血液をサラサラにするベストな食材は?【桑原弘樹の栄養LOVE】




サプリメント実践的活用のスペシャリストである桑原弘樹さんが、サプリや栄養や肉体に関する疑問を解決する連載。第112回は、血液をサラサラにしてくれる食材について。

■EPAを多く含む青魚がベスト

血液サラサラは、いろいろな食材が候補に挙がりますね。

たとえば前回(第111回)のテーマである納豆に含まれる、ナットウキーナゼも血栓を溶かす作用があるので血液サラサラと言えます。ただし納豆に含まれるビタミンKはワーファリンとの相性が悪いので、血栓を防止するためにワーファリンを服用している人は納豆NGになってしまいます。他にも、玉ねぎの持つあの強烈な刺激の正体でもあるアリシン(硫化アリル)も、血液サラサラの効果が期待できます。

またさまざまなポリフェノールも血液サラサラの期待ができますが、ベストとなるとEPA(エイコサペンタエン酸)だと思います。DHAと並んでの、n-3系の不飽和脂肪酸(脂肪の構成要素である脂肪酸のうち、植物や魚の脂に多く含まれるもの)です。n-3系脂肪酸の重要性を理解している人でも、その中身の細かい違いに関してはあまり把握していないかもしれません。

実際サプリメントとして販売されているものも、比率の差こそあれDHAとEPAの両方を配合していますから、なおさら違いまでは意識がいかないかもしれません。n-3系の脂肪酸といえば心疾患リスクや高脂血症にいいということから、血液サラサラ効果を期待する人が多いかもしれませんが、じつはこの血液サラサラ効果は主としてEPAの働きに起因しているものです。

両者の違いを大まかに言えば、血液や血管がEPAで、脳を中心に神経系の発達に効果があるのがDHAということになります。また体内でDHAがEPAへ変化することはありませんが、その逆は起きるという違いもあります。日本でのn-3系脂肪酸の話題はDHAがスタートだったので、知名度としてもDHAの方が高いかもしれませんが、最初に注目された時期はEPAが1960年代後半と圧倒的に長い歴史があります。グリーンランドの先住民族であるイヌイット族は、デンマークの白人と比較して心血管系での死亡率が低いことが話題となり、その理由を探していく中で彼らが主食としていたアザラシや魚類に含まれるEPAの働きではないか、ということが疫学調査でわかったのです。

一方でDHAに関しては、日本人の子どもの知能指数が高いということが注目され、その理由が欧米人と比較して魚を多く食するからではないかということで、頭がよくなる栄養素として取り上げられました。ただし、研究のデータ的には圧倒的にEPAのほうが多く、またEPAに関しては100%純品の医薬品としてのデータが豊富なため、食品ではあるものの薬理作用として証明されています。DHAが悪いという意味ではなく、本来の実力の割にEPAの評価がされていない側面があるかもしれない、という意味です。


桑原弘樹(くわばら・ひろき)
1961年4月6日生まれ。1984年立教大学を卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。開発、経営企画などを経て、サプリメント事業を立ち上げ、16年以上にわたってスポーツサプリメントの企画・開発に携わる。現在は桑原塾を主宰。NESTA JAPAN(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会 日本支部)のPDA(プログラム開発担当)。また、国内外で活躍する数多くのトップアスリートに対して、サプリメント活用を取り入れた独自のコンディショニング指導を行ない、Tarzan(マガジンハウス)など各種スポーツ誌の企画監修や執筆、幅広いテーマでの講演会など多方面で活躍中。著書に「サプリメントまるわかり大事典」(ベースボールマガジン社)、「私は15キロ痩せるのも太るのも簡単だ!クワバラ式体重管理メソッド」(講談社)、「サプリメント健康バイブル」(学研)などがある。プロフィール写真のタンクトップにある300/365の文字は、年間365日あるうち300回のワークアウトを推奨した活動の総称となっている。300日ではなく300回であることがポイントで、1日2回のワークアウトでも可。決して低くはないハードルだが、あえて高めの目標設定をすることで肉体の進化が約束されると桑原塾は考え、実践している。