「酢を飲むと体が柔らかくなる」は都市伝説?【桑原弘樹の栄養LOVE】




サプリメント実践的活用のスペシャリストである桑原弘樹さんが、サプリや栄養や肉体に関する疑問を解決する連載。第170回は、体が柔らかくなるというイメージがある酢について。

■体の柔軟性とは無関係だがメリットは大きい

これはなかなか根強い都市伝説ですよね。都市伝説なんだとわかっていても、酢を使った食べ物を食べると柔軟性が上がるような錯覚を感じるのは私だけでしょうか(笑)。肉などを酢に浸けると肉が柔らかくなるため、酢が体を柔らかくするというイメージが生まれたのかもしれません。

結論としては、残念ながら体の柔軟性とは無関係ということになります。ただし、酢には健康的な効用もあります。血行促進であったり、体を弱酸性に戻してくれたりという、疲労回復の根本的なところが期待できますので、柔軟性とは関係なくとも食生活に取り入れるメリットは大きいと言えます。食欲があまり湧かない時も、お酢を使った料理は食べやすかったりもしますので、体づくりにもいいのではないでしょうか。

黒酢に至ってはアミノ酸も豊富に含まれていますから、料理に使う以外にも飲用する方法もアリです(いきなり大量に飲むと胃を痛めるので、とくに最初のうちは少量を薄めて飲んだりするようにしてください)。そして黒酢のうれしい効果に、赤血球変形能の改善があります。

赤血球は大きさが毛細血管の先よりも大きいので、その形を変えて毛細血管の先まで進んでいきます。ところがさまざまな要因によってこの柔軟性が失われていき、毛細血管の先まで届かなくなってしまいます。つまり体の隅々まで酸素が行きわたらないことになり、また老廃物の回収が滞ることにもなります。

赤血球変形能の改善とはこの柔軟性の改善ということであって、体は柔らかくならないものの、赤血球は柔らかくなる可能性があります。またその結果として、肩凝りなどの症状の緩和といった効果が期待できますので、どこか漠然と体の柔軟性とイメージでつながっているような気がしますよね(体の柔らかい人は肩凝りにならないみたいな)。だからこの都市伝説は続いているのかもしれません。


桑原弘樹(くわばら・ひろき)
1961年4月6日生まれ。1984年立教大学を卒業後、江崎グリコ株式会社に入社。開発、経営企画などを経て、サプリメント事業を立ち上げ、16年以上にわたってスポーツサプリメントの企画・開発に携わる。現在は桑原塾を主宰。NESTA JAPAN(全米エクササイズ&スポーツトレーナー協会 日本支部)のPDA(プログラム開発担当)。また、国内外で活躍する数多くのトップアスリートに対して、サプリメント活用を取り入れた独自のコンディショニング指導を行ない、Tarzan(マガジンハウス)など各種スポーツ誌の企画監修や執筆、幅広いテーマでの講演会など多方面で活躍中。著書に「サプリメントまるわかり大事典」(ベースボールマガジン社)、「私は15キロ痩せるのも太るのも簡単だ!クワバラ式体重管理メソッド」(講談社)、「サプリメント健康バイブル」(学研)などがある。プロフィール写真のタンクトップにある300/365の文字は、年間365日あるうち300回のワークアウトを推奨した活動の総称となっている。300日ではなく300回であることがポイントで、1日2回のワークアウトでも可。決して低くはないハードルだが、あえて高めの目標設定をすることで肉体の進化が約束されると桑原塾は考え、実践している。