耐え忍ぶ美学と新人力士の苦悩にフランス人映像作家が迫る




いま、相撲がエンタメトレンドワードの中心となっている。大手動画配信サービスNETFLIXはオリジナルドラマシリーズとして、5月4日(木)より大相撲を題材にした作品「サンクチュアリ-聖域-」を配信開始。伝統や格式を重んじる大相撲の世界で、元ヤンキーの新人力士が角界のトップにのぼり詰めるべく、番狂わせを起こしながら成長していくという内容だ。

相撲界の裏側に迫るギリギリの内容や、実写とVFXを巧みに使い分けたダイナミックな取組シーンが話題を呼び、5月16日(火)現在では、TV番組TOP10内で2位につけている要注目作品だ。

現在日本で配信中の相撲を題材にした映像作品はこれだけではない。アジアを舞台にした多くのドキュメンタリーを配信している「アジアンドキュメンタリーズ」では、相撲界という伝統社会で生きる若者を、フランスの独自の目線で切り取ったドキュメンタリー作品「辛抱」が配信中となっている。

2009年に制作された本作は、「辛抱すればいつか花開く」という日本的な考え方に関心を持ったフランス人映像作家のジル・クロンさんが、相撲界で耐え忍ぶ若者の姿を撮影した作品だ。


【アジアンドキュメンタリーズ公式YouTubeチャンネルより】

フォーカスしたのは、2023年現在も現役力士として活躍する元幕内力士の旭大星こと大串拓也さんだ。高校卒業後、周りの勧めもあり大島部屋に入門した大串さんは、兄弟子たちとの共同生活の中で起きる、抗えない上下関係や厳しい稽古、同期入門のライバルたちとの体格差など、想像を超えたつらい現実に直面した。

「逃げ出したい」と思いながらも、入門時に父親からかけられた「帰ってくる場所はないので覚悟してやれ」という言葉を胸に辛抱し続けた大串さんは、初土俵から二場所目で6勝1敗の成績を残す。しかし、その後は成績が上向かず、延々と続く厳しい稽古や規則を前に、次第にモチベーションを保てなくなり、姉や旧友に苦悩を吐露した。彼の行く先に光は見えるのか、新人力士の半年間の生活を追う。

一人の新人力士の生活や苦悩に注目し、「サンクチュアリ-聖域-」とはまた別の視点で、角界の伝統や格式を描いた本作は、月額見放題プラン(月額990円)、または単品購入(495円)で視聴可能だ。

★作品の視聴・詳細はこちらから

文/中野皓太
写真提供/アジアンドキュメンタリーズ