スポーツ深読みシリーズ~カーリング【佐久間編集長コラム「週刊VITUP!」第191回】




VITUP!読者の皆様、こんにちは。日曜日のひととき、いかがお過ごしでしょうか? 今年も残すところあとわずか。年が明けると北京2022冬季オリンピック・パラリンピックがやってきます。というわけで、今回は不定期でお届けしている「スポーツ深読みシリーズ」として、冬季オリンピック種目であるカーリングを掘り下げていきましょう。

(C)juergenphilipps-stock.adobe.com

2018年平昌オリンピックでの女子日本代表の活躍により、カーリングに興味を持った方も多いかと思います。まずは簡単に競技のルールや基礎知識から紹介します。

 

ゲームを行なうエリアのことを「シート」と呼び、その全長は約40メートル。ストーンと呼ばれる直径約30センチ、重さ約20キロの石をハウスと呼ばれる円の中に投げ入れて、点数を競う競技です。1チームの編成は4人で投げる順番によって、リード、セカンド、サード、スキップの4つのポジションに分かれています。1人が2投げずつ交互にストーンを投げ、両チームがすべて投げ終わった(1チーム8個/1エンド)時点で得点が決まります。

 

得点できるのは円の中心に一番近いチームだけで、相手チームより中心に近いストーンはすべて得点となります。

 

こちらの図の場合、もっとも中心に近いのは黄色なので黄色の1点となります。赤のストーンがいくらハウスの中に入っていても、一番近いもの以外は得点にならないので、このエンドは黄色1-0赤となるわけです。

 

細かいルールはいろいろありますが、得点の入り方がわかれば楽しめると思います。ここからは居酒屋で話せる豆知識をお届けしましょう。

 

カーリングといえば、ブラシで氷をこするスイーピングが見どころの一つ。ブラシの長さや素材は自由なのですが、ヘッド部分の布はWCF(世界カーリング協会)に承認されたものを使用します。なぜ氷をこすっているのかというと、カーリングは試合前に氷の上に水(ぬるま湯)をまいて、氷の上にペブルと呼ばれる氷の粒をつくります。スイーピングによって、このプベルとストーンの摩擦を減らすことで、距離や速度、方向の調整をしているのです。ちなみ1試合あたりのスイーピング距離はなんと約2000メートル。あの姿勢で2000メートルはなかなかハードです。かなり体力を必要とすることがわかるでしょう。

 

靴にも特徴があります。実は選手は右足と左足で底が違う靴を履いているのです。片方がゴム製で滑りにくく、片方はステンレスやテフロンで摩擦が少なく滑りやすい素材でできています。右投げの選手は左足、左投げの選手は右足に滑りやすいシューズを着用します。

 

そしてストーンにも秘密があります。世界選手権やオリンピックで使用されているストーンは、すべてスコットランドのアルサクレイグ島の花崗岩からできているものです。この島で採れる石は、石同士がぶつかっても割れず、うまく反発し合う特徴があるため、カーリングのストーンに最適なのです。しかも島の形がストーンの形にそっくりという、まさにカーリングストーンのための島と言ってもいいでしょう。

 

ざっとカーリングの豆知識を紹介してきましたが、ストーンを中央に近づけるための戦術とテクニック、スイーピングのハードワーク、勝負を決める一投を投げるスキップには強い精神力も求められます。心技体に加えて頭脳も必要とするカーリングをぜひ注目してみてください。

 

 

 

佐久間一彦(さくま・かずひこ)
1975年8月27日、神奈川県出身。学生時代はレスリング選手として活躍し、高校日本代表選出、全日本大学選手権準優勝などの実績を残す。青山学院大学卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。2007年~2010年まで「週刊プロレス」の編集長を務める。2010年にライトハウスに入社。スポーツジャーナリストとして数多くのプロスポーツ選手、オリンピアン、パラリンピアンの取材を手がける。