アスリートから一般のトレーニーまで、それぞれのトレーニングとの向き合い方を紹介する連載「My Training Life」。今回登場するのは、今年5月に行なわれた「Super Body Contest静岡大会」のCHARMクラス(女子18歳〜39歳)で優勝をはたした内田香名選手。日頃は救急救命医として働く彼女のトレーニングライフに迫った。
「今にも亡くなりそうな患者さんが元気になって、社会復帰する過程を助けることができます。それが救急救命医のやりがいですね」
時には当直勤務もこなすなど、医療の最前線で働く内田さん。大学時代の実習で見た救命医の姿にあこがれ、自らもその道を志した。集中治療室に入るような重症患者を診ることに加え、当直勤務こなすハードな日々を送っている。そんな毎日の中で彼女に笑顔が絶えないのは、トレーニングのおかげなのかもしれない。
当直勤務を終えた彼女がまっさきに向かうのは、なんと自宅ではなくジム。勤務後の朝9時頃から汗を流し、心身ともにリフレッシュするのが日課なのだという。
「トレーニングを始めたのは約1年前で、最初は産後太りの解消が目的でした。まずはトレーナーさんの指導通りにやってみたら、みるみる自分の体が変わっていったんです。それでどんどんトレーニングにはまっていきました」
筋トレを日課にすると、体型以外にも自身に変化が訪れた。心も体もエネルギッシュになり、今まで以上に時間を有効活用できるようになったのだ。それに食事管理などを通して「あたり前の幸せ」を強く感じられるようになったという。
「活力が出てきて、今までは家でゴロゴロしていた時間も、ちょっと子供とウォーキングしてみようかな、公園に行って遊んでみようかなと考えるようになりました。それに大会前は食事管理をしたりするので、そうではない時に家族で同じものを食べるとすごく幸せを感じます。トレーニングを通じて、生活にハリが出てきました」
内田さんの日常に好影響を与えたトレーニング。そしてそのエネルギーは、コンテストへの挑戦を通じて、大きな喜びへ変わることになる。大会出場のきっかけになったのは、行きつけのジムで見かけたある女性。あこがれるほど美ボディな女性が出場していたのが、後に挑戦を決めたSuper Body Contest(SBC)だったのだ。
「ジムでの出会いをきっかけに、SBCに興味を持ちました。その後、実際に大会を見に行ったりレッスンを受けたりする中で、ヘッドコーチ兼ディレクターの木下智愛さんからの細かなフィードバックなど、選手に対して親身になってくれる温かさを感じました。それに部門も新設されて、これからもっと飛躍しそうな大会だと思いました。そんな素敵なコンテストに私も出たいと思ったんです」
決意を胸に、普段のトレーニングをコンテスト仕様にギアチェンジ。食事管理にもトライし、引き締まったボディで初陣となる今年5月に開催された静岡大会の舞台に上がった。愛する家族が見守る舞台で、内田さんは堂々たるステージングを披露。その結果、CHARMクラスで見事、初出場・初優勝を成し遂げた。
「ステージから観客席にいる家族の顔がはっきり見えたんですけど、1位に自分の名前が呼ばれた時、娘や主人がすごく喜んでくれたんです。とくに娘は『ママ、1位すごいね!』と何度も言ってくれました。応援に来ていたジムのみなさんも声をかけてくださって、支えられているなと感動しました」
初優勝の勢いそのままに、8月には静岡県ボディビル・フィットネス連盟とSuper Body Contestによる同日開催のコンテスト「SBBF×SBC」に出場。そこでの結果は惜しくもSBC MONOKINI部門・CHARMクラス2位となったが、悔しさを糧に次の挑戦を見据えている。
「次は12月の日本大会(SBC FINAL)に出ようと思っています。トレーニング歴1年で優勝はハードルが高いかなと思いますが、それでも優勝を目指しながら、自分の中でやり切ったと思えるようにがんばります」
トレーニングを通して生活にハリが生まれ、大会出場という目標もできた。それは仕事の活力にもつながり、いい循環を生み出していくだろう。喜びと希望に満ちた、内田さんのトレーニングライフはまだ始まったばかりだ。
取材・文/森本雄大
写真/木村雄大