連載50回突破記念スペシャル対談~渡辺華奈×朱里〈前編〉




渡辺華奈選手の連載「デートするならジムがいい」が、連載50回を突破。これを記念して、MMAやキックでも活躍してきたプロレスラー・朱里選手とのスペシャル対談が実現! まずは同じジムでハードなトレーニングをしていた日々を振り返ってもらいました。

お互いに共通する初対面の印象                   「すごい女子が来た」「すごい女子がいる」

 

――お二人が初めてお会いしたきっかけは?

渡辺:「スカイライブ」(SkyLive-R)というジムですね。

朱里:このジムはK-1で活躍していた魔裟斗さんがフィジカル面を鍛えていた、フィジカル専門のジムです。自分がそこに通っていて、華奈さんも入ってきたんですよね。

渡辺:ハードなサーキットトレーニングをみんなで2時間くらいやっていましたね(笑)。格闘技の練習をするわけではないのですが、朱里さんをはじめ、いろいろな格闘家の方が通っていましたよね。朱里さんは何がきっかけで通うようになったんですか?

朱里:自分はその頃キックボクシングをやっていて、自分に足りない部分はフィジカルだって思っていたんです。今のままではダメだと思ってインターネットでいろいろ検索していたなかで、このジムを見つけて。「ここだ!」と思って、自分から連絡して通わせてもらうようになりました。華奈さんがスカイライブを知ったきっかけは?

渡辺:私はJRの柔道部の同期が通っていたことがきっかけですね。それまでは全部自分でトレーニングをしていて、ちょうど格闘技に転向する頃だったので、ちゃんと鍛えたいなと思っていたところで、このジムを紹介してもらいました。スタミナ系のトレーニングとかめちゃくちゃきつかったですね。

朱里:めちゃくちゃきつかったよね。メニューっていくつくらいあったっけ?

渡辺:たぶん、サーキット1周30分くらい。腹筋だけでもたくさん種類があったよね。

朱里:あった。それで最後はエルゴ(メーター)か。

渡辺:十何種目もやってヘトヘトになった最後にパワーマックスをやって、その後にバーンマシンをやって1周終わりで、それを3周やるみたいな。

朱里:その後にエルゴだよね?

渡辺:そう。エルゴメーターを何セットかやって、それから最後に全員で腹筋1,000回くらいやるみたいな。

 

――とんでもない場所で出会っていますね。

渡辺:そうなんです(笑)。あのトレーニングはあまり続く人はいないよね?

朱里:いなかったね。

 

――そこで出会ったときの印象は?

朱里:最初は誰でも慣れないのできついと思うんですけど、華奈さんは最初から全部できていてスタミナもすごかった。それを見てすごい女子が来たなと(笑)。

渡辺:自分もまったく同じことを思ってましたよ(笑)。すごい女子がいるって。朱里さんは本当に妥協しないんです。自分の中では、それまでは柔道家とかレスラーの部活的な感じと比べると、格闘家はそこまで追い込んでトレーニングをしないイメージだったんです。そういう思い込みがあったので、朱里さんを見て「こんな人は初めて見た」ってビックリしました。

きついトレーニングを乗り切る秘訣。心を無にして頭と体を切り離す

 

――出会う前からお互いの存在は知っていたのですか?

渡辺:ジムで出会った頃には朱里さんはUFCにも出ていたので知っていました。JRの同期からも「朱里さんはすごい」という話も聞いていたので、会う前からすごいのは想像していたのですが、想像以上でした。

朱里:自分も華奈さんのことはリスペクトしています。その頃はお名前しか知らなくて、戦績とかは詳しくなかったんですけど、一緒にトレーニングをしてお話をさせてもらって、気持ちが強いし、本当に尊敬できる選手だなって思いました。そもそもあのトレーニングをやる女子がほとんどいないもんね。

渡辺:淡々と同じことをやるから内容も面白いとは言えないし(笑)。フィジカルが週2回でラントレが週1回あって、週3回一緒でしたよね。

 

――きついトレーニングを乗り越える秘訣は?

朱里:やっぱり普通の人よりもやらなければ勝てないと思っているから、最低でも練習量は他の人に負けないという気持ちがありました。もう一つは、やる日が決まっているから、その日は絶対にこれをやるという決まりみたいなものですね(笑)。

渡辺:ルーティンというか、歯磨きみたいな。そういう感覚的な部分は、朱里さんと自分は似ていると思います。あとは乗り越える秘訣というなら、無になることじゃないですか。

朱里:自分も無心でやってますね。

渡辺:頭と体を切り離すイメージ。

朱里:それ、すごいわかる。

 

――切り離せるようになるのですか?

渡辺:なります。

朱里:限界を超えちゃっているんですよ。なんかちょっと、他の世界にいってしまってるみたいな(笑)。

渡辺:きついけど、やればいつか終わるし。

 

――ここまできついことはせずとも、読者の方の中にはジムに行く行為そのものにハードルを感じている方もいるかもしれません。そういう方がジムに行くモチベーションを上げるためのアドバイスはありますか?

朱里:自分の場合は勝つために行く場所なので、行かなければならないという感じですからね。これは参考にならないダメな答えですね(笑)。

渡辺:とにかくジムに行って、ちょっときついときは「軽めにしても良いかな」くらいの楽な気持ちで行っても良いんじゃないかなと。行ってしまったらやると思うので。でも本当のこと言うと、自分の場合は「マシン化する」のが一番良いと思っています。この日はこれをする、この日はこれをするというのを全部決めて、それを何の感情もなく機械的にこなしていくだけという、マシンになる感じです(笑)。

朱里:わかる! ある意味、きついトレーニングってフィジカルを鍛えてるんだけど、メンタルトレーニングだよね。

渡辺:メンタルはすごく鍛えられますね。トレーナーさんがトレーニング中の写真を撮ってくれるんですけど、きつすぎてみんな顔が死んでるよね(笑)。

朱里:私の場合は、顔が険しくなって「ゴルゴ13」みたいになる(笑)。

渡辺:当時を思い出すと、きつかった思い出しかないですね。

 

※中編に続く

 

朱里(しゅり)
1989年2月8日、神奈川県出身(33歳)。2008年にハッスルでKGとしてプロレスデビュー。10年にSMASH移籍を機に朱里に改名。プロレスと並行してシュートボクシングやキックボクシングにも挑戦し、14年には初代Krush女子王者に輝く。16年、パンクラスに参戦してMMAに転身。17年、ストロー級クイーン・オブ・パンクラス王座を獲得すると、UFCに初参戦しジョン・チャンミに2-1で勝利。日本人女子初の勝利者となった。20年からSTARDOMに所属。現ワールド・オブ・スターダム王者(取材時)。
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渡辺華奈(わたなべ・かな)
1988年8月21日、東京都出身。7歳から柔道を始め、高校ではインターハイ2位、アジアジュニア優勝などの実績を残し、東海大進学後、1年時に全日本ジュニア優勝を飾る。卒業後、JR東日本へ入社し、オリンピックを目指して競技を続けた。2017年に同社を退社し、格闘家に転身。同年12月3日にデビューを勝利で飾ると29日にはRIZIN初参戦で実力者杉山しずかに勝利。2021年よりアメリカ格闘技団体「ベラトール」に参戦している。所属はFIGHTER’S FLOW
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