ハワイでチアの武者修行。「振り幅が体半分くらい違う」本場のダンスに揉まれる日々【NFLチアリーダー・猿田彩#2】




まぶしい笑顔とエナジー満点のパフォーマンスで観客を魅了する、NFLチアリーダー・猿田彩さん。ここでは夢を追い続けた猿田さんの人生や、パワフルなパフォーマンスの原動力に迫る。アメリカに夢を見つけた猿田さんは、具体的なアクションへ行動を移していったのだという。第2回は、夢への大きな一歩となったアメリカ留学について聞いた。

夢を追うべく、さっそく行動開始

漠然とした思いが夢になり、目標へと変わった。とはいえ当時の猿田さんはダンス経験こそあれど、チアリーディングの経験は一切ナシ。それに通っていた高校にはチアリーディング部がなく、このまま時間を重ねても夢にたどり着ける可能性は低かった。

「夢に少しでも近づきたくて、アメリカ留学を具体的に考えました。アメリカのチアはトライアウトがあったりして難関なので、カナダへの留学を勧められたこともありましたね。ただ、将来アメリカで自分が暮らしていけるのかという不安もありましたし、練習も兼ねて渡米することにしました」

高校でのアメリカ留学時の猿田さん(中央)

不運にもトライアウトの期間とタイミングが合わなかったこともあり、渡米後にチアリーディングを行なうことができなかった猿田さん。しかし現地のチアダンスチームに参加させてもらうなど行動力を見せ、右も左もわからない中で奮闘を続けた。周囲の人に助けられつつ、夢に向かっての大きな一歩を踏み出したのだった。

本格的なスタートは競技チア。実力を伸ばしてポップ、ステップ

高校でのアメリカ留学を終え帰国した猿田さんは、日本の大学に入学。そこで初めて本格的なチアダンス部に入部した。

当時猿田さんが所属していたのは“競技チア”と言われるジャンルで、2分間の中でどれだけすばらしいパフォーマンスをできるかを競うスポーツ。目標とするNFLのチアは“応援チア”と呼ばれる応援に特化したものであるため、少々方向性が異なることが難点だった。

とはいえ、チアの動きを習得するには絶好の機会。猿田さんは週6で練習に明け暮れ、メキメキと実力を伸ばしていく。ついにはアメリカ・ハワイ大学で本場のチアに挑戦するため、ふたたび渡米を決意した。

「日本で鍛えていただいたおかげで、挑戦を決意できました。ハワイ大学のチア部に入った時は、人間性を含めたレベルの高さに感動しましたね。みんなすごく盛り上げてくれましたし、『何かわからないことがあったら聞いてね』とメールまでくれるメンバーもいて。『やっぱりチアリーダーは素敵だな、自分もこうなりたいな』と再認識した瞬間でした」

ハワイ大学でのチームメイトとの記念撮影

パワフル&エネルギッシュな本場チア。必死に食らいついて成長を続ける

イメージするのと、自分がやるのとは大違い。よくあることではあるが、猿田さんが感じたギャップは想像以上に大きかったのかもしれない。日本のチアと言えば華奢で可愛らしいイメージだが、アメリカでの衝撃は固定観念を覆した。

「本場のチアは力強さが段違いでした。みなさん骨太で元から体が強いですし、パワフルで振りが大きい。同じ振りで動いているつもりでも、動きが体半分くらい違うんですよ。このギャップには驚きましたね」

下がる時は下がる、出る時は出るといったメリハリのある動きを、全身を使って表現するアメリカのチアリーダーたち。食らいつこうと高いレベルに揉まれることで、猿田さんの動きも洗練されていった。

「高校でアメリカのダンスを体験した時は、どこかで『すごいな』という感心で終わってしまった部分がありました。ハワイ大学では自分も一緒に踊るわけなので、無理やりでもついていこうとがんばることができました」

力強さへの意識は、現在も猿田さんを大きく支えている

パフォーマンス面に加え、まったく出場予定のない試合に初出場が決まるなど、アメリカのサプライズ文化も猿田さんを鍛え上げた。そこで対応できるのが、猿田さんの強さなのかもしれない。

「試合当日にコーチから『アヤ、今日出る?』と声をかけていただきました。チームメイトも盛り上がってくれたので、これはチャンスだなと。そういう時って、火事場の馬鹿力というか、何とかなるんですよね(笑)。そういうメンタルの強さを身につけられたのはよかったと思います」

実力を高めた猿田さんは、ついにNFLオーディションへの挑戦を決意。ここから、さらなる勝負の日々が始まっていく。

(第3回に続く)

取材・文/森本雄大
写真提供/猿田彩