サプリメント実践的活用のスペシャリストである桑原弘樹さんが、サプリや栄養や肉体に関する疑問を解決する連載。第132回は、単体でほぼすべての栄養素をまかなえる食品は存在するのか?というテーマについて。
■食べ物は組合せの妙で栄養の完成度を上げている
最近、完全食を謳うBASE FOODをいただきましたが、なかなかよくできた商品だなと思いました。もともと、MRPという類のサプリメントはある種、完全食をイメージして作られたサプリメントかもしれません。形状がパウダーであったりすることから、プロテインコーナーに近い個所に置かれたりもしますが、基本的にはプロテインとは異なります。
私もMRPの開発に凝った時期がありまして、現在はマックスロードウエイトアップ(プロテイン)として売られていますが、タンパク質にはホエイ、カゼイン、大豆の3種類を使い、糖質にはパラチノースとマルトデキストリンを、そしてあえて脂質も中鎖脂肪酸を配合したという凝りようでした。もちろんビタミンやミネラル、そして乳酸菌、食物繊維までも配合しました。しかし完全栄養食と呼べるのかと言われれば、やはり食の要素としては量も含めて足りないものがあります。理論上は可能でも、しっかりとした食事には敵わないのが現実かと思います。
では一般の食材での完全栄養食はあるのかについてですが、糖質だけであればバナナはかなり糖組成の優れた果物ですし、前回の質問の回答にも出てきた納豆は脂溶性と水溶性の食物繊維を含む優れたタンパク質源です。ボディビルダー御用達とも言えるブロッコリーは、ビタミンCを筆頭にかなり多くの栄養素を含んだ野菜です。最後の最後に困った時は、鶏のササミと玄米とブロッコリーで過ごしたような時期もありました。
タンパク質源としては、マグロが幅広い栄養素を含んでいます。高タンパク、低脂質、低糖質は前提として、ビタミンB群やヘム鉄やEPAなどまで含んでいるのですから、かなり優秀です。ただし、どれも単独ですべての栄養素をまかなえるかと言われればNOということになります。一汁三菜という言葉がありますが、食べ物は組合せの妙で栄養の完成度を上げています。穀物と豆類の組み合わせ、たとえば白米と大豆などの組み合わせも、よりタンパク質の質を高めるという点において組み合わせの妙の要素を含んでいるのです。
白米にもわずかながらタンパク質が含まれていますが、アミノ酸の組成的には優れていないため約半分程度しか体内では活用されないことになります。しかし大豆などのタンパク質が加わることで、より多くのタンパク質が白米からも利用されることになるのです。古くからの食材の相性や組み合わせは、理にかなった面が多々あるのですね。
桑原弘樹(くわばら・ひろき)
1961年4月6日生まれ。1984年立教大学を卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。開発、経営企画などを経て、サプリメント事業を立ち上げ、16年以上にわたってスポーツサプリメントの企画・開発に携わる。現在は桑原塾を主宰。NESTA JAPAN(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会 日本支部)のPDA(プログラム開発担当)。また、国内外で活躍する数多くのトップアスリートに対して、サプリメント活用を取り入れた独自のコンディショニング指導を行ない、Tarzan(マガジンハウス)など各種スポーツ誌の企画監修や執筆、幅広いテーマでの講演会など多方面で活躍中。著書に「サプリメントまるわかり大事典」(ベースボールマガジン社)、「私は15キロ痩せるのも太るのも簡単だ!クワバラ式体重管理メソッド」(講談社)、「サプリメント健康バイブル」(学研)などがある。プロフィール写真のタンクトップにある300/365の文字は、年間365日あるうち300回のワークアウトを推奨した活動の総称となっている。300日ではなく300回であることがポイントで、1日2回のワークアウトでも可。決して低くはないハードルだが、あえて高めの目標設定をすることで肉体の進化が約束されると桑原塾は考え、実践している。