「“私が”変わらずやり続けるだけ」矢印を自分に向け続ける信念が起こした確信のアップセット




「第2位、清水恵理子」
その瞬間、会場はこの日一番の驚きに包まれたといってもいいだろう。そのコールの余韻が残る中、“ビックリ”という言葉以外では言い表すことができない表情でステージに残っていたのが荻島順子だ。

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「とにかく、驚きました。今はまだ心の整理が今はまだ着いてないのですが、やれることをやっていこうと思って今日までやってきてここにきたので、優勝できてうれしく思います」

ステージを終えしばらく経ち、会場のロビーでそう話した荻島。この日に行なわれた「第27回日本クラス別選手権」は、身長別の女子フィジーク日本一決定戦であり、10月に開催される無差別級の「女子日本フィジーク選手権」の前哨戦とも言える戦いである。この日も、昨年日本4位の荻島も含めたトップ5全員が各階級に分かれて出場。彼女がエントリーした158cm以下級においては、2021、2022年と2年連続日本2位の清水が下馬評では優勝候補であり、その牙城を崩すのは簡単ではないと、彼女自身も、会場にいた多くの観客もそう思っていただろう。それゆえに、優勝決定のシーンでは驚きの声が漏れたのであった。

とはいえ、そう思ってしまうのは、“ボディビル競技で番狂わせは起きにくい”という固定概念なのかもしれない。実際にステージ上で見せたバリバリに仕上がった肉体美は優勝に相応しいもので、決勝審査の審査表を見ても7人の審査員中5人が彼女に1位票を入れており、完勝と言っても過言ではないだろう。

10月の日本選手権、清水を超えた今、日本のトップ3もいよいよ現実味を帯びてきた。競技キャリアはまだ3年目だが、ボディフィットネスから転向2年目の阪森香理(昨年2位)、そして女子フィジーク絶対女王であり荻島にとっては師匠である澤田めぐみ(昨年優勝、2連覇中)ら強力なライバルと張り合いながらも、表彰台は十分に射程圏内だ。

「日本選手権に向けては……変わらずに、今の気持ちのままやり続けるだけです。プレッシャーはなるべく感じないように、自分をコントロールしてがんばろうと思います。これまで通りのことを続けて、変わらずに、自分ができることを精一杯やってステージに立つだけ。そうすれば、結果は自然とついてくると思います」

こつこつと、常に自分に矢印を向けながら、彼女は一歩ずつ前へ前へと進んでいく。

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