佐久間編集長のパーソナルトレーナー百人斬られ(仮)Vol.17 野上鉄夫 前編




VITUP!編集長・佐久間が全国のパーソナルトレーナーさんを巡っていく「パーソナルトレーナー百人斬られ(仮)」。今回登場するのはキャリア30年超を誇る野上鉄夫トレーナーです。高校時代に志したトレーナーの道に進み、ありとあらゆる形でトレーニング指導に携わってきた野上さんの経歴を紹介していきます。

初志貫徹。野上鉄夫トレーナーは高校時代にトレーナーを志し、以後30年以上の長きにわたって、その道を歩み続けてきました。

 

小学生時代は野球、中学校では陸上競技と運動に親しんできた野上さんは、高校時代に極真空手を習います。まったく未知の格闘技の世界に飛び込んで指導を受けた経験が、その後の人生を決めることになりました。

 

「ちょうど高校に入ったタイミングで沿線に極真空手の道場ができて、強さへの憧れから入門しました。そのときの師匠が僕のような初心者にもとても優しく教えてくれて、『人に運動を教えるのっていいな』と思って、そういう仕事に携わりたいと考えるようになりました」

 

目指す道を決めた野上さんは、トレーナーになるべく、東京YMCA社会体育専門学校に進み、2年間学んだのち、草加市のスポーツクラブ「スポーツPAL45」に就職。以後、30年以上の期間、インストラクターとして、指導にあたってきました。

 

「マシントレーニングを教えたり、スタジオレッスンをやったり、プールに入ったり、ゴルフを教えたり、スポーツクラブでやられることは全部やりました」

 

運動経験の有無、老若男女関係なく、多くの人に指導するにあたって、野上さんが大事にしていることは原点です。自身を「人に運動を教えたい」という気持ちにさせてくれた、空手の師匠の姿勢を見習い、それを指導にも生かしていると言います。

 

「空手の師匠はすごく強い人だったのですが、とにかく優しい人でした。新しくできた道場で全員が白帯なので、当然と言えば当然なのかもしれませんが、一人ひとりに寄り添う形で丁寧に教えてくれたんです。教えてもらって良かったと思った経験があるので、僕が人を教えるときも、その人の成り立ちを聞いて、寄り添った教え方をしていこうというのは、ずっと一貫してやってきたことです」

 

相手に寄り添うというのは、相手を理解すること。野上さんはトレーニングを受けにきた人のバックボーンを聞き、野球をやっていた人なら野球の動きにたとえたり、テニスをやってきた人ならラケットの持ち方にたとえたり、その人が一番わかりやすい言葉、教え方に変換して伝えることを心掛けています。そうすることで理解がしやすかったり、あるいは実際に競技をやっているアスリートであれば、単なる筋トレではなく、競技に直結するトレーニングになるからです。

ジムでのトレーニング指導だけでなく、野上さんはトレーニングやダイエット、コンディショニングに関する様々な情報をTwitter、ブログ、YouTubeといったSNSで発信しています。多くの人に情報を発信するのは、社会貢献のため。きっかけは2011年3月に発生した東日本大震災でした。

 

「2011年3月に東日本大震災があって多くの方が被災しました。その年の5月に母が亡くなって、それをきっかけに情報発信を始めたんです。自分が蓄積してきた知識をジムにいる数十人のお客様に発信するだけではなく、人間はいつ死ぬかわからないので、世間にぶちまけてしまおうと思って、Twitter、Facebook、mixiを同時に始めました。健康に関する情報を発信して、世間の人々が少しでも元気になってくれて、その元気が東北に還元されればいいなと思っていました」

 

情報発信を10年以上にわたって続けている原動力は社会貢献。そして継続のコツはトレーニングを継続するのと同じです。

 

「トレーニングを継続させたければ、何かの行動に紐づけるのが一番です。たとえば会社から帰る途中にジムに行くとか、家でやるなら歯磨きの後は腹筋とか、何かの行動に紐づけると習慣化してやりやすくなります。SNSの情報発信もそれと同じで、何かをやっと後、あるいはやる前……という感じで、行動に紐づけていれば継続はできます。だからパーソナルに来てくれるお客様にも、生活習慣を聞いて、『この時間の後がいいのでは』みたいに、行動に道に紐づけるような提案をさせていただいています」

 

トレーニング指導の道一筋で生きてきた野上さんは、今年4月に長年勤めたスポーツPAL45を退社。現在は数多くの芸能人やセレブが通うという某有名ジムに勤務。これまでのスポーツジムとは求められることに違いがあり、今でも勉強の日々を積み重ねています。

 

「現在のジムはトレーニングよりもケア、理学療法に近い部分が大きく、今までやってきたことを10とすると1くらいしか使えず、毎日勉強です。9くらいが新しいことなので、そこを極められたらもっと面白くなっていくのかなと思っています。まだまだ勉強することはあるのだなと日々感心しながらやっています」

 

豊富なキャリアを持ちながらもそれに満足することなく、学ぶ姿勢を持ち続ける野上さん。目の前のことに全力で取り組みながら、将来的には違うチャレンジも考えています。

 

「まずは目の前のことに一生懸命取り組んで、学べるものを学べるだけ学びたい。いつになるかはわかりませんが、介護やシルバーフィットネスというのも視野に入れています。スタジオレッスンでは機能回復系のレッスンやストレッチもやってきたので、高齢者の方にそうしたことを教えて元気になってもらうのもいいかなと考えています」

 

好きで始めた仕事をもっと好きになるためには日々勉強。野上さんの初志貫徹の道は、この先も真っすぐ続いていきます。

 

というわけで、今回はここまで。次回は野上さん流の「相手に寄り添うトレーニング」を実際に受けてみます。

 

 

【トレーナーPROFILE】
野上鉄夫(のがみ・てつお)
東京YMCA社会体育専門学校を経て、草加のスポーツクラブ「スポーツPAL45」に勤務。フィットネスインストラクターとして、約30年間で1万人以上の方に目的別運動プログラムを作成してきた。2022年に同社を離れ、現在は某有名ジムでパーソナルトレーナーを務める。著書「史上最高のストレッチ」(新星出版社)
★資格=日本トレーニング指導者協会 認定指導員・健康運動指導士・NSCA-CPTパーソナルトレーナー

 

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佐久間一彦(さくま・かずひこ)
1975年8月27日、神奈川県出身。学生時代はレスリング選手として活躍し、高校日本代表選出、全日本大学選手権準優勝などの実績を残す。青山学院大学卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。2007年~2010年まで「週刊プロレス」の編集長を務める。2010年にライトハウスに入社。スポーツジャーナリストとして数多くのプロスポーツ選手、オリンピアン、パラリンピアンの取材を手がける。