「歯磨きするような気持ちで筋トレしています」歯科医師・長澤秀樹#3【筋の旅人】




2015年の大会デビュー以来、国内外の大会で結果を残してきた長澤秀樹さん。歯科医師として多忙な日々を送る中でもトレーニングを欠かさない、国内トップレベルのフィジーカーだ。2021年にはオールジャパン選手権メンズフィジーク40歳未満172㎝以下級で2位と躍進し、年間のオーバーオール優勝(全階級込みの総合優勝)を決めるJBBF FITNESS JAPAN GRAND CHAMPIONSHIPS 2021メンズフィジークでも5位入賞をはたした。今回は、そんな長澤さんのインタビューを全4回でお届けする。第3回は、歯科医師の仕事とトレーニングの両立について。

病院や患者さんに対する、感謝の気持ちは絶対に忘れない

――歯学部生の頃からずっとトレーニングをしていたんですよね。

「はい。まわりは勉強をがんばっていたので、『なんだ秀樹、勉強しないで筋トレばかりして』という目ですごく見られていました。とくに10年前は筋トレがまったく流行っていなかったので、おそらく変なマッチョだと思われていましたね(笑)」

――そんなことはないと思います(笑)。お忙しい中だったと思うので、時間をつくるのが上手だなと感じました。

「勉強をおろそかにしている部分も……(笑)。大学に併設されているジムがあったのでそこでやったり、自宅にベンチを組み立てて鍛えていました」

――歯科医師は非常に集中力を要する職業だと思います。実際に働き始めてから、両立がつらいと思ったことはないですか。

「とくに減量末期はきついですけど、そこは決してイライラしないように心がけています。自分たち歯科医師は患者さんやスタッフあっての職業だと思っているので、そういう時こそ穏やかに接するようにしています」

――自分を律する心が素晴らしいです。

「病院では院長からも競技を理解してもらっていますし、周囲への感謝の気持ちはつねに持っています。大会前になると肌を焼いて真っ黒になりますけど、患者さんが怖がるので日焼けNGな病院もあると思うんです。ただクローバーデンタルオフィス新宿では許可していただいていて、患者さんからも『そろそろ大会が近いんですか』などと声をかけていただけます。そういった環境は本当に恵まれていると思いますね。だからこそマッチョでも威圧感を与えないように、より穏やかな口調で、コミュニケーションを大切にした治療を心がけています。患者さんへの説明はもちろん、話しやすい雰囲気をつくったり、コミュニケーションは本当に大切にしています」

――長澤さんだからこそ、病院も協力したくなるのだと思いました。ちなみに、患者さんがマッチョだとテンションは上がりますか(笑)。

「いやー上がりますね(笑)。治療中に仲良くなって、通っているジムを聞いたら同じジムだったりしますし。ジムで患者さんに会って、あいさつすることも多いですよ。逆にジムで仲良くなった方が、治療に来ていただくこともありますね」

――歯科医師の視点から見て、噛み合わせや歯並びがよくなると、パワーが上がることはありますか。

「あると思います。ただ、噛みしめすぎるとエラが発達してしまうので、自分は極力噛みしめないようにしています。口をぽかんと開けて、体に力は入れますけどアゴには力を入れません。歯と歯が触れ合わないようにしていますね」

――噛みしめなくても、体に力は入りますか。

「慣れたので入るようになりました。自分はトレーニング中も噛みしめないですし、食事以外は歯と歯が触れ合わないようにしています。フィジークは小顔の方が映えるので、エラが張らない方がいいですからね。そういった部分も大事にしています」

――トレーニングで噛みしめすぎると、他に悪影響もあるのでしょうか。

「歯がすり減って、最悪の場合折れてしまうことも考えられます。寝ているときはどうしても意識できないと思うので、ナイトガードというマウスピースを入れるのは有効かなと思います」

――たとえば歯磨きをする、噛みしめすぎないなど、歯の健康を守るには習慣が大事だと思います。筋トレに通じる部分はありますか。

「それは絶対的にありますね。自分は、歯磨きをするような気持ちで筋トレしています(笑)。歯磨きしないと気持ち悪いじゃないですか。それと同じで筋トレしないと気持ち悪いんです。何事も、習慣になってしまえばこちらの勝ちかなと思っています」

――習慣をつくるコツはありますか。

「まずは続けることだと思います。面倒でも、何があってもとりあえずジムに行くことですね。そうやって繰り返していくと、ジムに行くことに何も感じなくなってきます。自分は『気づいたらジムに着いていた』なんて日もありますよ(笑)。そのくらい自然に、筋トレを楽しめたらいいのかなと思います」

最終回となる次回は、長澤さんの今後の目標について)

取材・文/森本雄大
写真/森本雄大

撮影協力/クローバーデンタルオフィス新宿
東京都新宿区百人町1-15-21 レアル新宿3F


長澤秀樹(ながさわ・ひでき)
歯科医師。19歳から本格的にトレーニングを始め、2015年のベストボディジャパンでの大会デビュー以来、国内外の大会で多くの実績を残す。2021年にはオールジャパン選手権メンズフィジーク40歳未満172㎝以下級で2位と躍進し、JBBF FITNESS JAPAN GRAND CHAMPIONSHIPS 2021メンズフィジークでも5位入賞をはたした。