世界で戦うパワーリフターは元・吹部女子 130kg拳上の菊地雅「突き進む勇気を持てるようになった」




東京・ベルサール飯田橋ファーストにて『第36回全日本ベンチプレス選手権大会』が開催された(2/17~2/18)。今大会は専用のベンチプレスシャツを着用して行なうフルギアベンチプレスの全国大会であり、東京での開催は約8年ぶりとなった。

トップ選手が多数集結する中、女子52kg級で活躍を見せたのが菊地雅さんだ。パワーリフティングで2019年に世界選手権で3冠達成(世界ジュニアパワーリフティング選手権、世界ジュニアベンチプレス選手権、世界ジュニアクラシックベンチプレス選手権)。シングルベンチでも数々の実績を残し、2023年の全日本選手権、世界選手権(ともに52kg級)も制している菊地さん。大会後の彼女に胸中を聞いた。

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――今大会を終えての率直なご感想をお願いします。

「今回は第2試技まででしっかり優勝を決めて、第3試技は自己ベストタイの記録に挑戦しようと思っていました。5月の世界大会を見据えた記録を獲りたかったので、第1で105kg、第2で115kg、第3は130kgと自分のプラン通りいけたのでよかったです」

――ベンチプレスにはいつ頃から取り組んでいるのですか。

「高校生の頃なので、16歳ですね。もともと吹奏楽をやっていて、飽きてやめて何をやろうかなと思っていた時、仲がいい先輩がパワーリフティング部にいてその流れで始めました。最初はマネージャーで入ったんですけど、その時の部長さんに勧められて。一試合だけという話のはずがやめるタイミングを失ってしまいました(笑)。その時は3種のパワーリフティングが専門でした」

――かなりの方向転換でしたね。重量を上手く扱えましたか?

「一番最初の試合はベンチプレス27.5kgとかで、普通に誰でも通るような道でした。伸びたきっかけは3種をやっていた時に腰を痛めて、デッドリフトやスクワットを休んだ時ですね。ベンチを集中的にやっていたら楽しさに気づいて、パワーリフティング3種目の構成的に『ベンチプレスが強い選手』という構成ができてきました。それからパワーリフティングのほうで世界選手権を目指しつつ、ベンチプレスも極めたいなと思ったので、ここ4年くらいは3種に出ないでずっとベンチだけをやっています」

――一気に世界レベルまで駆け上がったわけですが、上達のコツは?

「上手い人の試技を見て研究しています。重量級のほうがインパクトの強さなどテクニカルな技術以外も吸収できると感じているので、自分の階級よりも上の階級の試技を見て、『これは自分に合うな』というポイントを見つけて取り入れるようにしています。それで成長のスピードが上がりましたね」

――競技転向してからご自身の心の面で変化はありましたか。

「吹奏楽って基本みんなでやるものですけど、パワーリフティングやベンチプレスは個人競技なので、自分のペースで突き進めるのは自分の性格に合っていると思いました。自分が『こうだ!』と思ったことに対して覚悟を決めて、突き進む勇気を持てるようになったと思います」

――それはどんな時に感じるのでしょうか?

「普通だったら第一試技から第三試技まで同じベンチシャツを着るんですけど、今大会は戦略として急遽第一試技が終わった時点で一段階きついベンチシャツに変えたんですよ。それでアップ場に行ってもう一回アップをやり直しました。次の試技まで20分間の中でアップをやり直すのは上手くはまるかわからないし体力的にもロスなので、裏目に出るリスクも考えて普通だとやらないことです。セコンドに相談しながら、その時その時の自分の感覚を信じてイレギュラーな戦略を貫いて勝ち切れるようになったことですかね」

――最後に今後の目標を教えてください。

「去年、世界選手権(52kg級フルギア)で優勝できたんですけど、一回だとまぐれの可能性もあると思うので、連覇して絶対的なチャンピオンになりたいです。今年はまず世界での連覇を目標にしつつ、今の自己ベストが130kgなので、4年ぶりに記録を更新できるように5月の世界大会に向けてがんばりたいと思います」

取材・文/森本雄大
写真提供/菊地雅