シトルリンの効果は?【桑原弘樹の栄養LOVE】




サプリメント実践的活用のスペシャリストである桑原弘樹さんが、サプリや栄養や肉体に関する疑問を解決する連載。第139回は、アミノ酸の一種であるシトルリンの効果について。

■心臓と血管の健康には欠かせない物質

シトルリンは、日本では2007年より食品素材として新たに使用が認められたアミノ酸です。発見自体は1930年と古く、スイカの果汁中より発見されたため、スイカの学名Citrullusvulgaris(シトラスブルガリス)から、Citrulline(シトルリン)と命名されました

カラハリ砂漠の野生スイカに多く含まれており、光が強く乾燥した過酷な環境で生きていくのに重要な役割をはたしている成分だと考えられています。血流改善、動脈硬化予防、精力増強などの効果が期待されています。しかしタンパク質の合成には使われず、主に遊離した状態で血液や尿、細胞中などに存在しています。食品ではスイカの他、ニガウリやキュウリ、メロンなどのウリ系に多く含まれ、肉や魚、卵など代表的な高タンパク食品にはあまり含まれていません。

このシトルリンには代謝に関わる2つの重要な働きがあるのですが、それが前回の質問でお答えしたオルニチン回路と、もうひとつがNO(一酸化窒素)産生で、アルギニンと限りなく密接なアミノ酸がシトルリンなのです。NOは体内ではアルギニンとシトルリンによって産生されるのですが、心臓と血管の健康には欠かせない物質で、主として血管の内皮(血管の内壁を覆う組織)で作られています。心臓と血管は、血液を介して酸素・水分・栄養分を全身に送り届けると同時に老廃物を排出しています。つまり血管は身体の全細胞をコントロールしている器官であり、血管の柔軟性を保つことこそ、丈夫な体をつくるための秘訣といえます。

NOの主な働きは、次の2点です。

1.血管の筋肉をやわらかくして広げ、血流をスムーズにすること

2.血管内のコレステロール体積や血栓の発生を抑えること

このNOの働きによって、心臓や血管に関わるさまざまな疾患の予防や改善が期待されています。また、このNOの働きは筋肉を強く大きくしたいという人にも必要な作用となります。血管が太くなれば、より多くの血液を筋肉やその他の組織に運ぶことが期待できるからです。つまり、血液を通してより多くの栄養素や酸素などを組織に送り届け、筋肉の成長を効率的に促進することができるというわけです。そして筋肉の成長の妨げとなる代謝物の排泄も促されるのです。


桑原弘樹(くわばら・ひろき)
1961年4月6日生まれ。1984年立教大学を卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。開発、経営企画などを経て、サプリメント事業を立ち上げ、16年以上にわたってスポーツサプリメントの企画・開発に携わる。現在は桑原塾を主宰。NESTA JAPAN(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会 日本支部)のPDA(プログラム開発担当)。また、国内外で活躍する数多くのトップアスリートに対して、サプリメント活用を取り入れた独自のコンディショニング指導を行ない、Tarzan(マガジンハウス)など各種スポーツ誌の企画監修や執筆、幅広いテーマでの講演会など多方面で活躍中。著書に「サプリメントまるわかり大事典」(ベースボールマガジン社)、「私は15キロ痩せるのも太るのも簡単だ!クワバラ式体重管理メソッド」(講談社)、「サプリメント健康バイブル」(学研)などがある。プロフィール写真のタンクトップにある300/365の文字は、年間365日あるうち300回のワークアウトを推奨した活動の総称となっている。300日ではなく300回であることがポイントで、1日2回のワークアウトでも可。決して低くはないハードルだが、あえて高めの目標設定をすることで肉体の進化が約束されると桑原塾は考え、実践している。