“まさか”のミスター東京奪取はダークホース喜納穂高【第57回東京ボディビル選手権】




ボディビルの東京チャンピオンを競う戦い、通称「ミスター東京」が8/13(土)に北とぴあで行なわれた。過去には鈴木雅、横川尚隆、相澤隼人らも覇者となってきており、いち都道府県大会の枠を大きく飛び越えた、まさに日本王者への登竜門ともいえる大会だ。

予選審査における最初の比較審査、すなわちその時点での順位が上位の選手がステージ中央に呼ばれるファーストコールでその名が呼ばれると、会場内はどよめきが起きるとともに、当の本人も「まさか自分が……」と、驚きの表情をのぞかせた。

中央に呼ばれたのは、沖縄出身の喜納穂高(きな・ほだか)。セカンドコール、サードコールで全選手が呼び出されて比較審査が順番に行なわれた後、4度目のコールで、寺岡陽、堀内誠とともに再び呼ばれてステージに立ったこの男が、2022年のミスター東京に輝いた。

「正直、今でも東京のトップになった実感はありません。もちろん獲れるなんて思っていませんでしたから」と話す喜納。2017年に沖縄県オープンフィットネス大会のメンズフィジークでコンテストデビューを果たし、いきなりオーバーオール優勝を達成。2019年からは日本ボディビル・フィットネス連盟(JBBF)を離れ、NPCJ、FWJを舞台にフィジークカテゴリーで活躍を見せる。そして、昨年にJBBFに復帰。8月のジャパンオープン選手権大会のクラシックフィジークに出場して175cm以下級を制覇した選手であり、ボディビルにおいては今回がデビュー戦である。「まさか…」と本人がこぼすのも無理はないだろう。

「もともとボディビルには興味がありましたが、僕としては、あくまでクラシックフィジークをメインに考えています。以前も大会に出ていく中でコンディションが上がっていった経験があるので、今年は9/4(日)のジャパンオープンを見据えたときに、3週間前の今回の大会に出て調整しようと。出るなら、自分の身体がどこまで通用するのか試してみたく、なるべく大きな大会に出ようと思ってこの東京選手権を選びました」

今回、東京王者となったことで日本選手権への進出も期待さえるが、「今年は、今のところは考えていません」ときっぱり。あくまで目指すはクラシックフィジークでジャパンオープン選手権の階級別優勝、そして、昨年は五味原領に惜しくも敗れて逃した、オーバーオール優勝の座だ。

「まずは9月に、昨年のリベンジを果たしたいです。とはいえ、『ミスター東京』の称号を手に入れたのだから、今年は今のところは考えていませんが、ボディビルの日本選手権も視野に入れて頑張っていこうと思います」

デビュー戦でいきなり頂点に立つという、まさにダークホースとしての活躍を見せた喜納。ボディビル界に突如現れた新たな刺客が、世間をさらに賑わす日はそう遠くないかもしれない。

取材・文・写真/木村雄大