他にも、バックエクステンションの下半身バージョンであるリバースハイパー(エクステンション)、片脚で行うブルガリアンスクワット、スクワットやベンチプレスとともに「ビッグスリー」の一つに数えられるデッドリフトなど、ヒップアップに効く種目はたくさんあります。
まずは自分のレベルや好みに合ったメニューをいくつかピックアップし、続けてみてください。お尻はもともと筋肉量がありますし、トレーニングに対する反応も悪くないので、ボリュームをアップさせることはそれほど難しくないと思います。
逆に、お尻を小さくしたいという人もいるかもしれません。その場合、「筋肉を落とす」ことを考えるのは間違いで、「余分な脂肪をとる」と考えなければいけません。というのも、そもそも女性はお尻についている脂肪が多いので、筋肉を失ってしまうとどうしようもなくたるんでしまう可能性が高いからです。
むしろ前述したヒップリフトやヒップエクステンションといった力学的ストレスが比較的小さな種目で、高回数を繰り返すようにするといいでしょう。低負荷・高回数で大きくたくさん動かすタイプのトレーニングを行なうことで、それなりに筋肉をつけながら脂肪を減らしていくことが可能です。
私は研究者なので正確な表現をしておくと、お尻をよく動かすことでお尻の脂肪を選択的に落としていけるかと言うと、現時点ではYES or NO。筋肉を動かすことでマイオカインという物質が分泌されれば周辺の脂肪は落ちやすくなるはずですが、それはまだ実験的には立証されていません。メカニズム的にはそうなるはずですし、経験的にもそうなると言い切りたいところですが、まだ教科書に載るようなレベルの証明はなされていないのが現状です。
いずれにせよ、お尻だけの脂肪を落とそうとするのは効率的にもよくありません。お尻の筋トレをしながら、全身の脂肪を落とすエアロビックな運動やカロリーコントロールを組み合わせたほうが、ずっと効果はあると思います。
※本記事は2017年に公開されたコラムを再編集したものです。
1955年、東京都出身。東京大学名誉教授。理学博士。専門は身体運動科学、筋生理学、トレーニング科学。ボディビルダーとしてミスター日本優勝(2度)、ミスターアジア優勝、世界選手権3位の実績を持ち、研究者としても数多くの書籍やテレビ出演で知られる「筋肉博士」。トレーニングの方法論はもちろん、健康、アンチエイジング、スポーツなどの分野でも、わかりやすい解説で長年にわたり活躍。『スロトレ』(高橋書店)、『筋肉まるわかり大事典』(ベースボール・マガジン社)、『一生太らない体のつくり方』(エクスナレッジ)など、世間をにぎわせた著作は多数。