人気スポーツエンターテインメント番組・SASUKEの女性版「KUNOICHI」(1月13日放送)にて、見事完全制覇を成し遂げた大嶋あやのさん。そんな彼女は2024年10月、SASUKEがルーツとなった障害物レース「オブスタクルスポーツ」で初代日本チャンピオンに輝いている。
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オブスタクルスポーツは「走る」「跳ぶ」「登る」「つかむ」など多彩な動きを通じて、アスリートが自分自身の肉体的・精神的な可能性に挑戦する競技。さまざまな障害への対応力は必須であり、ベストな体勢で力発揮ができないことも前提だ。そんな中でもタイムを落とさず、ゴールを目指すだけのフィジカルが必要となる。
「脚を開いた状態からさらに踏ん張るとか、筋肉にテンションがかかった状態から力を発揮しないといけないシーンが多くあります。その瞬間にケガが起こりやすいので、筋肉や腱の柔軟性は必要だと思います。いきなり強い負荷やテンションがかかった時に筋肉が耐えられるか。そういう柔軟性を培っておかないと、オブスタクルスポーツではケガにつながると思います」
“柔軟性”と言うと、開脚やブリッジなどを想像するかもしれない。大嶋さん自身、幼少期は新体操に取り組んでいたこともあり、そういった柔軟性はもともと高いものを持っていた。しかし、SASUKEやオブスタクルスポーツと関わる中でコンディショニングに対する考え方は変わってきた。
「柔らかすぎるのがマイナスに働く場合があるんです。たとえば踏ん張った時に股関節の可動域が広すぎると腹圧が抜けてしまったり、力が十分に入らなくなってしまうことがあります。硬いパスタの束を立てた状態で上から落とすと地面に反発して跳ねますけど、茹でたパスタは反発しませんよね。同じ感覚が体でもあって、股関節で踏ん張れないぶん腰が反ってしまったり、そういうことが何度かありました」
また、クライミング競技を始めたての頃には、前腕が張っていたためストレッチを念入りに行なったところ、強くグリップを引いた際に腕の骨がずれるような感覚も味わった。硬くてもいけないが、柔らかすぎてもいけない。ケガを防止しながら最適なパフォーマンスを発揮できる柔軟性をつねに模索してきた。
急激なテンションや負荷に耐えられる柔軟性を獲得するため、じっくり筋肉を伸ばす静的ストレッチではなく、動きながら行なう動的ストレッチをメインで行なう。
「伸ばすだけではなくて、縮む動きもセットで考えるようにしていますね。ストレッチする時は意識が必要だと思っていて、たとえば立ち姿勢から両脚を前後に開いて、腰を落としてストレッチする時に、ただ可動域を出すのか、伸びに対して筋肉が耐えられるかどうかを意識して行なうのか、では質がまったく変わってくると思います」
一番意識して伸ばすのは骨盤まわり。可動域を十分に取った上で力を入れる、関節をホールドするといった意識を大切にしている。
なお、静的ストレッチは競技前には行なわないが、競技後のケアとして実施。使った部位をストレッチして溜まった疲労物質を除去し、良好なコンディションを保てるように配慮している。ちなみにクライミング(スピード、ボルダリング)では可動域の広さも必要になるため、骨盤まわり、胸筋、背筋など競技に影響が大きい部分は主に運動後の静的ストレッチで可動域獲得を目指す。
自身の身体的特性や競技の特徴を分析し、それをトレーニングやコンディショニングに落とし込んでいるからこそ、長年にわたってトップ戦線を走り続けることができるのだろう。