「スポーツGYMドリーム」の最寄りである横芝駅に電車がやってくるのは、概ね1時間に1本。HPの「アクセス」のページを覗くと「有酸素運動の一環で来る場合」と記載があるように、駅からは徒歩でたっぷり30分を要する。周りは畑に囲まれる、千葉県の田舎町のジムのオーナーを務めているのが椎名拓也だ。
【インタビュー動画】地元の旭市やジムへの思い、フリーポーズへのこだわりを語る椎名
大変なのはこれからの確定申告…(笑)
前オーナーである成田晴夫氏の死後、昨年から正式にその立場を引き継ぎ、23歳という若さでオーナーとなった。
「急に一人でというわけではなく、何年か前からある程度は任されていたので、そのときと今もやることはあんまり変わらないですね。ジムが安定して維持できていれば、それでいいかなと」
現在はもともと携わっていたプロテイン製造の職を週に1回やりつつ、その他の曜日は毎日ジムで勤務。「会員さん同士のつながりが昔から強いジムなので、やっぱり雰囲気の良いジムでありたいですね。居心地の良いジムをつくりたいと思っています」と、ただトレーニングの場を提供するだけではなく、ポージング練習会を開催するなど、地元のトレーニーをつなぐスポットともなっている。
オーナーという立場は決して楽なものではないだろうが、「大変なことは…これからの確定申告くらいじゃないですか(笑)」とケロり。ボディビルダーとして戦いの舞台では“狂気”の姿を見せるが、一歩ステージを降りると、スローでふんわり。彼の人柄が、ジムの温かさにつながっているのだろう。
ミステリー椎名でいたい
昨年はジュラシックカップで3位入賞後、そのステージングはもちろん、彼の独特の雰囲気も相まってボディビル界隈では注目度が急上昇。もともとYouTubeチャンネル「美椎名(うつくしいな)」で不定期に投稿をしていたが、昨年末から年始にかけて、サイヤマングレート、芳賀セブン、山崎恭介ら筋肉系YouTuberが続々とコラボを持ち掛けたあたり、彼の人気度合いを物語っている。
ただ一方で、「ステージの姿を見てくれた人に『全然違う人じゃん』って思われるのも嫌で…」と、迷いながらの投稿が続いているとも話す。
「実は、YouTubeをやる、やらないの葛藤がすごいんですよ。やりたい自分とやりたくない自分がいて、二重人格のようで(笑)。ある程度は今後もいろいろな自分を見せていくと思うんですけど、そこそこのところまでいったら、パッといなくなるかもしれません。有名になりたいけど、陰で人目につきたくないみたいな気持ちもあるので。どっちも満たすとなると、有名になってパッと消えるのが一番しっくりくるのかな」
大会での凄まじいボディとは真反対のゆるふわな雰囲気で、編集も独特さがありファンも多いだけに、続けてほしいと願う人は多いだろうがはたして。「ミステリー椎名はミステリーのままでいたい…」とは言いつつ、最近は気が付けば一気に距離が縮まった(?)山崎恭介との絡みも増えており、いったいどうなるのか…。
(続く)
【PROFILE】
椎名拓也(しいな・たくや)
1999年3月24日生、千葉県旭市出身。千葉県ボディビル・フィットネス連盟理事、スポーツGYMドリーム(千葉県山武郡横芝光町)のオーナーを務める。2016年の高校生選手権でボディビルデビュー。YouTubeチャンネル「美椎名(うつくしいな)」を運営中。
▼主な戦績
2016年 全国高校生ボディビル選手権 5位
2021年 日本ジュニアボディビル選手権 2位、マッスルゲート静岡大会 ボディビルジュニア&75kg以下級 優勝、クラシックフィジーク175cm以下級 優勝
2022年 千葉県ボディビル選手権 優勝、東日本ボディビル選手権 優勝、関東ボディビル選手権 優勝
2023年 ジュラシックカップ 3位&合戸賞獲得
取材・文/木村雄大