しじみの味噌汁は二日酔いに効く?【桑原弘樹の栄養LOVE】




サプリメント実践的活用のスペシャリストである桑原弘樹さんが、サプリや栄養や肉体に関する疑問を解決する連載。第116回は、しじみの味噌汁が「二日酔いに効く」という説は本当なのか?という疑問について。

■しじみに多くふくまれる「オルニチン」が効果を発揮

じじみはじつに栄養素が多く含まれる食材です。必須アミノ酸、カルシウムを筆頭に各種ミネラル、ビタミンBと理想的な内容です。朝の食欲があまり湧かないシーンで、さらには二日酔いとなればバランスのよい栄養食を摂るのは容易ではないでしょうから、食べやすさまで考慮した場合にはしじみの味噌汁はじつに完成度の高い栄養食と言えます。

タウリンも含まれるため、栄養という観点以外に体調を整えるという機能も期待できますが、「二日酔い」というシーンにおいてしじみの味噌汁が好まれるのは何と言っても「オルニチン」の効果(機能)と言えます。オルニチンは尿素回路(オルニチン回路)の主成分で、過度なアルコールによって溢れ出てしまったアンモニアなどの毒素を解毒するために不可欠なアミノ酸なのです。

私たちの体は有害な物質を解毒する力を持っているから存続していけているのですが、その役割を担っているのは肝臓です。そしてその肝臓の中の尿素回路がしっかりと回ることで、毒素が解毒をすすめていきます。具体的にはアンモニアが尿素へと変わり、腎臓でろ過されて排泄されていきます。

昔から二日酔いの朝にしじみのお味噌汁と言われるのは、理にかなっていたのですね。オルニチンは水溶性なのでしじみの実を食べずとも、汁を飲むことで摂取できますし、食欲が湧かない朝にはうってつけです。

しかし、その昔はオルニチンの存在など知られていなかったでしょうから、誰がしじみのお味噌汁が二日酔いに効果的だと見つけたのでしょうね。昔から言い伝えられてきたことには、意外にもしっかりとした科学的な裏付けがなされているものです。よく噛んで食べようとか、食べる前には手を洗おうとか、食べ物に感謝しようとか、当たり前のことをスルーせずにきちっと対応していけたらと思います。


桑原弘樹(くわばら・ひろき)
1961年4月6日生まれ。1984年立教大学を卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。開発、経営企画などを経て、サプリメント事業を立ち上げ、16年以上にわたってスポーツサプリメントの企画・開発に携わる。現在は桑原塾を主宰。NESTA JAPAN(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会 日本支部)のPDA(プログラム開発担当)。また、国内外で活躍する数多くのトップアスリートに対して、サプリメント活用を取り入れた独自のコンディショニング指導を行ない、Tarzan(マガジンハウス)など各種スポーツ誌の企画監修や執筆、幅広いテーマでの講演会など多方面で活躍中。著書に「サプリメントまるわかり大事典」(ベースボールマガジン社)、「私は15キロ痩せるのも太るのも簡単だ!クワバラ式体重管理メソッド」(講談社)、「サプリメント健康バイブル」(学研)などがある。プロフィール写真のタンクトップにある300/365の文字は、年間365日あるうち300回のワークアウトを推奨した活動の総称となっている。300日ではなく300回であることがポイントで、1日2回のワークアウトでも可。決して低くはないハードルだが、あえて高めの目標設定をすることで肉体の進化が約束されると桑原塾は考え、実践している。