ステロイドって何? 【ドクター長谷のカンタン薬学】




風邪をひく、頭痛、筋肉痛、二日酔い……日常生活では何かと薬のお世話になる機会も多いもの。薬はドラッグストアやコンビニでも簡単に手に入る時代。だからこそ、使い方を間違えると大変! この連載では大手製薬会社で様々な医薬品開発、育薬などに従事してきた薬学博士の長谷昌知さんにわかりやすく、素朴な疑問を解決してもらいます。
※本記事は、2019年に公開した記事を再編集して紹介するものとなります

Q.ステロイドは「筋肉増強剤」みたいな話も聞きますが、実際はどんな薬なのですか?

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ステロイドは基本的にコレステロールからつくられています。コレステロールは六角形3つと五角形1つの構造を持っていて、同じ骨格を持つものはすべてステロイドと呼ばれます。そのため、一口にステロイドと言ってもいろいろな種類があり、どこでつくられるかによって、機能が決まってくるのです。

腎臓の少し上にある副腎でつくられるのが副腎皮質ステロイド。これは一般的に薬用で使用されているもので、炎症を抑えたり、免疫力を抑制したりする作用があり、リウマチや喘息、肺炎などの自己免疫疾患や炎症性のさまざまな疾患の治療に使われています。

ステロイドは効果が強い反面、副作用が起こるのも事実で、お年寄りや女性が長期間使うと骨粗鬆症や感染症にかかりやすくなるなど、いろいろな副作用があります。大きな問題を避けつつ、ステロイドの恩恵を受けるためにも、医師や薬剤師の指導をきちんと守って服用してください。

一方、副腎ではなく、生殖器でつくられるステロイドには、女性を女性らしく、男性を男性らしく形作る働きがあります。例えば、女性ホルモンであるプロゲステロンは乳房や卵巣を成長・成熟させます。そして、いわゆる「筋肉増強剤」と表現されるのが、男性の精巣でつくられるテストステロンなどのアナボリックステロイドです。

アナボリックステロイドは、食事から摂取したアミノ酸からタンパク質をつくり出す作用があり、タンパク同化ステロイドとも呼ばれます。アナボリックは「構築する」という意味で、その名の通り体に筋肉を構築する作用があります。

短期間で劇的な筋肉増強を実現するとともに、常態では得ることのできる水準をはるかに超えた筋肉成長を促す作用から、長年にわたって運動選手らの間で使用されてきました。ちなみに、「同化」の反対は「代謝」で、「分解する」という意味になります。

ステロイド=筋肉増強剤ではない