見せつけた王者の風格と、ライバルとの熱き絆。寺島遼が2連覇達成【2021 GRAND CHAMPIONSHIPS】




9/26(日)に大阪・メルパルクホール大阪で行なわれたJBBF FITNESS JAPAN GRAND CHAMPIONSHIPS 2021のメンズフィジーク部門で寺島遼が見事優勝を果たした。これで寺島は、2019年大会に続き、2連覇を達成。世界2連覇、アジア2連覇、国内階級別2連覇をすでに果たしており、最後の2連覇となった。

「いつも通りのコンディションなら、1位は取れると思っている」

まさに王者らしい言葉で、大会に向けた自信を前日に投稿した自身のYouTubeチャンネルで語っていた寺島。すでに日本最強のフィジーカーとして名を馳せており、今大会の優勝は前評判通りの結果となったわけだが、表彰式で自身の名前が最後にコールをされた際に見せた姿は、その時を噛みしめるようにうつむき、涙を流す背中だった。

その理由を聞いてみよう。

「もちろん、優勝できて直に嬉しいです。その気持ちは間違いなくあります。でもそれと同じくらいに、共に戦ってきた直野(賀優)くんと、佐藤綾くんと3人で最後に並べたことが嬉しかったんです。これは僕の夢だったというか、ずっと求めてきたこと。本当は、(予選審査の)ファーストコールで呼ばれたときにはもう泣きそうだったんですけど、さすがにそこは我慢しました(笑)」

佐藤綾(左)、寺島(中央)、直野賀優(右)のファーストコールに観客も沸いた

大会が終わると、少しの無邪気さを見せながら率直な気持ちを語る寺島だが、ステージ上の雰囲気はそれとは正反対であり、誰も太刀打ちできないと思わせるような絶対王者そのもの。マイナス点の付かないバランスのとれたボディ以上に、他の選手と並んだ中で見せる存在感は、寺島遼にしか出せないオーラをまとっている。

「王座の風格というか……身体も見てほしいですけど、雰囲気も見てほしいんです。最初に登場するときはシュっとする顔をしているほうが締まってみえると思いますし、でもフロントポーズをとったときには笑顔も見せる。そこの緩急というのは、ステージングで意識しているところですし、『何かわからないけど目立っている』という雰囲気を出せるのは僕の武器だと思っています」

本来であれば、この後の世界選手権でさらなる活躍を期待したいところだが、今年に関しては新型コロナウイルス感染拡大の影響もあり、辞退を決めている。とはいえ、「やっぱり今回のグラチャンにも出場して思いましたが、サイズ感や筋量というのは、僕自身は身長が小さいこともありますが、バランスは大切にしつつもう少し求めていきたい」と話すように、今シーズンの大会こそ終わりだが、これからも進化を止めるつもりはない。

結果として、ALL JAPAN選手権からこのGRAND CHAMPIONSHIPSまで、寺島がすべての審査で1位票を獲得する完全優勝で終わった2021年となったが、年々競技人口が増加中のメンズフィジークだけに、いつか彼を超える存在が現れるのも期待したいところ。

来年はその牙城を崩す者が現れるのか、それとも追う者たちが届かないほどのスピードで進化を続ける寺島が再び逃げ切るのか。来年こそ、大きな歓声の中でステージに立つ彼らに全力の声援を届けられる日常が帰ってくるのを願うばかりだ。

文・写真/木村雄大