【レモンクラシック2022】コンテストレポートby和田駿 vol.4




8/14(日)に広島県民文化センターにて開催された、トレーニングジムレモン(広島県)主催のボディコンテスト「LEMON CLASSIC(レモンクラシック)2022」。「日本一出場しやすくて楽しい大会を開催したい!」「選手を大切にした大会を開催したい」という思いの下で2回目の開催となり、大盛況のまま幕を閉じた。ここでは、大会の審査員を務めた和田駿さんによる大会レポートを、4回に分けてお届けする。
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賞金ありボディビル

1.決勝審査

このカテゴリーのみ、ピックアップなし、14人で8ポーズの決勝比較審査から行なわれた。比較審査の上位10名がフリーポーズ審査に進出する。

まず、ファーストコールは以下の5名で行なわれた。
154番EITO選手、172番黒川選手、183番ひが選手、185番藤井選手、189番けんまん選手

セカンドコールは以下の5名。
173番ウッシー選手、175番八木選手、184番山部選手、185番藤井選手、188番大久保選手

サードコールは以下の5名。
174番松本選手、175番八木選手、177番ヨネ選手、183番ひが選手、188番大久保選手

フォースコールは以下の5名。
175番八木選手、177番ヨネ選手、182番吉田選手、186番かっちゃん選手、190番戸田選手

フィフスコールは以下の5名。
154番EITO選手、173番ウッシー選手、185番藤井選手、188番大久保選手

最後、シックス(ラスト)コールは以下の2名で行なわれ、実質的なTOP2争いであった。
172番黒川選手、189番けんまん選手

比較審査の結果、以下の10名がフリーポーズ審査に進出した。

172番黒川選手、173番ウッシー選手、175番八木選手、183番ひが選手、184番山部選手、185番藤井選手、186番かっちゃん選手、188番大久保選手、189番けんまん選手、154番EITO選手

決勝比較審査の後、フリーポーズでもそれぞれの順位を審査し、比較審査とフリーポーズの合計で最終順位を決定する。

2.順位発表・審査結果

選手それぞれが思い思いのポーズを取りながら、10位から順番に順位が発表される。ポーズダウンで順位が発表された順番に、各選手の印象を書いていきたいと思う。

第10位:八木健四郎選手

低めの身長に対して、隙間なく筋肉がついていて迫力があった。11位以下と比べると絞れており、加えてサイドポーズの上半身の迫力と、背中の広がりで上位10人に残ったように感じる。

第9位:かっちゃん選手

筋量面では上位6人に匹敵するものがあった。特に下半身が見事で、バックポーズやサイドポーズでは非常によく見えた。ただ、フロントポーズで脚のカットが入っていなかったところ、ステージングが淡々としていた分で評価を落としたかもしれない。

第8位:ひがけんご選手

上位陣と比べて上半身が弱く感じたが、見事な下半身でその印象をかき消していた気がする。ポージングがうまく、堂々としたステージングであった。フリーポーズでも自分の良さをうまく表現できていたと思う。

第7位:山部元樹選手

彼もフィジークとのダブルエントリーである。大腿部の太さはけんまん選手と1~2位を争うもので、大腿四頭筋のセパレートが見事であった。バルクは上位2人に匹敵するものがあったかもしれないが、少し仕上がりが甘く、また背中の広がりを表現できていなかったかもしれない。

第6位:ウッシー選手 

どのポーズでも弱いと感じる部分がなく、サイドポーズやバックポーズで見せる身体の厚みはものすごいものがあった。もう少しだけ腹筋や細かい部分のディテールが細かく見えていたらさらに順位を上げていたかもしれない。決して甘いわけではないが、他の選手の仕上がりがよかった。

第5位:EITO選手

フィジークとのダブル出場である。はっきり言ってフィジークの時よりも良かった。太いうえに臀部まで細かくカットの入った下半身から細いウエスト、広い肩幅で、見事なXシェイプをつくっていた。上半身のディテール、厚みは上位に負けていたかもしれないが、ポージングがうまく、バックポーズ以外の比較ではあまり気にならなかった。折々で見せるバキュームポーズと声をあげてのモストマスキュラーは圧巻で、会場を大いに盛り上げていた。次は万全のフリーポーズを見せてほしい。

第4位:藤井貫太朗選手

ものすごい仕上がりであった。下半身が強く、前面背面ともに大きさも仕上がりも大変なものであった。上位3名と比べると上半身の厚みの面で後れを取ったかもしれないが、ものすごい仕上がりで隙のないバックダブルバイやカットに溢れたサイドトライセプス、モストマスキュラーは見事であった。

第3位:大久保義幸選手

フィジークとのダブルエントリーである。こちらのカテゴリーでも仕上がりの良さは屈指であった。上位2名と比べると少し細かったが、彼も見事なXシェイプで、フロントポーズのシルエットに欠点がない。それに加えた仕上がりの良さに加え、三角筋の張り出し、細かいディテールで3位に入った。賞金5万円を獲得。

第2位:けんまん選手

太くセパレートした大腿四頭筋と、それに負けない上半身の各部位の発達した筋肉、申し分のない仕上がりの良さは、まさに一流ボディビルダーである。フロントリラックスでは欠点がなく、パッと見ての印象は優勝であるが、バックポーズの広がりで数名の選手の後塵を拝したところが減点要素になったかもしれない。

また、全般的に少し煽り気味の姿勢でポーズをとっているように感じた。これがアピールの面でマイナスであった可能性もある。審査員席が遠いことを考慮してのものだったのかもしれないが、裏目に出たかもしれない。

しかし、背中以外の純粋な筋量はおそらく全選手中随一である。観客にボディビルのすごさを伝え、レモンクラシックを一流ボディビルダーの戦いで〆てくれた、立役者の一人である。賞金15万円を獲得。

第1位:黒川宏太選手 

この日の主役であったと言っても過言ではないと思う。鬼気迫る表情、ステージングとポージングで、会場すべてを味方につけての勝利と思えた。身体の部位によってはけんまん選手のほうが優れている部分もあったかと思うが、とくにフロントダブルバイの四頭筋のセパレート、サイドポーズでの外側広筋の深いカット、パックポーズの背中の厚みは一番であった。

他の選手が舞台に対して垂直に近い角度でポーズをとっていたのに対し、黒川選手は少し観客席側に倒してポーズをとっていた。これがライティングも味方につけ、深いカットをより強調する形となったかもしれない。このポージングの角度も含め、プレアクション、表情、すべてが彼の自己演出能力であり、鬼気迫る迫力につながったのだと思う。

ディテールの深い腕で二頭賞を獲得。観客投票のピープルズチャンピオンも獲得し、文句なしの完全優勝で優勝賞金50万円を獲得した。

おわりに

最後に、今回のコンテスト全体の感想を書かせていただきたいと思う。

賞金総額、協賛企業による副賞、観客の盛り上がり、選手のレベル、当日の大会運営。3年ぶりのレモンクラシックでは、すべてがスケールアップしていた。

ボディビルコンテストで賞金を得ることについては、いろいろな意見があるかもしれない。ただ、「すごいことを成し遂げた選手への相応のリターン」として賞金が与えられるということは、選手にとっても観客にとっても、わかりやすい称賛の風景なのではないかと思う。

今回、賞金ありの各カテゴリーについては、上位3名まで賞金が出た。金額の多寡ではなく、賞金が出たということそれ自体が非常に有意義だと思う。選手がリスペクトされているということに他ならないからだ。表彰式でビキニの3位の選手が賞金のボードを受け取っているのを見た時は泣きそうになってしまった。

今回も副賞はものすごい量と質であった。参加賞も豪華で、これだけでも、まずレモンクラシックに出てみようかなと思う人が出てくる理由として十分なものであったと思う。そしてその副賞を提供する協賛企業の名前が刻まれた垂幕の存在感は今回の舞台をさらに彩っていた。

観客の皆さんの盛り上がりも最高だった。レモンチャンネルの視聴者や、レモンクラシックをもともと知っている人たちがほとんどであったとは思うのだが、どうやらボディコンテストの生観戦は初めてという人も多かったらしい。そんな観客の皆さんが、誰にどう教えてもらうでもなく、選手たちのポーズで自然に盛り上がり、大事な場面で拍手が巻き起こる。本当に感動的だった。

この観客の皆さんの盛り上がりは、ものすごいレベルの選手の皆さんが全身全霊でポージングを取ったからこそのものであったと思う。午前中のピックアップ審査の段階からハイレベルであり、ボディコンテストに不慣れな観客を沸かせるだけのものがあった。

これは名だたる団体のチャンピオンクラスの集まる賞金ありフィジークでさらに顕著なものとなり、そしてそれが最高潮に達したのが賞金ありボディビルの比較審査である。

半日かけて少しずつ筋肉に目が慣れてきた観客の皆さんの度肝をさらに抜いてくる、大変な筋肉の衝撃が、最後の最後にやってきたのだ。それに呼応する観客の皆さんの盛り上がりも、最後の最後にその日一番の盛り上がりを見せた。繰り返すが、観客の皆さんの多くはボディコンテスト初観戦である。初観戦でも異様な盛り上がりを見せるだけのエネルギーが、ボディビルにはあるのだ。

ボディコンテストはかっこいい。
ボディビルはかっこいいのだ。

そしてもちろん、当日の運営がしっかりしていてこそ、選手は気持ちよくポーズを取り、観客はそれを楽しむことができる。

写真を担当してくれたTEAM Livの皆さん。
出場した選手一人一人の舞台上での最高のカットを撮影していただいた。

勝手がわからないであろう中で走り回ってくださったボランティアスタッフの皆さん。
選手の受付、誘導、審査の集計…ボディコンテストにかかせない作業の数々を、トレーニングジムレモンの会員さんたちに担って頂いた。

DJの光明くん。
切れ目を感じさせず、雰囲気に合い、飽きを感じさせないBGMが、今回のステージを盛り上げるのに大いに役立ったことは間違いない。舞台の端に朝からずっといたはずなのに、最後の最後、フリーポーズ音源の再生不良が起こるまでそこにいることを忘れていた。最高の仕事だったと思う。

司会の伊藤(悠斗)くん。
選手の皆さんが存分に力を発揮できるように、そして観客の皆さんが楽しみながら、選手のすごさを感じられるように。それを意識した司会進行であったと思う。レモンクラシックの理念である、選手ファースト、観客にボディコンテストのすごさを伝えたい、そういった思いが、彼を通して伝わってきた。

ゲストポーズのリカ(原田理香)さんと東(将治)くん。
今回ゲストポーズとポージングのガイダンスをコンテストの前に行なった。これはコンテスト初観戦のお客さんがコンテスト観戦に没入していく導入として非常に有効であったと思う。トップ選手の二人がこれを担ったからこそ、その後のコンテストがさらに際立った。リカさんはその後裏方で奔走し、東くんはYouTube配信を解説で大いに盛り上げてくれた。

ミスター裏方のケンてぃん。
今回、コンテストの様子はYouTubeで生配信された。同時接続は1万人を超えたという。会場の500人に加え、世界中の1万人がレモンクラシックの舞台を見守ったのである。そしてその様子を、今現在YouTubeのアーカイブで見返すことができる。これはケンてぃんを中心に、音響や配信の体制をしっかり構築して本番に臨んだゆえだろう。

そして株式会社LEMON代表のハラダマンこと原田(大智)くん。
リカさんとともに裏方で司令塔を担い、この最高のコンテストを最高の形でやり切った。

3年前の第一回大会の後、今回の大会を成し遂げるまで、レモンのメンバーそれぞれが大変な思いをしながらがんばってきたと思う。その過程は私には想像することしかできないが、その中心にいたのは彼だと思う。このコンテストの様子を、一番生で見たかったのも彼だっただろう。それでも裏方に徹し、ボディコンテストのエネルギーや楽しさ、ボディビルダーのかっこよさを1万500人に伝え切った。その功績は、形容する言葉が見つからないほどだ。

レモンクラシック2022は最高のコンテストだった。その開会から閉会までを、審査員として見届けることができたのが本当にうれしい。次回開催の際も、ぜひ参加させていただきたいと思う。

写真/TEAM Liv.