サプリメント実践的活用のスペシャリストである桑原弘樹さんが、サプリや栄養や肉体に関する疑問を解決する連載。第126回は、にわかに話題となっている昆虫食について。
■基本的には高タンパク、低脂質
一言で言えば、昆虫を食糧の供給源として考えようという発想です。FAO(国連食糧農業機関)から、将来の食糧難への対策やSDGs(持続可能な開発目標)による食の未来に関連して、昆虫を食糧の供給源とすべきという提言がなされたのがきっかけです。畜産業が地球にダメージを与えることから、その代替タンパク質を昆虫に求めたわけですね。
昆虫は動物に比べて、水も含めて飼料が圧倒的に少なくて済み、また発生させる二酸化炭素の量も劇的に少ないことから地球に優しい食糧源となりうるということです。虫を食べるの?と拒絶感もありそうですが、日本でもイナゴや蜂の子などは食されていますから、慣れてくればあながちNGではないかもしれません。
もうひとつ昆虫食の優れた点は、栄養価が高いという点です。基本的には高タンパク、低脂質、ビタミンやミネラルも含まれています。今、一番浸透しそうな昆虫食のひとつがクリケット(こおろぎ)ですが、タンパク質の質も高く含有するBCAAの比率はホエイ24%、ソイ18%程度に対して39%もあるというから驚きです。
逆に課題を考えた時、やはり値段的なものは大きいでしょう。そもそも見た目からの拒絶感がある上に、現状ではタイなどからの輸入がほとんどですから、それを主として食するにはまだほど遠い状態です。また日本に限って考えた場合、人口は減少していく傾向になりますので、食糧難という発想も持ちにくいかもしれません。とりあえずは、物珍しさや話題性というところで食べる人が増えているという感じではないでしょうか。
でも、見た目の拒絶感に関しては慣れの部分が大きいですから、当たり前のように食べていくうちに慣れるでしょうし、繁殖の容易さから日本でコオロギなどを作る業者が増えていけば価格も一般的な食材の価格に落ち着いていくと思われます。味的には好き嫌いはあるかもしれませんが、決して食せないような味ではないので、近い将来に普通に虫を食べるという食生活が生まれる可能性は否定できません。街中でセミやコオロギを見つけたらおいしそうと思ったりする感覚は不思議でありますが、海や川で魚を見るのと似ているといえば似ているかもしれませんね。
桑原弘樹(くわばら・ひろき)
1961年4月6日生まれ。1984年立教大学を卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。開発、経営企画などを経て、サプリメント事業を立ち上げ、16年以上にわたってスポーツサプリメントの企画・開発に携わる。現在は桑原塾を主宰。NESTA JAPAN(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会 日本支部)のPDA(プログラム開発担当)。また、国内外で活躍する数多くのトップアスリートに対して、サプリメント活用を取り入れた独自のコンディショニング指導を行ない、Tarzan(マガジンハウス)など各種スポーツ誌の企画監修や執筆、幅広いテーマでの講演会など多方面で活躍中。著書に「サプリメントまるわかり大事典」(ベースボールマガジン社)、「私は15キロ痩せるのも太るのも簡単だ!クワバラ式体重管理メソッド」(講談社)、「サプリメント健康バイブル」(学研)などがある。プロフィール写真のタンクトップにある300/365の文字は、年間365日あるうち300回のワークアウトを推奨した活動の総称となっている。300日ではなく300回であることがポイントで、1日2回のワークアウトでも可。決して低くはないハードルだが、あえて高めの目標設定をすることで肉体の進化が約束されると桑原塾は考え、実践している。