前回は、トレーニーやアスリート向けに減量の観点からみたサウナについて、日本サウナ学会の代表理事・加藤容崇さんに教えてもらいました。後編の今回は、より多くの人が気になるであろう、トレーニングや筋肥大の観点がテーマ。サウナは筋肉とって良いものなのか、話を聞きました。
サウナに入ると筋肥大しにくくなる?
――前回、サウナは痩せやすい体づくりに効果はあるという話を聞きました。とはいえトレーニーたちは、痩せるだけではなく、筋肉をつける目的を持ってトレーニングに励んでいます。その点で、サウナを利用することのメリットはありますか。
まず、サウナには疲労回復やリラックス効果があるので、その点はメリットの一つであると言えます。ある論文では、トレーニングの前にサウナに入ることによって、その後の疲労物質の低下が速くなったり、筋肉痛が和らいだりするという報告もあります。
――なるほど。では、筋肉の成長という点についてはいかがですか。
じつはサウナ後の運動に関して、筋肥大が抑えられてしまうという報告もあります。マラソンのような低負荷・長時間の運動であれば、運動前に5~10分程度サウナに入ることで、血圧の上昇が抑えられるなどの恩恵もあります。逆に、筋トレのような高負荷・短時間の運動では筋肥大が抑えられてしまう可能性があります。必ずそうとは言い切れないですし、先ほどお話しした疲労回復というメリットもあるので、自分の体と相談しながら入浴していくのが良いと思います。
――トレーニーの中にはボディビルなどのコンテストに出場する選手もいます。サウナにはむくみがとれる効果もあるとのことなので、その点もメリットの一つかもしれません。
そうですね。そもそもむくみというのは血流の低下によって起こるものだと思うので、サウナに入って全身の血流がよくなると解消されます。他にも、加齢や喫煙などによって毛細血管の数が減ってくるのですが、サウナに入ると血流が良くなることで毛細血管の密度が20%ほど高まるので、皮膚の健康のためにもいいかもしれません。サウナから出てきた人が元気そうに見えるのは、その効果で血色良く見えたり肌にハリがでたりするからです。
――ここまでお話をいただき、トレーニーにとってはメリット・デメリットの両面はありつつも、サウナはやはり健康には良いものだというのがよくわかりました。
その通りです。フィンランドの研究では、週に4回以上サウナに入った人は、心筋梗塞や認知症のリスクが下がることが報告されていますし、軽度の抑うつ状態の方がサウナに入ることで少し楽になるという報告もあります。週4回だと多く感じるかもしれませんが、実際は週に2回ほどでも効果はあると思います。単純に気持ちいいものですし、健康面のメリットはそのついでくらいに考えて気楽な感じで入ってほしいですね。みなさんもぜひサウナを試してみてください。
加藤容崇(かとう・やすたか)
群馬県出身。北海道大学医学部医学科卒。
医師・医学博士(病理学専攻)。北海道大学医学部にて特任助教として勤務したのち渡米。ハーバード大学医学部附属病院に勤務。膵臓癌の創薬に関する研究を行なう。帰国後、慶應義塾大学医学部腫瘍センターゲノム医療ユニット、北斗病院腫瘍医学研究所に勤務し、癌ゲノム医療を行なっている。加速する医療費増加を目の当たりにし予防医療の重要性を認識。予防医療としてのサウナを研究するため日本サウナ学会を設立し、予防医療を推進するため株式会社100plusを設立。
著書に『医者が教えるサウナの教科書』(ダイヤモンド社)があり、ホンマでっかTV(フジテレビ)、文藝春秋、などメディア掲載多数。医療漫画『フラジャイル』(講談社)の医療監修も務める。
取材・文/シュー・ハヤシ