オーストラリアに拠点を置くスタートアップ「Lifeform AI」社が開発した、AIトレーナーによるトレーニングシステム「Future Gym System」のデモンストレーションが都内で行なわれました。体験編に続き、ここではシステム開発者の、カルロス・イシャックさんとカティア・ボウラモウンさんのインタビューをお届け。システム開発の意図や、AIトレーナーによるフィットネス界の未来について語ってもらいました。
AIがなんでも教えてくれるような状況をつくりたい
――実際にAIトレーナーの指導を受けたところ、トレーニングの評価が点数で表示されていました。あれは、どのようにして評価しているのですか。
カルロス トレーニングで使用したマットにはたくさんのセンサーが入っており、リアルタイムで重心や姿勢、バランス、足の重心の細かな移動や、運動する際の加速などを計測しています。そうして計測した結果と、数十名のプロのトレーナーの方から収集した情報でつくり上げたAIのマスターコーチを比較して評価しています。システム内で提供するおすすめのトレーニングに関しても、プロのトレーナーや理学療法士の知見を基に、科学的な知見からメニューが選ばれています。
――このシステムを開発された経緯を教えてください。
カルロス もともと何かのスキル、やり方を学ぶことに興味があったのですが、コロナ禍の影響でそういった何かを学ぶことが少し難しくなってしまいました。YouTubeなどに投稿されている動画を見て学んだとしても、「何が正しい」「どこが良くなかった」というフィードバックを受けることができませんよね。そういった状況に課題を感じて、ユーザーと提供者のギャップを埋めるためにAIを使うことができないかと考えたことがきっかけです。
――AIから教えてもらうスキルとして、トレーニングを選んだ理由は?
カティア ジムでパーソナルトレーニングを受けるという市場が確実に拡大しているという背景があります。その中で、近年はとくにAIやセンサーの技術が発展していっているので、それを使って体の使い方やスキルを学べるのではないかと考えました。
カルロス 今回はトレーニングですが、それに限らず万能なAIをつくり上げていきたいと思っています。スポーツを一つに絞るのではなく、AIがなんでも教えてくれるような状況をつくり上げていきたいです。
トレーニング初心者とパーソナルトレーナーをつなぐ架け橋に
――トレーニングの評価が点数で出されるので、より成長がわかりやすくなっていると思います。これならモチベーションを保ちやすいと感じました。
カティア ありがとうございます。これは何回もトレーニングすることによってどんどん記録がたまっていくので、それを積み上げていくことで達成感も得られますし、今後実装予定のゲーム機能などを通じてモチベーションを高めていくことも狙っています。
カルロス このAIトレーナーは、初心者にもやさしいということを重視しています。トレーニングが終わると、すぐにAIトレーナーからフィードバックをもらえるというところも初心者のためになることですし、パーソナルトレーニングを受けに行くことに対して敷居が高いと感じている方でも、AIトレーナーならいつでもどこでもフィードバックをもらえます。パーソナルトレーナーとトレーニング初心者の架け橋になれたらと思っています。
――「いつでもどこでも」ということは、今後追加される種目も自宅でできるようなものが追加されていくのでしょうか。
カティア 今日体験いただいたマットは非常に簡単なデバイスであり、どこにでも置けるので、家庭に展開することも考えています。私たちはFuture Gym Systemを世界的なプラットフォームにしたいと思っていて、そのためにもマットを使わずともスマホだけでAIが同じシステムを使って判断してくれるアプリを開発中です。
カルロス Future Gym Systemを世界的なプラットフォームにすることを目指す上で、とくに三つの点を重視しています。一つ目は、いつでもどこでも試せるようにしたいということ。二つ目は、先ほどもお話しした初心者にもやさしいこと。三つ目は、効率的に学べるようにすることです。
――最後に、今後AIトレーナーを使って目指していきたいものを教えてください。
カティア AIも含めたFuture Gym Systemのセンサーテクノロジーは、センサーの位置を動かしたり器具に取り付けたりすることで、すぐにカスタマイズすることができます。今回は日本で行なっているので、トレーニング内容も日本に合うように調整していますが、目指すのは世界的なプラットフォームになること。日本と海外、ジムごとのニーズの違いに対応できることは、AIも含めた弊社のセンサーテクノロジーの強みです。
カルロス 究極の目標は、スキルをダウンロードできるようにすることも目指しています。どんな種目でも簡単に、スマホやパソコンにアプリをダウンロードするかのように学べることが究極的な目標です。少し壮大なたとえになってしまいましたが、誰もが簡単にできるように調整して、どこでもスキルを学べるようにすることを目指しています。