【渡辺華奈のデートするならジムがいい 第67回】人の失敗を願う自分はサイテーです(笑)




MMAは競技の歴史が浅いため、「最初からMMA一本でやっていました」という選手は、ほとんどいないと思います。柔道やレスリング、ボクシングなど他の格闘技からの転身が多く、他にも格闘技以外のスポーツから転身している選手もいます。いろいろなスポーツをやっていた人に話を聞くと、競技ごとの違いが面白いなと思うことがあります。

 

同じジム、FIGHTER’S FLOWの上田貴央さんと渋谷カズキさんは、体操競技の出身です。2人の話を聞いて驚いたのは、「体操選手は絶叫マシンが苦手」という話です。自分でグルグル回っているのに、なぜ?と思いますよね。体操選手は空中での感覚が鋭すぎて、逆に怖いみたいです。自分で動けなくて、マシンに動かされて回る感覚に恐怖を感じるそうです。

 

柔道家の場合、そういう苦手なことはありませんが、“柔道家あるある”はあります。それは「立ち止まっているときに足払いしがち」です。たとえば、信号待ちをしているときなど、普通に立っていられなくて、自然と足払いの動きをしています(笑)。ゴルフ好きの人が傘を持っているときに素振りをしてしまう……みたいな習慣だと思います。

 

アスリートの運動の得手不得手も面白いなと思います。その競技では文句なしにすごくても、意外なほど、他の競技はまったくできないという人もいます。球技はまったくダメだったり、走るのが苦手だったりという話はよく聞きます。自分は比較的、柔道以外のスポーツもできるほうだと思います。球技も大体できますし、体育の授業に入ってくる運動は一通りできました。ただ、リズム感がないので、ダンスはダメですね。踊りません! やるのはパワーダンス!

 

ポールダンスに挑戦したときの写真

 

自分でスポーツをやるのは好きですが、最近はいろいろなスポーツに詳しくなりたいなと思っています。スポーツ漫画では『スラムダンク』が好きで、映画も2回観に行きました。その影響もあってバスケットボールに詳しくなりたいです。それ以外でも今は野球やサッカーのシーズンですし、冬はラグビーもありますし、いろいろなスポーツを楽しめるようになったら、きっと人生がもっと楽しくなると思っています。ただ、自分は見る集中力がなくて(苦笑)、野球やサッカーは長く感じてしまうこともあるので、バスケットボールが一番いいです。もっと言うなら相撲がいいかもしれません。

 

いろいろなスポーツを見るのは楽しいので、読者の皆さんには、ぜひ格闘技も一度見てほしいなと思います。格闘技は寝技の技術がわかりづらく、ハードルが高い部分もあるかもしれません。少しだけでも知識を入れてから見ると、より楽しむことができるはずです。また、試合だけでなく、そこに至るまでの流れもあります。昨年の那須川天心選手と武尊選手の試合も、実現までの流れを知っていれば、普通に見るよりもさらに楽しかったと思います。そういう部分も、格闘技を見るときの楽しみ方かなと思います。

 

冒頭に競技ごとの違いという話を書きましたが、体操競技出身の上田さんや渋谷さんと、自分はまったく違います。体操やクライミングなどは、競技特性なのか、成功をみんなで喜ぶような空気があって、他の選手がうまくいったときには、心から「ナイス!」と言えるような感じだと思います。だけど、柔道やレスリングは対人競技のせいか、人の成功を喜ぶ感覚がない気がします。試合はトーナメントなので、相性の悪い選手が他の選手に負けると、自分の優勝のチャンスが大きくなることもあって、「負けろ!」と思って見ていることもありました(笑)。

 

上田さんと渋谷さんに「“失敗しろ”とか思わないんですか?」と聞いたら、真顔で「そんなこと思うわけないだろ。そんな奴いないよ」と返されてしまいました。「負けろ」とか「失敗しろ」と思うのは、柔道あるあるではなくて、自分だけなのでしょうか(笑)。人の失敗を願うなんてサイテーですね(笑)。こんな自分のことはともかく、取り組んできたスポーツによる、考え方の違いもすごく面白いなと思っています。

 

 

 

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渡辺華奈(わたなべ・かな)
1988年8月21日、東京都出身。7歳から柔道を始め、高校ではインターハイ2位、アジアジュニア優勝などの実績を残し、東海大進学後、1年時に全日本ジュニア優勝を飾る。卒業後、JR東日本へ入社し、オリンピックを目指して競技を続けた。2017年に同社を退社し、格闘家に転身。同年12月3日にデビューを勝利で飾ると29日にはRIZIN初参戦で実力者杉山しずかに勝利。2021年よりアメリカ格闘技団体「ベラトール」に参戦している。所属はFIGHTER’S FLOW