立ち仕事が地獄と化す「足底腱膜炎」を患ったステーキ屋店主“ミスターデンジャー”が闘い続ける理由




元プロレスラー・松永光弘を襲ったのは『足底腱膜炎』だった。

かかととつま先の間に弦のように張っている足底腱膜は、衝撃吸収をしているとされていて、ここが損傷することで起こるのが足底腱膜炎。軽度であれば自然に治癒するケースも多いというが、悪化してしまうとかかとの部分に尋常ではない痛みが走るようになってしまう。

【写真】厨房で闘い続ける元レスラー・松永光弘のアザーフォト

「なんとなく足に違和感はあったんですけど、さほど気にもとめないでいたら、ある日、急にかかとが痛くなって。それでも立っていないと仕事にならないので耐えていたんですが、日に日に痛みが大きくなっていって……私が罹患したときはあまり病名も知られていなくて、ネットで情報を集めようにも、なんにもわからない。あのときはただただ途方に暮れるしかなかったですね」

実際、自分が足底腱膜炎に罹っている、と認識するまでにも結構な時間を要したという。病名がわかっても手術で完治する類のものではないため、すぐに改善できる方策は見つからない。なにより個人経営のステーキ店ゆえ治療に専念するために長期間、休むということもできず、なんとか痛みをごまかす方法を考えては厨房に立ち続けた。

「足の裏の痛みなので周りにはまったく大変さが伝わらないんですよね(苦笑)。本人にとっては地獄の痛みです。次第に歩けなくなってきて、自力では数メートルが限界。こうなると電車にも乗れないんですよね。降りたところにエレベーターやエスカレーターがないと改札までたどりつけない。仕方ないので常に松葉杖を車に積んで、どこに行くにも車移動になりました。店から駐車場までの数メートルが本当に長くて……」

激ヤセしたのもこのころだったが、これは病状の悪化とは関係なく、体重が重いと足に負担がかかり、それが痛みの激しさにつながっているのではないか、と意識的に大幅な減量をしたからだという。最初に5キロ落とした時には痛みが軽減してホッとしたというが、その先はどんなに体重を落としても痛みに変化はなかった。せっかく鍛えた肉体が萎んでしまったが、もはやトレーニングできるだけの気力も体力も残っておらず、長年、通い続けてきたジムも退会せざるを得なくなってしまった。

その後、かなり時間はかかってしまったが、足底腱膜炎はなんとか完治。コロナ禍、そして未曾有の物価高でのステーキ店経営の衝撃的な舞台裏を描いた新刊『令和のステーキ店経営デスマッチ〜コロナ禍に完全勝利も物価高地獄でリングアウト寸前?!』(西葛西出版・刊)を11月に出版する松永光弘は、この本の中で足底腱膜炎の闘病記をまさに最初から最後までしっかりと書いた、という。自分がそうだったように、あまり有名ではない病気に罹り、情報がないまま絶望の日々を送っている人たちに「私はこうやって状況を打破しました」と伝えることで、少しでも希望の光を届けられれば、という思いから、もう忘れてしまいたいような地獄の日々をあえて綴った。

どんなに強靭な肉体を持ち、日々、鍛えていても、こういった病気ばかりは完全に避けて通ることはできない。健康を取り戻した松永光弘はジムと再契約。また少しずつトレーニングを再開している。

「正直、店の経営は厳しいです。これはウチだけでなく、すべての飲食店がそうだと思いますよ。なにからなにまで食材の仕入れ値が高騰しまくっていますから、オーバーな話ではなく、店の前に行列ができても、まったく利益があがらないんです。ただ、こんなところでギブアップしたくないですから、これからもひたすらステーキを焼いて、闘いつづけますよ!」

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