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連載50回突破記念スペシャル対談~渡辺華奈×朱里〈後編〉




渡辺華奈選手の連載「デートするならジムがいい」が、連載50回を突破。これを記念して、MMAやキックでも活躍してきたプロレスラー・朱里選手とのスペシャル対談が実現! 対談の最終回はアスリートとしての考え方や、これからの闘いについて話をお届けします。

強くなるために根性論は絶対に必要!                「老害と思われるかも(笑)」

 

――朱里選手が所属するスターダムは試合数も多いので、コンディションつくりが大変そうですね。

朱里:キックやMMAとは違って試合数が多いですし、タイトルマッチとなると、より激しい試合になるので、ケガが怖いですよね。年齢もあると思うんですけど、今まで酷使してきた影響がどんどん出てきています。ヒザもそうですし、腰や首もそうですし、長く現役を続けていくためには、ケガや痛みとどう付き合っていくか。そうした部分との闘いもありますよね。だから最近はケアをする時間が長くなりました。そうしないと壊れてしまうから。

渡辺:自分もそれは一緒ですね。前はラントレですごく走っていたんですけど、ヒザがやばくなるのでやめました。違うトレーニングに切り替えて、エルゴとかバイクのほうでスタミナを追い込むようにしています。強化していくためには体力的に無理をすることは必要ですけど、体的には無理をしないように気をつけるようになりましたね。

朱里:昔は何でも激しいことをやるのが一番だと思っていたけど、今はそれをやりながら試合はできないよね。

 

――そうやって考え方が切り替わるきっかけは何かあったのですか?

朱里:やっぱり長くやっていると、「これはダメなんだな」というのがわかってくるんです。

渡辺:一生懸命トレーニングをして、きついことやっているのに、体が悪化してパフォーマンスが下がってしまったら意味がないからね。でも、若いときはそれがわからなくて、ひたすらきついことをやっていたけど。

朱里:わからないし、それでもいけてしまう部分があったからね。でも、年齢とともに体の負担も積み重なってきているから、このままだと壊れるというのがわかってくるんです。

 

――長く闘っていこうと思ったら、年齢に合った自分にバージョンチェンジしていくわけですね。

渡辺:どうしても若い選手よりもベテラン選手のほうが練習量は落ちると思いますけど、それは慢心でも余裕でもなくて、体への負担の蓄積なんだなということが、今になってようやくわかってきました。でも、若いときに全力で追い込むトレーニングをする時期というのは、絶対に必要だと思うんですよね。

朱里:それはないとダメだよ。根性論って必要だよね。

渡辺:絶対に必要。きついことを経験しないで効率の良いことばかり求めていたら、薄っぺらくなってしまう。結果的にいらないトレーニングだったとしても、やってみて初めてわかることもあるから。でも「根性論が必要」とか言うと、老害だと思われる(笑)。

朱里:どんなことでも全力で取り組む時期って絶対に必要だと思うんですけど、今はその感覚についていける人が結構少ない気がする。

渡辺:そういう意味でも、アメリカの最先端を見てみたいなと思います。アメリカのトップ選手は強いけど、根性論みたいなものはどれくらいあるのか、まったくないのか、どういう練習スケジュールなのかとか、いろいろ気になります。

後悔したくない気持ちがエネルギーの源                お互いの活躍は励みになっている

 

――お二人がキャリアを重ねてもチャレンジを続けられるエネルギーの源はどこにあるのでしょうか?

朱里:自分は目標を決めないとできないので、まずは目標を決めるということですね。あとは人生を後悔なく生きたいと思うので、いい加減なことをしたくないというか、一生懸命やるということです。

渡辺:後悔したくないという気持ちは自分も一番ですね。

朱里:もう一つは、何かにチャレンジするとしたら、やるからには結果を出したい。だから目標を決めて結果を出すために、それに向かってがんばる感じですね。やるからには頂点にいきたいと思うし。

 

――実際、朱里選手はキックでもパンクラスでもスターダムでも頂点に立っていますね。

渡辺:本当に尊敬します。自分も頂点に立ちたいというのは同じです。偏った考えかもしれませんが、一番を目指さないとやっている意味がないと思うんです。でもこれは紙一重な部分があって、良い方向にいくときと、悪い方向にいくときがあります。頂点を目指していると「格闘技が楽しくなくなってしまうかもしれない」と思うこともあります。

朱里:わかる。きつい練習、苦しい練習は楽しくないからね。そこで結果が出ないと辛い。

渡辺:前までは自分はすごく強い人間で、常に前向きで目標があって、そういう人間であるし、そういう人間でありたいと思っていたけど、最近は少し違うんです。根底にはその気持ちを持ちつつも、「いつ自分がダメになるかわからない」と思いながらやっています。だから、一つずつ目の前の目標をクリアしていこうって思っています。

 

――やはり30代になると、アスリートとしてのゴールを考えることもあるのですか?

朱里:うっすら考えることはあるよね?

渡辺:ある。

朱里:極論を言うと、もしかしたら明日死ぬかもしれないとか、何かがあって世界が終わってしまうかもしれないとか、そういうことまで考えたら、今できることを精一杯やるしかないなと。

渡辺:そうだよね。だからいつダメになっても良いように、毎日全力で後悔ないようにというところに結び付くし、そうやって生きていかないといけないというのはあります。

 

――では最後にそれぞれの道で活躍するお互いにエールをお願いします。

朱里:本当に自分は華奈さんのことをリスペクトしていて、海外でがんばっている姿を見ていて、刺激になっているし、自分もプロレスでがんばろうと思っています。後悔なく格闘技人生を歩んで、その結果として「やって良かったな」とか「やり切った」と思えるように闘っていってほしいです。

渡辺:朱里さんはプロレス歴も長いですけど、キックやMMAとか違うフィールドにも挑戦していて、それは誰にでもできることではないから、本当に尊敬しているし、素直にすごいなと思います。朱里さんの試合を見ると、「自分もがんばろう」と思うので、格闘技をやっていて、心が折れそうなときは朱里さんのことを思い出すようにしています。

朱里:それは嬉しいな(笑)。

渡辺:朱里さんの活躍は私の励みにもなっているから、試合もまた観にいきたいですし、応援しています。チャンピオンとしてこのまま突っ走ってください。

 

朱里(しゅり)
1989年2月8日、神奈川県出身(33歳)。2008年にハッスルでKGとしてプロレスデビュー。10年にSMASH移籍を機に朱里に改名。プロレスと並行してシュートボクシングやキックボクシングにも挑戦し、14年には初代Krush女子王者に輝く。16年、パンクラスに参戦してMMAに転身。17年、ストロー級クイーン・オブ・パンクラス王座を獲得すると、UFCに初参戦しジョン・チャンミに2-1で勝利。日本人女子初の勝利者となった。20年からSTARDOMに所属。現ワールド・オブ・スターダム王者(取材時)。
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渡辺華奈(わたなべ・かな)
1988年8月21日、東京都出身。7歳から柔道を始め、高校ではインターハイ2位、アジアジュニア優勝などの実績を残し、東海大進学後、1年時に全日本ジュニア優勝を飾る。卒業後、JR東日本へ入社し、オリンピックを目指して競技を続けた。2017年に同社を退社し、格闘家に転身。同年12月3日にデビューを勝利で飾ると29日にはRIZIN初参戦で実力者杉山しずかに勝利。2021年よりアメリカ格闘技団体「ベラトール」に参戦している。所属はFIGHTER’S FLOW
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