未来の日本を担うかもしれない美筋女子たちの素顔に迫る『美筋女子TIME』。今回のゲストは元祖グラレスラーとして一世を風靡した愛川ゆず季さんだ。今も40歳にしてBEST BODY JAPAN日本大会2022でクラス別のグランプリを獲得するなど、見事な美ボディを披露している彼女。今年の同大会では熱戦の末にフィットネスモデル部門レディースクラス(35歳~49歳)で4位となったが、衰え知らずの肉体美で観客を虜にした。
グラビア時代から雑誌の表紙を飾るなど活躍を見せ、人気低迷後に“崖っぷちアイドル”として挑んだプロレスでも一躍スター選手となった彼女。ここでは、そんな彼女の人生を振り返る。
【動画】崖っぷちアイドルからプロレスラーへ。愛川さんが激動の人生を語る
デビュー当初は、所属事務所初の巨乳グラドルだった。「気付いたら雑誌の表紙になれてた。やったー、だけどとくに目標もなくてという日々でした」と語るように、当時は衣装や撮影について主体的に考えることは一切なし。周囲の手配のままに撮影をこなす日々を回想し「まるでお人形のようだった」という。
大人気を博したグラビア時代だが、若手の台頭もあり徐々に仕事が減少するように。すると事務所から「プロレスをやるか引退するか」という究極の2択を迫られることになった。断ることができない状況で「ここなら一番になれるかもしれない」と光明を見出した愛川さんは、“崖っぷちアイドル”としてプロレスデビューを決意する。
「その時に結婚しようというのもやりたいこともなかったですし、当時プロレスラーで輝いている人がいなかったように私には見えたんです。この中だったら私は一番になれるかもしれないと思って、『じゃあやります』と言って挑戦を決めました」
柔軟な体やテコンドーの経験など素質があった彼女。しかし、当時はプロレスファンからの目は厳しく「リングをなめるな」いう声もあった。しかし、デビュー戦からアイドルの印象を覆すハードな戦いを見せ、一気にファンを獲得していく愛川さん。自らの意思で衣装やプロデュースを決めるプロレスは想像以上にやりがいがあり、「初めて人間になったような気がしました」とグラビア時代の受け身だった自分から脱皮をはたした。
当時よく会場となっていた新木場ファーストリングでは、愛川さんお決まりの待機スポットだったトイレ横に長蛇の列ができる人気ぶり。ファンからもらった印象に残っているものを訪ねると「(引退の時に)婚姻届けを3枚いただきました」と照れながら答えた。
そんな彼女の引退試合は両国国議場。多くのファンや家族、友人が駆け付ける中、10カウントゴングを聞くと「まるでお葬式をしているような感覚でした」と喪失感があった。「私以外にここまでがんばっている人はいないって思った瞬間もあったし、人生でここが一番輝いている瞬間なんだろうなって感じたこともあったので」とまさに人気絶頂を経験したからこそ、引退時の心の揺れも大きかったのだろう。
2013年の引退を経て一般男性と結婚し、子宝にも恵まれる幸せな結婚生活が始まった。女性にとって大きなライフステージの変化を迎える中だったが、そこで悩ましい事態に直面する。子育てに追われるあまり自分の時間が取れないだけでなく、産後太りによる体型の乱れで自信がなくなっていったのだ。
「出産した女性の方はみんな感じることだと思うんですけど、自分の時間がなくなるんですよね。だけど旦那さんは好きなことをやっているとか、そういうところにストレスを感じることもありました。仕事をしたいと思っても時間はないし、表に出られるような体や顔をしていないし……。みんなそうだと思うんですけど、そこで何とかしなきゃっていう気持ちが芽生えたのかもしれないです」
悶々とする日々を過ごす中、彼女の中で“運動がしたい”という思いが湧きあがった。そこからはパーソナルトレーナーだった夫に習う形でトレーニングをスタート。現役時代から衰えたと思われた体型はみるみる引き締まっていき、V字曲線を描くごとく彼女の気持ちも上を向いていった(後編に続く)。
【愛川さんが思いを語った動画はこちらから】
文/森本雄大
写真提供/愛川ゆず季