げたりと自在に操ります。

★トレーニング風景の一部がこちら。

【タイヤフリップ】

地面に横たわる、約350㎏のタイヤをひっくり返すメニュー。

タイヤを使ったトレーニングといえば、タイヤ引きなどが一般的。そもそもここまで大きなタイヤを見たことがありませんので、稲村選手のトレーニング風景に驚きを隠せません。

そんなタイヤトレーニングについて、稲村選手に直接お話を伺いました。

――タイヤトレーニングをやろうと思った経緯から教えてください。

稲村 タイヤトレーニングはもともと、「ストロングマン」という競技の種目の一つで、このストロングマンに興味を持ったのがきっかけです。2~3年前に、ストロングマンの選手である中嶋健詞さんに指導をいただく機会があり、そこで初めて「タイヤフリップ」を行ないました。プロレスにも効果がありそうだったので、NOAHの道場でもタイヤトレーニングをしたいと思っていたのですが、なかなか競技で使うようなタイヤが手に入らず難航していました。

――では道場にあるタイヤはどのように入手したのですか?

稲村 じつはこれはいただきものなんです。タイヤを探していたときに、中嶋選手がタイヤの引き取り手を探しているという情報をSNSで発見して、すぐさま連絡してタイヤを譲っていただきました。だからこのタイヤは「保護猫」ならぬ、「保護タイヤ」なんです。それから僕のタイヤトレーニングがスタートしました。

――発端となったストロングマンとはどんな競技なのですか?

稲村 ストロングマンは日本だとマイナーですが、海外ではかなりの盛り上がりを見せている競技です。個性的な種目が特徴で、たとえばバイキングプレスという種目では大きなハーレーを挙げる回数を競ったりもします。何というか、見た目からして面白いですよね。映画俳優のアーノルド・シュワルツェネッガーが「アーノルド・ストロングマン・クラシック」という大会を主催したり、ストロングマンコンテストに出た選手がデッドリフトの世界記録を持っていたりもします。近年はコロナで中止になっていますが、日本でも横須賀の基地で毎年大会が開催されていて、中嶋選手をはじめ全国各地の猛者が出場しています。

――まさに強い男の競技といった感じですね。興味が湧いてきました。

稲村 そう言っていただけると嬉しいです。僕自身、プロレスラーとして身体を「強く、大きく」したいという思いが強いので、ストロングマンのトレーニングは最適でした。もっと多くの人に知っていただきたい競技ですね。

――初めて練習に行ったときはどんな気持ちでしたか?

稲村 最初はかなり緊張しましたよ。プロレスラーと名乗っているので、肩書の重圧がありまして(笑)。相当気合を入れて行ったのは覚えています。僕なんかストロングマン界隈ではまったくの無名ですが、タイヤを返したりしたとき「やっぱり強いね」と言っていただけたのはうれしかったですね。

――そうだったのですね。でも本当に、ここまで重量のあるタイヤを扱えるのには感服してしまいます。先ほど持たせていただきましたが、私ではピクリともしませんでした。

稲村 さすがに重いですよね。ただ、一口にストロングマンと言っても、個人によって競技種目の得意不得意は出てきます。僕は脚の筋力を使うのが得意なので、タイヤを返すような動作は得意なのですが、一方で真上に挙げるような動作は苦手だったりもします。そのため今後は、そういったところも強化していければと思っています。

――まだまだ強くなるのですね。

稲村 はい。世の中には強くて大きな人がたくさんいますから。ストロングマントレーニングでさらに強く、大きくなれるように頑張りたいです。

★「ストロングマン」との出会いから、タイヤトレーニングを始めた稲村選手。次回はトレーニングの詳細や、実感している効果について詳しく聞いていきます。

取材・文/森本雄大


稲村 愛輝(いなむら・よしき)©️CyberFight/プロレスリング・ノア
1992年11月18日生まれ、182㎝、120㎏。柔道と相撲で鍛えたのち、プロレスリング・ノアに入門。2018年9月2日、熊野準戦デビュー。ヘビー級の新人として早くから頭角を現し、19年11月にGHCタッグに初挑戦、20年にはN-1VICTORYにエントリーされるなど、大器として期待を集める。